ソフトバンク、“勇み足”も業績伸長で株価上昇に拍車

 ソフトバンクが2月8日に発表した2007年3月期の第3四半期(2006年4〜12月累計)の連結決算は、大幅な増収増益を記録した。

 売上高は1兆8223億円(前年同期比2.2倍)、営業利益は1972億円(同7.1倍)、経常利益は1116億円(前年同期は22億円の赤字)、純利益は219億円(前年同期比23%増)。

 最大の業績伸長要因は、派手な買収劇で実現した携帯電話事業への参入だ。2006年4月にボーダフォン日本法人を買収したことにより、営業利益は連結対象となった携帯電話事業の569億円を新たに上乗せすることとなった。

 携帯電話事業での売上高が全体の過半数を占めているため、前年同期比較の数値は参考程度の判断材料にしかならない。ただ、携帯電話事業が主力事業の1つに加わったことは確かで、同事業の行方が今後のソフトバンクの株価を左右すると言っても良さそうだ

 今回、ソフトバンクの大幅増益の支えとなったのは、携帯電話端末の割賦販売制度を導入したことにより、販売代理店に支払う販売奨励金が減少したのに加え、既存契約者の解約率を低下させることに寄与したこと。さらに、昨年10月からスタートしたナンバーポータビリティ(携帯電話の番号継続)制度の導入以降の携帯電話契約者数の増加も寄与している。

 孫正義社長は決算発表説明会の席上、携帯電話のナンバーポータビリティ制度について、「当初は我々が草刈り場となり他社から顧客を奪われるという前評判が高かったものの、実際は順調に顧客数が伸びている。携帯電話は儲かると感じていたが、業績の面でも反映された」と語り、同社が順調な滑り出しをみせていることを強調した。

 移動体通信事業において重要な経営指標となる総合ARPU(加入者1人当たりの月間売上高)においては、5560円と半年前のボーダフォン時代の5840円に比べて4.8%低下した。しかし、同期間にKDDIが6.9%、NTTドコモも3.6%とそれぞれ低下していることを考慮すると、懸念材料とは言えない。むしろ、月額基本料金やパケット定額料金が最大2カ月間無料になるキャンペーンを展開した割には低下率が軽微だったと言えそうだ。

 なお、2007年1月における携帯電話の契約数(純増)は16万4000件で、携帯電話各社の純増シェアでは43%に達した。この数字は、ソフトバンクモバイルの前身であるボーダフォンやJ-フォンの時代を含めて、過去最高の実績。2007年1月の3G契約数は658万9000件で、累計契約数に占める3G契約数の比率は42.1%に上り、2006年9月末から12.3ポイント上昇した。

 同社は2007年3月期の業績見通しを公表していないものの、孫社長は「第4四半期(2007年1〜3月)は、(需要期である)春商戦に向けて広告宣伝費を投入することから、第3四半期に比べて利益は減少するのでは」としている。

 過剰な広告表現やシステム障害など、ナンバーポータビリティ制度のスタート時での“勇み足”があり、一時は業績に対する懸念が広がったものの、契約数の増加などは比較的、順調に推移している。今後は黒字決算の定着が株価上昇の原動力となりそうだ。

 同社の株価は業績伸長などを背景に2007年に入ってから上昇基調を強め、2006年末12月29日(大納会)安値の2305円から約1カ月後の2月2日には2006年10月高値の2790円を突破。2980円まで約30%と急上昇している。

 さらに、2月9日申し込み現在の同社株の東証信用残高は、売り残高4831万株、買い残高3992万株で信用倍率は0.83倍と売り残(将来の買い戻し需要)が大幅に買い残を上回り、信用需給の面でも株価の先高感が強まっている。当面は2006年4月高値の3590円が目標になりそうだ。

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