“本業回復”でも株価がぱっとしないソニーの理由

 ソニーが7月27日に発表した2007年3月期の第1四半期(2006年4〜6月)の連結決算(米国会計基準)は、売上高が1兆7442億円(前年同期比11.2%増)と2桁増、本業の儲けを示す営業利益が270億円の黒字(前年同期は65億円の赤字)と大幅な回復を示した。

 この営業損益の大幅黒字転換をけん引したのは、エレクトロニクス部門の大幅な収益改善だ。エレクトロにクス部門の前年同期の営業損益はテレビ事業の不振などで267億円の大幅赤字だったが、この第1四期は474億円の黒字となった。

 こうした好決算を受けて同社では2007年3月期通期の連結業績見通しについて、売上高を8兆2300億円(前期比10%増)、営業利益1300億円(同32%減)と、いずれも期初予想を300億円上方修正した。なお、純利益1300億円(同5%増)は期初予想を据え置いた。

 エレクトロニクス部門の収益が大きく改善した背景には、(1)これまで継続してきた不採算事業からの撤退や人員、製造拠点など、経営資源の適正化といった構造改革を実施してきた効果が顕在化してきた、(2)液晶テレビが2005年秋から投入の「ブラビア」の好調で、市場シェアが急拡大をみせ、さらにビデオカメラやデジタルカメラでも自社製の撮像素子を搭載した製品が好調な売れ行きを示した、(3)円安・ドル高、ユーロ高、ウォン高が強力な追い風となった――などがある。

 今回のソニーの第1四半期では「本業であるエレクトロニクス部門の急回復」が市場関係者の間でも大きな話題となった。しかし、株価は7月27日(終値5020円)の決算発表を受けて翌28日から上昇しはじめ、31日には5280円(終値)まで約5%上昇したものの、その後の株価は息切れの調整状態となっている。

 ソニーの株価がいまひとつ上昇軌道に乗れない現状について、外国証券の電機担当アナリストは「7月18日の4610円を底値に、好決算を期待してすでに株価がある程度上昇していたことがある。さらに、採算が大きく改善された背景のうち、円高・ドル安、ユーロ安、ウォン安による直接的なメリットが200億円近くの営業利益の改善要因となったことで、今回の決算は想定以上の急速な円高という特殊要因に助けられたことが大きかった。とくに欧米において、液晶テレビでシェア競争をしている韓国メーカーの製品がウォン高により価格面不利な立場に立たされた分、ソニーのシェアが急拡大したことは否定できそうもない」としている。

 つまり、今回のソニーの決算には円安による収益改善が大きく寄与しているというわけで、円安の神風が過ぎ去ってしまうと利益の拡大が失速する懸念も指摘されている。さらに、ゲーム部門の失速という新たな不安要因も浮上している。任天堂との販売競争で劣勢に立たされているうえに、巨額の開発投資を強いられている次世代機種の「PS3」の開発費用がかさんでいることなどからこの第1四半期でのゲーム部門での営業赤字は268億円(前年同期は59億円の赤字)に達し、通期では1000億円の赤字を見込んでいる。

 ソニーはPS3について、薄型テレビやビデオカメラ、デジタルカメラと連動する司令塔的な役割を期待しているが、従来の予定通りに11月にリーズナブルな価格で世界同時発売させ、年度内(目標600万台)に売上を目論み通りに伸ばせるかどうかに、ソニーの浮沈が掛かっているといえる。もちろん株価もその動向が鍵を握ることになり、第2四半期の液晶テレビ、デジタルカメラの売上動向とPS3の販売時期と価格が年末までの株価を大きく左右することになりそうだ。

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