NECエレク、成長分野集中戦略で株価急反転

 NECエレクトロニクスは、デジタル家電・携帯電話向けのシステムLSIやマイコンなどの受注不振、採算の低下などにより2006年3月期の連結決算で、会社設立以来初の赤字転落を強いられることが確実視されている。しかし、同社の株価は、2月下旬を底に反転上昇軌道に乗り、わずか1カ月足らずで20%もの上昇をみせている。日経平均株価が横ばい軟調傾向で推移するなかで、なぜ急反発をみせているのか、その背景を探った。

 NECエレクが2005年4月26日に発表した2006年3月期の連結業績予想は、売上高7200億円、経常利益230億円、純利益130億円と見込んでいた。ところが、携帯電話やデジタル家電向け半導体の売上減少や、販売価格の下落による採算の悪化が予想以上に深刻な状態となり、これまで何度かの業績下方修正を強いられ、結局今3月期の連結業績は売上高6350億円、経常利益350億円の赤字、200億円の赤字と設立以来初の赤字転落が確実となっている。

 そこで同社は2月22日に、「車載用マイコン市場で攻勢をかける」という新たな事業戦略発表した。生産拠点の配置と研究開発体制を刷新することで事業の強化を図ろうというもの。自動車の付加装備の充実で車載マイコン需要が世界的に拡大しているのに対応し、この部門を低迷する業績を立て直す切り札とする方針だ。

 まず、NECの相模原事業所内にある製造ラインを米国ローズビル工場(カリフォルニア州)に移設する。車載用のマイコンは回線幅150ナノメートル(ナノは10億分の1)の製品が主流になりつつあるが、同工場は250〜350ナノメートルの製品しか生産しない。移設により、現地需要の高度化に対応する。当初、月間2000枚(8インチ半導体ウエハー換算)生産。2008年までに同6000枚に拡大する計画だ。

 また、アイルランド工場を2006年9月までに閉鎖。車載マイコンの組み立て、動作試験工程をシンガポール工場に、不具合の解析担当部門は欧州法人の「NECエレクトロニクスヨーロッパ」に移管する。これにより、シンガポール工場の車載マイコンの生産能力は、これまでの月産600万個から1000万個に増強されることになる。

 NECエレクの今3月期の第3四半期(2005年10〜12月)の部門別売上高を見ると、携帯電話基地局などの「通信機器」や、DVD向けなどを中心とした「ディスクリート、光、マイクロ波」が前年同期に比べて大幅減収となったのに比べ、今回集中戦略を展開する「自動車および産業機械」向けは247億円と、前年同期比微増を堅持している。

 同社は、これらの強化策を着実に実行することで、世界のユーザーから高い信頼を勝ち得たいとしている。そして、2010年には、車載マイコン事業の市場7000億円の20%のシェア、売上高1400億円を実現し、この分野で世界1位となることを目指している。株価が短期間で急騰をみせたことから、しばらくは4000円台固めの推移が続くものとみられる。来3月期業績見通し次第で、さらなる株価の上昇に期待できそうだ。

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