光ファイバーの出世株、古河電工の浮上は本物か

 先週末の11月4日に、古河電気工業の株価がほぼ3年半ぶりに終値で600円を超えてきた。古河電工は、いわゆる“ITバブル”時期に、日本板硝子などとともに「光ファイバー関連」の出世株として大きな市場人気を集めた象徴的な銘柄だった。

 2000年10月のピーク時には上場来高値の3710円へと棒上げしたものの、その後のITバブル相場の崩壊によって2年後の2002年11月には、なんと株価が20分の1以下の水準である178円にまで下落するという暴落ぶりをみせた。それ以降低迷を続けていた株価がここにきてようやく浮上の兆しをみせはじめてきた。果たして今後、本格上昇につながるのかを探った。

 同社の株価が動意をみせはじめたきっかけは、10月18日に日経新聞が2006年3月期9月中間期の業績見通しについて、会社側従来予想の115億円から185億円(前年同期比71%増)前後になると上方修正観測を報じたことだった。さらに、先週の11月2日には会社側が、同9月中間期連結業績予想について大幅な業績増額修正を発表した。売上高を従来予想の3810億円から4030億円(前年同期比7%増)へ、経常利益を同115億円から225億円(同2倍)とそれぞれ上方修正したことで買いが集中し、大商いを伴って終値で607円と600円台を回復した。2006年3月の通期見通しについては11月9日の9月中間決算発表時に公表する予定。

 同社は前期の2005年3月期に4期ぶりに最終黒字転換し、今期は復配を見込む。今期も第1四半期の連結経常利益が前年同期比9.7倍と急回復した。利益貢献度の高い伸銅品や軽金属は大幅減益だったが、これまで業績不振の元凶だった光ファイバーの赤字縮小で情報通信関連事業の採算が黒字転換してきたことが大きく寄与している。さらに、市場では、今週発表されるNTTのFTTH新戦略に絡んだ思惑も浮上している。実際、「国内、北米ともに光ファイバーの需要は強い」(準大手証券情報通信担当アナリスト)としている。

 こうした動きに先立ってCSFB証券は10月14日付のリポートで、古河電工を取り上げ、投資判断を「アウトパフォーム(強気)」に格付けし、目標株価を615円(10月13日終値は541円)としていた。強気の投資判断の理由について、同証券の山田真也リサーチアナリストは「世界の光ファイバー市場の回復により、米国光ファイバー子会社OFS社、フォト二クス製品などが伸長し、今3月期は情報通信部門が営業黒字化の見通し。来期はOFS社も黒字化する可能性が高く、業績は本格回復局面入りが予想される」としている。

 業績回復以外の好材料の相次いでいる。古河電工の大株主に大きな変化が出てきている。10月13日受け付けの有価証券の大量保有報告書でJPモルガングループが保有比率8.95%の大株主として急浮上している。外国証券のアナリストは「ようやく回復の兆しをみせはじめた古河電工の業績動向の変化に注目して外国のファンドが継続買いをはじめているようだ」としている。さらに、古河電工が筆頭株主となっている日本最大のアルミ圧延会社の古河スカイが、12月2日に東証に新規上場(上場市場は未定だが東証1部への直接上場が確実)することで、保有株の資産価値が大幅に拡大し、含み資産が大幅に増大するとの思惑を先取りした買いも先行しているようだ。

 当面注目されるのは、11月9日の9月中間決算と同時に明かにされる下期を含めた2006年3月期通期の業績見通しだ。さらに、12月2日新規上場以降の古河スカイの株価動向も注目される。最近の株価上昇がかなり急ピッチなことに加え、信用取引きの買い残高が1854万株と非常に高い水準にあることから、ここからなお、一本調子の上昇は難しそうだ。ただ、中期的には業績の回復を評価した上昇傾向は続きそうだ。

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