富士通、9月中間期の上方修正も依然残る不安感

 富士通は7月27日、翌日28日の2006年3月期の第1四半期(4〜6月)連結決算発表を前にして、9月中間期の連結業績予想を上方修正した。この中間期業績の上方修正を好感して先週末にかけての株価は急上昇をみせた。しかし、実際にはこの上方修正の主な要因は会計基準の変更によるものであることが明かになってきており、今後の業績推移に依然として不安感が残されている。

 富士通は7月27日の午後3時過ぎ、今3月期の9月中間期の連結営業利益を従来予想の150億円から300億円(前9月中間期実績は332億円)へ、経常損益についても同300億円の赤字から50億円の赤字(同40億円の黒字)へと大幅に上方修正した。しかし、売上高の従来見通しである2兆2000億円は変えていない。この業績上方修正を好感して、翌日28日の株価は一時、前日比30円高の635円まで買い進まれ、終値は同18円高の623円と急伸した。週末の7月29日も終値で前日比6円高の629円と小幅続伸となった。

 中堅証券の投資情報部では「富士通は期初に、業績予想についてかなり控えめな想定数値を打ち出していた。投資家の側にも“富士通の業績は芳しくない”との固定観念が存在していたようだ。したがって、業績の上方修正がある程度のポジティブサプライズとして受け止められたようだ」としている。

 富士通が7月28日に発表した2006年3月期の第1四半期連結決算は、売上高1兆263億円(前年同期比1.8%増)、営業利益148億円(前年同期は43億円の赤字)、経常利益4億円(同158億円の赤字)となった。また、2001年に発生した富士通製HDD(ハードディスクドライブ)の不具合について、部品供給会社などを提訴していたが6月に和解が成立、この受け取り和解金159億円を特別利益に計上したことで最終利益は24億円(前年同期は118億円の赤字)となった。

 この業績上方修正の大きな要因となったには、今期からソフトウェア開発契約の会計方法を、従来の完成基準から進行基準に変更したことによる。これにより第1四半期は売上高で432億円の増収効果、営業利益で40億円の増益効果があった。中間期および通期ではいずれも売上高200億円、営業利益で20億円増加する見込みだ。

 しかし、この一方でファンダメンタルズの改善も観測されている。セグメント別の業績では、ハードやソフト、システムインテグレーション(SI)、携帯電話基地局などを含むテクノロジーソリューション部門の売上高が6134億円(前年同期比9.9%増)、営業利益は73億円で、前年同期に対し242億円のプラスとなった。パソコンや携帯電話などを含むユビキタスプロダクトソリューションでも売上高が2413億円(同7.6%増)、営業利益は114億円(同1億円の赤字)と採算の改善が顕著となっている。半面、デバイスソリューションはフラットパネルディスプレイ事業の売却などの影響で減収となり、売上高1591億円(前年同期比27.7%減)、営業利益は前年同期に比べ166億円減益の72億円にとどまった。

 9月中間期の連結業績については、売上高2兆2000億円(同0.9%減)、営業利益300億円(同9.9%減)、経常損益50億円の赤字、最終損益150億円の赤字。2006年3月期通期では売上高4兆8500億円(同1.8%増)、営業利益1750億円(同9.2%増)、経常利益1000億円(同12.3%増)、純利益500億円(同56.7%増)を見込んでおり、半導体市況の不確実性などの不安要素が完全に払拭されたわけではない。

 株価は、9月中間期の業績上方修正を受けて急上昇をみせ600円台に乗せてきたものの、ここからの一本調子での上昇は難しそうだ。年初来高値の690円(2月28日)が当面の上値メドとなるが、この年初来高値の更新までは時間が必要となりそうだ。

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