二番底をつけたエルピーダメモリの回復はDRAM市況次第

 日本で唯一の総合DRAMメーカーであるエルピーダメモリが、2005年1月24日に続き、先週金曜の4月8日に再度2005年3月期の連結業績について減額修正を発表した。この業績の減額修正への警戒感から、週明けの4月11日には同社の株価が急落し、一時前週末比260円安の3920円と再び4000円の大台を割り込んできた。

 エルピーダは、NECと日立製作所のDRAM事業に三菱電機の同事業を統合した企業だ。今回の減額修正は、パソコンおよびサーバ向けDRAM価格が想定以上に下落したことや、デジタル家電と並んでモバイル機器向けDRAMの需要も減少したことが主な原因だ。発表によると、従来は2005年3月期の連結業績について、売上高が2110億〜2140億円、営業利益が178億〜218億円、経常利益が127億〜167億円、純利益が120億〜160億円と予想していたが、実際には連結売上高が2070億円、営業利益が150億円、経常利益が106億円、純利益が81億円にとどまった模様だ。純利益は従来予想した利益の上限の約半分に縮小したことになる。

 純利益が従来予想に比べて大幅な減額修正となったのは、米国司法省が現在調査中の独占禁止法違反行為に関して想定されうる損失の引当金を約19億円計上するため、第4四半期(2005年1〜3月)の純利益が赤字に転落したことが大きく響いた。

 業績減額修正の主な背景となったDRAMの汎用品の価格は、第4四半期で4.1ドルの前提となっていた。しかし、実際にはスポット価格で2.4ドルにまで下落し、同期間の平均で3.5ドル程度に低下したと推定される。DRAM価格が下落した背景には、新型ノートパソコン用チップの量産の遅れにより、パソコンの生産が計画を下回る傾向にあることや、一部DRAMメーカーの不良在庫品の放出でローエンド品の価格が下落したことなどがあるようだ。

 ただし、準大手証券のアナリストは「純利益の水準が従来想定上限の半分近くに減少したことで、株価は一時的に大幅安となったが、その後大きく続落するには到らずに4000円の水準に止まっている。業績の再減額修正について株価はかなりの部分をすでに織り込んでいたようだ」としている。

 今後の株価を大きく左右する、スタートしたばかりの2006年3月期の業績について外国証券のアナリストは「世界のDRAM業界に大きな影響を与えているのは韓国のサムスン電子とエルピーダメモリだが、現在は、米インテルのパソコン用チップセットの量産の遅れや、一部競合メーカーの不良在庫の放出が市況を混乱させているのが実情だ。デジタル家電製品の在庫調整が進ちょくする期待はあるものの、少なくとも上期(2005年4〜9月)はDRAM価格の大幅な値戻しは期待薄で、業績の回復傾向が明確になってくるのは下期(2005年10月〜2006年3月)以降になりそうだ」としている。

 エルピーダの株価は、2005年1月24日の業績減額修正の翌日25日に急落して、3650円の年初来安値をつけた。一時切り返して2月18日には年初来高値の4850円まで買い進まれたものの、その後はジリ安の推移となり、今回の減額修正で再び4000円を割り込んだ。株価チャート的に表現すると、今回4000円台は割り込んだものの、1月24日の3650円を下回らなかったことから、このままある程度の水準まで上昇すれば“二番底”(※)をつけたことになり、株価は緩やかながら上昇軌道をたどる可能性が高い。ただ、2006年3月期の業績回復が依然として不透明なだけに、本格的な株価の戻りはかなり先のことになりそうだ。

※ 二番底: 同じような水準の安値を2回つけること

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