ハイテク株総崩れのなかで東芝の強さに注目

 円相場が1ドル101円台となるなど、急速な円高が進行し、NEC、ソニーといった主力ハイテク銘柄が軒並み年初来の安値圏に沈んでいるなか、東芝の株価面での堅調さが際立っている。東芝の頑強な株価推移の背景を探った。

 今年の東芝の株価推移をたどってみると、4月26日に年初来の高値576円をつけて以降、多くの主力ハイテク銘柄と同様に反落に転じ、8月16日には379円で年初来安値をつけた。しかし、そこから反発に転じ、典型的な下値切り上げパターンを堅持しながら上昇を続けている。現在の株価は400円台半ばで、堅調な推移となっている。

 東芝は11月29日、次世代DVD規格として同社が推進するHD DVDが、米映画大手のWarner Bros. Studiosなど4社に支持されたと発表した。これを受け、東芝の30日の株価は前日比2円高と小幅ながら堅調で、4日続伸となった。半面、世界標準を争っているBlu-ray Diskを推進するソニー、松下電器産業の株価は反落した。市場では「これで両規格の決着がついたわけではない。むしろ競争はいっそう激しくなる可能性が出てきた」(中堅証券)との見方が出ている。

 今回支持を受けた4社のDVDソフトのシェアは合計で42%、もう一方のソニー、松下電器グループの規格Blu-ray Disk陣営のソフトのシェア31%を上回ることになる。ただ、17%のシェアを持つDisneyが態度を保留していることから、予断を許さない部分は残されているものの、販売力などから一時劣勢を伝えられていた東芝グループがいまのところ規格争いで巻き返しを果たし、優勢に立ったことになる。

 しかし、実際の製品競争はまだ先の話で、証券系調査機関の多くは、今回の米国4大スタジオからの支持獲得だけでは規格争いの勝者は決められないとして、投資判断も中立の格付けを変更していない。

 東芝は10月29日に、9月中間期の連結決算を発表している。パソコン事業の赤字幅縮小や電子デバイスの好調を背景に、営業利益が507億円の黒字(前期は119億円の赤字)、最終利益については84億円の黒字(同321億円の赤字)と4期ぶりに黒字転換を果たした。また、今3月通期の連結業績については、営業利益こそ従来予想を据え置いたものの、売上高を従来予想から700億円、最終利益についても従来から200億円それぞれ上方修正している。下期については、上期好調だった半導体関連の落ち込みを想定、「セミコンの落ち込み分はパソコンなどで支える」(代表執行約専務 笠貞純氏)としている。下期はNAND型フラッシュメモリーのさらなる販売価格ダウンを想定、半導体市況についてもデジタルカメラ、AV関連向けの在庫調整入りを指摘したが、市況の低下傾向は12月には調整終了し、1〜3月には回復してくるとの見通しを明らかにした点も株価に安心感を与えているようだ。

 東芝の日足チャートは11月26日に、日足ベースのデッドクロス(25日線を5日線が上から下に抜ける、一般には先安の指標)となったものの、今週明けの29日には終値で25日移動平均線を超えてきている。翌30日も続伸しており5日・25日の両移動平均線のカイ離幅もわずか4円程度にまで縮小していることから、今度は反対にゴールデンクロス(一般的には先高の指標)が射程圏内に入ってきている。週足でも11月29日には13週線と26週線がゴールデンクロス(26週線を13週線が下から上に抜ける、一般には先高の指標)を示現しており、今後は中期的に見ても緩やかに上値を目指す展開が期待できそうだ。

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