アテネ五輪後も好調持続の可能性高いテレビ業界

 アテネ五輪後の景気失速が懸念されるなかで、その景気の先行指標とも言える民放テレビ局への企業からの広告出稿が好調を持続している。テレビ広告はデジタル家電を中心とした個人消費拡大への有力な刺激要因となるだけに株式市場関係者の注目を集めている。

 広告代理店最大手の電通が7日に発表した8月の月次単体売上高は前年同月比20%増と大幅な伸びをみせた。これについて同社では、「アテネ五輪効果が大きかった。8月は元々季節要因からほかの月と比べて売上高が伸び悩む傾向があるため、特殊要因が発生すると数字のブレが大きくなる傾向がある」(広報室)としている。業務分野別では、売上構成比で半分以上を占めるテレビ関連売上高が前年同月比22.5%増の608億6400万円となったほか、看板やチラシ、販促活動などのプロモーション関連売上も同35%増の126億1100万円と好調な推移となった。

 こうした広告関連の好調を裏付けるように、在京テレビキー局5社(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)の8月のスポット広告は、前年同月比9%増と好調な推移をみせたもようだ。この好調の背景にはもちろんアテネ五輪の影響があり、薄型テレビに代表されるデジタル家電の広告出稿や、主力人気選手がイメージキャラクターを務めている企業の広告が大きなプラス要因となった。さらに、7月の早い時期から猛暑が長期間継続したこともあり、清涼飲料、ビールなどの猛暑関連の広告出稿も例年に比べてかなりの上積みが実現した。

 さらに、アテネ五輪後で失速懸念もある9月のスポット広告について準大手証券のアナリストは「現時点では、在京キー局5社の9月のスポット広告は前年同月比で8%増と極めて順調な推移が見込まれている。これは、9月以降に自動車メーカーの新車投入が相次ぐことに加え、化粧品業界などでも秋冬向け新製品のキャンペーンが本格化してくることが挙げられる。さらに、飲料では今年は各社が揃って缶コーヒーで満を持した新製品を投入することもあって、かなりの広告出稿の増加が期待されている」としている。また、今回のアテネ五輪で日本選手が予想を上回る活躍をみせ、空前のメダルラッシュとなったことから、知名度と好感度が急速にアップした多くのスポーツ選手を広告塔として使用しようという企業サイドのニーズが高まるとの見方もある。

 ただひとつの懸念材料とされているプロ野球の選手会によるストライキに伴う野球中継の中止についても、市場関係者のあいだでは「8月の巨人戦ナイターの平均視聴率は、アテネ五輪の影響があったにしても8.7%と月間平均としては過去最低を記録しており、実際に雨で巨人戦が中止になった日に、いわゆる“雨傘番組”として替わりに放送された番組の方が明らかに高い視聴率を稼ぎ出したというケースも出てきている。したがって、テレビ局の本音としては“スト歓迎”との空気も十分感じるほどだ」との皮肉な見方も浮上している。

 放送局、広告業界については、アテネ五輪後の急速な業績の落ち込みの懸念はなさそうだ。

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