水面下で始まる老舗ニコンの逆襲

 ニコンの株価が8月中旬以降一本調子の上昇をみせている。同社の主力利益商品である半導体ステッパー(縮小投影型露光装置)の第1四半期(4〜6月)の販売は依然低迷しているが、そのなかでの株価上昇の背景にいったい何があるのか。

 8月11日に発表された同社2004年3月期の第1四半期(4〜6月)の連結営業利益は、わずか7000万円にとどまった。これは、今3月期通期予想営業利益170億円の4分の1を基準としてみると、はるかに遠い水準だ。原因は、主力の利益商品となっている半導体ステッパーの販売が32台(液晶製造用を含む)と低水準にとどまったためだ。

 それでは、なぜ最近の同社の株価はほぼ一本調子の上昇をみせているのか。第1四半期決算が発表される前の8月7日につけた安値1018円を目先の底に上昇をスタートさせ、先週末の29日には1449円の高値まで買い進まれるなど、わずか3週間のあいだに42%もの上昇となっているのだ。

 準大手証券の半導体製造装置メーカー担当のアナリストは「このところ株価急上昇の背景となっているのは、今下期から来期にかけて半導体ステッパーの受注が順調に回復する見通しが次第に鮮明になってきたからだ。デジカメ、DVDレコーダー、カメラ付き携帯電話などデジタル家電の販売好調に支えられ、国内や米国、さらにアジア地域の各半導体メーカーが将来的な増産を見据えて設備投資を積極化しているためだ。会社側も、第1四半期の販売台数が26台だったにもかかわらず、今期通期の当初見込みの販売台数235台(液晶製造用40台を含む)を変えていない」としている。

 しかし、受注は最悪期を脱して回復に向かい、この半導体ステッパーを中心とした精機部門の今期通期の営業利益に改善傾向はみられるものの、依然として赤字継続を強いられる見通しだ。こうした厳しい収益環境のなかで、半導体ステッパーに代わって利益を稼ぎ出しているのが、各種カメラを中心とした映像事業の健闘ぶりだ。とくに、デジタルカメラの好調ぶりが目立つ。第1四半期のデジタルカメラの販売台数は104万台と前年同期比で70%増と大幅な増加を達成したもようだ。これにより、期初に予想した今期通期のデジタルカメラの販売台数460万台が少なくとも500万台超(前期比約50%増)に上方修正されることになりそうだ。このデジタルカメラを中心とした映像事業の今期の売上高は、1800億円(前期比35%増)となる見通しである。

 ただ、最近の一本調子の株価上昇から判断して、短期的で小幅な調整場面は当然想定されるところだ。しかし、直近8月22日申し込み現在の東証信用取引残高(※)は、売り残高351万8000株、買い残高213万株1000株と売り残高超過となっており、信用倍率は0.6倍と将来の買い要因も想定される。今後は来期の2005年3月期の業績がどの程度急激に回復するかがポイントとなりそうだ。

※信用取引残高:株式市場での信用取引とは、投資家が証券会社や証券金融会社から資金を借りて株を買ったり、株券を借りてカラ売りしたり、手持ちの資金以上の株式売買をすること。信用取引は、一定の保証金を担保として証券会社に預け、売買の後、通常6カ月以内に必ず決済(反対売買など)をしなければならない。その信用取引のなかで、信用売り残高は、まだ返済されていない売り付け株数の量を示し、信用買い残高は、信用取引で買い付けを行った株式の株数のことを示す。したがって、売り残高が多い場合は将来の反対売買(買い)要因となり、一般的には株価上昇の材料とされる。

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