楽天は本当にまだ「買い」なのか?

 4月中旬まで15万円を挟んで小幅な値動きに終始していた楽天の株価が、4月下旬から急上昇をはじめた。同社株は5月8日に19万3000円の年初来高値をつけ、その後も比較的堅調な推移となっている。果たして楽天はまだ「買い」なのか。

 インターネットショッピングの最大手で、仮想商店街「楽天市場」を運営する楽天が5月8日に発表した2003年第1四半期(1〜3月期)の連結決算は、売上高36億3100万円(前年同期比83%増)、営業利益6億9100万円(同57%増)、経常利益7億4000万円(同102%増)と好調なものとなった。

 同社の売上高が好調な理由は、昨年4月からの従量課金制度を生かした「流通総額(出店に伴う売上高)拡大作戦」が軌道に乗っているのに加え、昨年12月に子会社化したライコスジャパンの寄与によるところが大きい。なお、仮想商店街の出店数は6349社と前年同期末より900社増えている。

 この第1四半期の決算発表に関連して大和総研は、5月9日付けのレポートで楽天の投資レーティングを従来の「1」から「2」(※)へと引き下げた。レポートによると「成長シナリオに変化はない。しかしながら、(1)株価はすでに目標値(15万円)に達したこと、(2)目標株価を引き上げるほどの要因が今決算では特にないこと、(3)利益率低下と流通総額拡大との効率的なバランス点が今一つ見えないことなどから、投資判断をいったん引き下げた」としている。さらにドイツ証券も、株価には成長性がかなり織り込まれているとして投資判断を従来の「Buy」から「Hold」へと引き下げている。

 楽天に限らず、投資家からごく一般的に「ネット関連」と十把一絡げに総称されがちなソフトバンク、光通信、ベンチャーリンクといった銘柄の株価が最近になって上昇している背景には、まず米国のナスダック市場でのIT関連銘柄の株価急上昇があげられる。Amazon.comをはじめ、CienaやSun Microsystemsなどの株価が急上昇して、さながら「ITミニバブル」の様相を呈している。しかしこの背景については、「イラク戦争の一応の終結に伴って、海外に逃避していた投資資金の一部が米国内に回帰してきただけ」(外国証券ストラテジスト)との冷静な見方もある。

 一方、このナスダック市場の影響を受けての日本市場については「ソニーや松下電器の長期株価低落を見ても分かるように、米国ナスダック市場のIT関連銘柄が上昇したとしても、厚生年金基金の代行返上売りなどの持ち合い解消売りが待ち構える主力ハイテク株を本気で買うわけにはいかない。そこで、過去の最高値に比べて株価が極端な低水準に放置されてきた、いわゆる新興のネット関連銘柄に投資資金が集中しているようだ。しかし、これとて先々の目立った業績回復を評価しての株価上昇ではないだけに、継続性には疑問が残る」としている。

※大和総研の投資レーティング:「1」は今後6カ月程度の当該銘柄のパフォーマンスがTOPIXの騰落率と比べて15%以上上回る、「2」は同5〜15%以上上回るとそれぞれ判断したもの。

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