史上最年少で上場したアドウェイズ社長の行動力:後編 - (page 2)

構成:西田隆一(編集部)2006年07月18日 08時00分

岡村:外注と内注の違いって、値段が違うというのもあるかもしれませんが、それ以上に外注した場合は、受けた側の会社はしっかりとした品質で納品しなければいけないということで、本当は3しか必要ないのに、10の完璧なものをつくってくるので、余分なものまでつくらなきゃいけないところがあります。

 その余分な3倍作らなければいけないから3倍の値段にもなるし、単価も外部のほうが倍ぐらいかかるから、結局、値段は6倍ぐらいに跳ね上がってしまう。そう考えると、中で作ったほうが意思疎通もできますし、必要なものだけ作ればいいというところがあるので、外部より内部のほうが全然コストが安いんじゃないか。コストが安い分、例えば外注と内注で、仮に6倍違ったとしたら、新しい機能を作ろうかとか、新しい事業を作ろうかとなったときに、外注の場合は先に高いお金が出てしまって、例えばこの機能を付けるのに1000万円かかると言われて、この1000万円つけてそれだけの利益が出るかどうか考えてやらなければいけないので、その分、スピードが遅れるんです。

 だけど、内注の場合、外で1000万円だと中で100万円とか200万円ぐらいしか出て行かないので、100万円とか200万円ぐらいだったら、実験的にやってみようぜという話になってバンバン挑戦できる。内注はそういうメリットがあるんです。うちは、基本的には中でつくっていこうというスタンスで、これまでやってきています。

小池:まだ小さなベンチャー企業が外国に会社を作ろうというのは、普通、心理的にハードルが高そうな気がしますよね。それをヒョイっと行って作って、パっとやっちゃおうというのは……あんまり考えていないんですか?

岡村:最近は慎重にやっていかなきゃいけないなと思っていますけど、当時はとりあえずこれはおもしろそうだから、ちょっと中国に行こうかというノリでやっていたところがありました。

小池:要は、もう考えるより先にやってしまう、と。そういうのは訪問販売のところから来ているんですかね。

岡村:そうですね、やっぱり訪問販売の場合、まず売れるか売れないかを先に考えちゃうとダメだというのがあって、とりえずピンポン押してみろ、とりあえず飛び込みに行け、というのを教えられてきたので。

小池:なるほど、確かにね、ベンチャーもステージによっていろいろ違うんでしょうが、最初のうちはとにかくやってみなきゃわからないことが多いだろうから、とにかく行動してみる。やることに対して、自分が洗脳されるぐらい信じ込んで、いったんはやってみる。でも、ダメだったら変わり身も早い、みたいなこともすごく必要だと思うんだけど、それに訪問販売で身につけた機敏さとかスピード感みたいなものが、すごく生きていたんだろうね。

岡村:訪問販売から学べたことは非常に大きかったと思っていますね。

小池:それで、6月20日に東証マザーズに上場して最年少上場社長になったわけですが、これは誰の記録を塗り替えて最年少になったの?

岡村:クレイフィッシュ(現e-まちタウン)の当時の社長の松島庸さんが上場したときに26歳4カ月だったようです。

小池:新聞だとサイバーエージェントの藤田さんと書いてあるけど。

岡村:あれは間違いです。ちゃんと書いてある新聞もけっこうありますが、松島さんのほうが2カ月ぐらい早いと思うんですが。

小池:じゃあ、結構ぎりぎりだったんだね。だって、最年少を取りに行くというのが、何年か前に会ったときの目標で言っていたことだから、それが有言実行で達成できて本当におめでとうございます。

岡村:もともとは、2005年8月ぐらいに上場しようということで動いてはいたんですが、なんだかんだずれて。

小池:ライブドア事件?

岡村:ライブドアは全然関係ないです。2005年11月に申請しているので、審査が始まっていましたから。審査の中の質問項目として、ライブドアの一件をどう考えているんだ、みたいな質問はありましたが、それ以外はもう全く関係ありませんでした。

 管理体制みたいなところを見られたり、予算の達成具合を見られたりしましたが、そこら辺の体制はばっちりだったんです。でも、最後のほうで、きみはコーポレートガバナンスについてどう考えているんだとか、コンプライアンスについてどう考えているんだとか、ストックオプションについてどう考えているんだとか、いろいろ質問されるんですが、全部に答えられなかったんです、見事に。

 それで、「そのまま上場させたら大変なことになるんじゃないか、とにかく勉強してこい」と言われて、僕に家庭教師がついて、3カ月ぐらい1日5、6時間はその家庭教師の先生が来て、ストックオプションはこうだとか、コーポレートガバナンスはこうだとかいろいろ教えていただいて、それでやっと審査が再開して上場できました。なので、僕に問題があって、ちょっと長引いてしまったという話です。

小池:それは本当に必要なことというか、逆に僕は良かったと思うよ。もう上場している企業の社長さんでも、なんとなく耳年増で言葉は知っているから適当に知ったかぶりというか、知っている振りになっちゃっている人が多い。本当にどうなのかというところについては、きちっと勉強していない経営者もけっこう多いんじゃないかと思うんだよね。そういった意味では、そういうきっかけでじっくり家庭教師までついて勉強できたのは、今後にとってすごいことだよ。

岡村:いい経験でした。

小池:でも、7000万円事件が会社をいい方向に持って行ったり、上場審査の不備も学習の機会に変えてしまったりするのは、なにか強運の持ち主かも知れないね。まだまだ若いから、これからもいろんなことに恐れずにチャレンジして頑張ってください。

今日はどうもありがとうございました。

岡村:どうもありがとうざいました。

アントレプレナーへの言葉--小池聡

 岡村社長はとにかく素直で格好を付けない。見栄を張らずに次々と出てくる難題に真っ向から取り組んでいく姿勢が呆れるほどすごい。

 上場が予定より延びた理由が、上場審査で岡村社長がコーポレートガバナンスとかコンプライアンスとかについてさっぱり答えられなかったからだという。「それから3ヶ月間にわたり1日5〜6時間家庭教師をつけて猛勉強したんですよ」と飄々とした表情で言ってのける岡村社長。勉強もせずに知ったかぶりしている経営者も多い中で、謙虚に真剣に経営者になろうと努力している。

 対談でも出てくる「7000万円事件」では資金が底を突いた状態で、すぐに3500万円用意しなければならなくなる。営業をどんなに頑張っても金額的・時間的に無理、借り入れはできないということで無駄な努力をせず、大金をすぐに得るために、まだ作ってもいないシステムを売る提案をして前金でもらおうという作戦に出る。また、最初にシステムが必要だということになりコンピュータの専門学校の前でシステムを作ってくれる人を探す。その後、日本にSEが見つからないとわかれば中国に行って開発会社を作ってしまう。非常に無謀な発想に見えるが、経営トップの危機的状況時での判断・行動としては結果が出たと言う事実からすれば最適のディシジョンだったのだろう。

 いずれにしても、どうしようと悩むのではなく、とっさの判断をして、とにかくやってみるという姿勢が重要だ。

 ベンチャー企業は特に未知のマーケット・ビジネスに飛び込んでいくことが多く、やってみなければわからないケースも多い。実はベンチャー企業のスタートアップにやることの大半は、自分が立てた仮説の検証作業と言っても過言ではない。その意味で、岡村社長のこれまでの行動はトライ&エラーの連続だった。しかし、結果が出なくてもやってみなければわからない。いろいろ机上で考えている間に、市場が変化してしまったり事業機会が失われたりすること可能性もある。

 「ピンポンを押してみろ!!」。 今回の対談で一番印象に残った言葉だ。岡村社長が訪問販売で先輩から教えられた「まず売れるか売れないかを先に考えてはダメだ。とりあえずピンポン押してみろ、とりあえず飛び込みに行け」という言葉はベンチャー(アドベンチャー)起業家にとって重い言葉だ。ベンチャーはまず行動あるのみ。

 上場後はあまり無茶はできなくなると思いますが、松嶋さんという経験豊かで優秀なCOOがついていますので、そのバランスのもとに、岡村社長のますます大胆でユニークな行動を期待しています。

小池 聡

iSi電通アメリカ副社長としてGEおよび電通の各種IT、マルチメディア、インターネット・プロジェクトに従事。1997年にiSi電通ホールディングスCFO兼ネットイヤーグループCEOに就任。シリコンアレー、シリコンバレーを中心にネットビジネスのインキュベーションおよびコンサルティング事業を展開。1998年にネットイヤーグループをMBOし独立。1999年に日本法人ネットイヤーグループおよびネットイヤー・ナレッジキャピタル・パートナーズを設立。現在、ネットエイジグループ代表取締役、ネットエイジキャピタルパートナーズ代表取締役社長などを務める。日米IT・投資業界での20年以上の経験を生かしベンチャーの育成に注力。

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