3大企業にベンチャーも絡む検索エンジン市場のいま - (page 2)

別井貴志(編集部)2005年05月19日 23時37分

検索対象が多様化してもニーズは同じ

 これまで「検索エンジン」といえば、「ユーザーの求める情報を的確に素早く見つけ出す技術」として、テキストで書かれたHTMLを検索の対象にしてきた。その点、サイトの質や被リンク数などで独自に判断するGoogleの指標「PageRank」による検索結果は、長い間他者の追随を許さない水準で抜きに出ていた。

 これに追いつき追い越せとばかりに、Yahoo!とMSNも独自の検索エンジンを開発し既に実戦投入している。米Yahoo!は、2004年2月に検索エンジンをGoogleから自社開発のYahoo Search Technology(YST)に切り替えた。これは、2002年12月に買収したInktomiや、2003年7月に買収したOverture(米国ではYahoo! Search Marketing Solutionに社名変更予定、日本は変更なし)が過去に買収していたAltaVistaFast Search & Transfer(FAST)の検索技術を活用して開発した。日本のヤフーでは、2004年5月末にYSTに切り替えている

 一方のMSNは、2005年1月にこれまで利用してきたYahoo!のInktomiから、自社製エンジンのMSN Searchに切り替えた。日本でもベータ版は提供しているが、正式導入は2005年年内を予定している。

 このように、3者が互いの検索エンジンを利用し合うという状況を経て、独自技術を開発、投入するに至った。高水準にあるGoogleの技術につけ込むすきがあるのかといえば、その可能性を広げたのは検索対象の拡大といえよう。これまでは、HTMLの本文(テキスト)が中心で、検索エンジンに求められる技術要求は既述の通り「ユーザーの求める情報を的確に素早く見つけ出す技術」と変わりはないが、この「ユーザーの求める情報」が広がったのだ。

 テキストに限らず、画像や動画、音楽などの多種多様なすべてのファイルが検索対象になった。しかも、インターネット上にあるファイルに留まらず、デスクトップ(ローカル)に保存されているすべてのファイルも含まれる。そのため、3者共にインターネットとデスクトップとをシームレスに検索できる仕組みに注力している。ここまでいくと、Googleに分があるとは言い難い。技術もさることながら、デスクトップで圧倒的なシェアを誇るMicrosoftが、OS戦争でAppleに打ち勝ったときと同様の戦略とパワーを再び活用してくるかもしれない。

 また、検索のニーズはすべてのファイルを対象にすることに留まらない。ニュースや商品比較、辞書、株価、オークションといった各専門コンテンツの検索にも広がっている。これには、電話帳や交通情報、テレビ番組、地図といった地方や限定した地域に向けたコンテンツも含まれる。

交差する検索サービスとポータルサイト

 ここで、Googleと他の2者であるYahoo!、MSNに決定的な違いがある。こうした検索対象のファイルやコンテンツを、Googleの場合は基本的に自らでは提供してこなかった。つまり、Google Newsに代表されるようにインターネット上に公開されている他者の情報やコンテンツを、検索で培った技術を使って特にコンテンツ所有者と契約を結ぶこともなく、検索結果を自社サイトに取り込んでサービスとして見えるような形で提供してきた。的確な検索結果やGoogle Newsなどのサービスにより利用者を増やし、検索ワードに関連した広告表示させることで収益を得るモデルが基本だ。すべては、検索が中心になる。

 これに対して、いわゆる「ポータルサイト」と呼ばれるYahoo!とMSNは、元々はこうしたファイルやコンテンツを所有している他者と提携や契約、場合によっては買収して、つまりコンテンツ所有者にお金を払って自らのサービスとして提供することを基本にしてきた。他のポータルサイトよりもいいコンテンツやサービスを提供することで集客し、広告収入や利用料金収入を得るモデルだ。そのため、ユーザーには会員登録してアカウントを持ってもらうことが中心になる。

 このように、事業としてのもともとのモデルやこれまでのビジネスの歩みに差があったのだが、ここにきては両者のモデルがクロスしてきた。Yahoo!とMSNはGoogleとの差を縮めるために「検索」の技術を磨いている。この一方で、Googleは利用料金を徴収するまでには至ってないが、メールサービスのGmailをきっかけとしていつの間にか「ユーザーアカウント制」を採っている。

 そして、検索を核としたサービス提供にも限界があるのか、買収などで手に入れたコンテンツやサービスを、他のポータルサイトと同様に自らが提供するようになった。デジタル写真管理ソフトウェアのPicasaや、人工衛星の撮影画像を閲覧して検索できるソフトのKeyholeなどがそうだ。また、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のOrkutを立ち上げたほか、携帯電話向けSNSのdodgeball.comも買収している。さらに、アクセス解析のUrchinまで買収している。

 このように、矢継ぎ早に買収などを通じて自社サービスを展開しようとしているため、GoogleによるブラウザインスタントメッセンジャーVoIPの開発や提供の噂が絶えないのだ。こうしたツールは、すでにYahoo!とMSNは持っており競合している。

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