インドへの対抗心燃やす中国アウトソーシング業界

メイプルカンパニー2006年04月28日 12時20分

 4月18日、第二回中関村ソフトウェアアウトソーシングサミット会議が北京で開催され、総額200万ドルを上回る欧米からの委託プロジェクトが公表された。この会議は、中関村国際孵化ソフトウェア協会(※1)・中関村科技園区協会連席(※2)・北航科技園(※3)が主催したもので、欧米からのアウトソーシング業務をいかに多く誘致するかを業界内で議論する目的で開催されたものだ。

 CNET Networks Chinaが4月20日付けで伝えたところによると、この会議では、欧米からの委託プロジェクトが発表されたほか、「アウトソーシング人材」をいかに育成し、活用するかというテーマで活発な議論がなされたという。

課題はプロジェクト管理能力と専門知識の両立

 この会議で中国企業に対するソフト開発の業務委託を発表したCRMベンダーTekatur社の代表者は、アウトソース先企業に対する希望として、プロジェクト管理能力や英語力に長けているだけでなく、知的財産権や、ソフトウェアの販売先となる業界に対する深い専門知識を有していることを挙げた。また国内外からソフトウェアの開発業務を受託する北京博大正方ソフト技術有限会社の代表は、中国の受託企業はどこも小規模で、プロジェクト管理から専門知識に至るまでの幅広いスキルを備えた人材を育成する余裕などないとこぼしている。このように、発注側のニーズと、受注側の体制には乖離があるのが中国アウトソーシング界の実状で、これには中国のソフトウェア業界も危機意識を抱いている。例えば、この会議を共催した中関村国際孵化ソフトウェア協会会長の于濱氏によれば、同協会では、こうした問題を払拭するため、受託企業を認証したり、選定したりする活動をしているのだという。同氏によれば、あくまでも委託企業側の視点に立ってこうした活動を行うのがポイントだそうだ。

ライバルはインド

 こうした議論が活発になされる背景には、中国がアウトソーシングをめぐってインドに対抗意識を燃やしているという事情がある。

 インドでは、アウトソーシング企業の大手5社がいずれも4万人以上の技術スタッフを擁し、アウトソーシング産業全体で年間輸出高2000億ドルを達成しようとしているのに対し、中国では、最大手企業でも技術者はわずか1000〜2000人程度。規模、実力ともにインドに見劣りがするという会議参加者の見解さえもCNET Networks Chinaの記事では紹介されている。

 また、同記事では、中国ソフトウェア業界のニーズに応えられる人材を大学から輩出しようと、北航科技園がアウトソーシングCEOクラブという名称の組織を設置し、産学の連携を図ろうとしていることが紹介されている。しかしながら、中国では学位取得者の数の割には、ソフトウェア開発のスキルをもった人が少ない点や、欧米企業が、設計から開発、テストに至るまでのすべての工程を相手先に委託したがる傾向にあることの難しさが指摘されている。

 インドとの違いを決定的なものにしているのが、ソフト開発者の待遇である。インドではソフト開発者の収入や社会的地位が高いのに対して、(インドより案件の受注確度の低い)中国では開発者のお給料を抑えざるを得ない、十分な教育訓練ができないといった問題を抱えている。

 中国アウトソーシング業界の競争力を強化するためには、堅牢な産学協同体制を構築するなど、業界、政府、教育機関をあげての連携が必要だというのが、会議参加者たちの意見のようだ。

※1北航科技園:北京航空航天大学によって設立されたハイテク産業園区。北京市政府には「北京市ソフトウェア輸出基地」として、国家科技部・国家教育部には「国家大学科学技術園区」として認定されている。園区内には金山ソフトやNECがある。

※2中関村科技園区協会:中関村科技園区のソフトウェア企業を集めた業界団体。業界内の連携をとり、発展を図る組織。

※3中関村国際孵化ソフトウェア協会:中関村科技園区管理委員会の後援で設立された社団法人。中関村地区にある5000社ソフトウェア企業を対象に人材と市場開拓のサービスを提供する。

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