日本企業に活力を--オピニオンリーダーが語る、クラウド活用の心得(2)

 メディア横断企画「クラウド討論会2011」は、企業のクラウド導入状況を確認すると、導入時の具体的な課題にテーマが移った。企業は何に不安を感じ、導入で何を重視しているのだろうか。

解消されないクラウドの不安とは

 始まったばかりのエンタープライズ分野でのクラウド活用だが、現在の日本の企業ユーザーがクラウドに対してどんな不満、不安を抱えているだろうか。再びモデレータを務めるアイ・ティ・アールの舘野氏が、事前アンケートの結果を紹介した。

 それによれば、クラウドに対する課題・不安として上げられる代表的 なものは、まず、「セキュリティ・情報漏洩不安」が最も多かった。次に「クラウド事業者の業務停止・倒産」「コスト削減につながるのかが不明」「サポート体 制・障害時対応」「社外の預けることの不安」と続く。

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最も大切ことは何かに気付き始めたユーザー

 事前アンケートの別の調査結果では、セキュリティ不安、社外に情報を預けることの心理不安に関しては、特にクラウド未導入企業の中で懸念が大きく、導入企業では不安や心配の度合いが若干少なくなるようだ。しかし、導入後いくらかの不安要素は解消されるものの、セキュリティに対する不安は厳然としてユーザーの間に根付いている。

 自社でプライベートクラウドを構築する際にも大いに神経をとがらせる問題だが、いわゆるクラウド事業者のサービスを利用する場合はなおさらのことだ。もちろん、ユーザーもただ不安がっているだけではない。クラウドを賢く利用するにはどうすればいいのか、そしてそれを考えていく上で何が大切なのかを模索し始めている。事前アンケートの結果で、クラウドの利用経験年数が長くなればなるほど、ユーザー企業は頼りにしたいクラウド事業者としてネットワークに強い事業者を挙げている。これは注目されるべき結果だろう。クラウドをストレスなく活用するには、ネットワークが鍵となることが実感として出てきているのだ。

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 日経BPの星野氏はクラウド事業者がユーザーと交わすSLA(Service Level Agreement)の内容について、今後さらにユーザーが納得できるものにしていくべきだと話す。

 「システムが何分とまったら停止と見なすのか。システム停止を通告するのは事前のいつになるのか。それらの点を明確にしておかなくては保証する稼 動率の算定も違ってくるわけですが、こうしたことをしっかりやっている企業ばかりではないというのが現状です。ユーザー側がしっかり目を光らせておく必要がある」

障害時対応策も含めた明確な情報開示を

 また、アイティメディア ITインダストリー編集統括部長の浅井英二氏は語る。

 「クラウド時代ではもはや『なぁなぁの関係』は通用しない。SLAを締結し、サービス内容やシステム環境などについてしっかりと情報開示していくことは必須となる。問題は止まったときにどういう対応をしてくれるのか、ということ。事業継続マネジメントの観点からも、一体どの時点からシステムが復旧され、ユーザーとしてはどういう対応をしなくてはならないかを明確にしてもらう必要がある」

 ただし、一方でクラウドサービスは低コストでICTインフラを外部に構築し、ビジネススピードにより効率的に対応できるといったことがメリットとなる。サービスレベルや稼動率を向上させることは、コストや運用管理面などでユーザーに不都合にはならないか。

 インプレスビジネスメディア ITLeaders 編集長の田口潤氏はこの問題について次のように話す。

 「稼動率が99.9%と99.99%の違いは年間で9時間の違い。日本のクラウド事業者は、99.999%というように限りなく100%へ近づけていくことだけ邁進していくわけにもいかない。それでは海外の事業者と戦っていけない。サービスレベルを犠牲にしても低コストのサービスを維持することも 必要で、これはユーザーの選択肢という面でも残しておきたいものだ」

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