石川温が振り返る2014年のモバイル業界--「料金競争」に尽きた1年

 スマートデバイスの普及が進み、あらゆるビジネスの主戦場となりつつあるモバイル領域。2014年もさまざまなニュースが世間を賑わせましたが、モバイル業界に精通するジャーナリストの皆さんはどのような点に注目したのでしょうか。今回は石川温さんに、今年注目したモバイルニュースや、スマートデバイス、アプリなどを聞きました。

──2014年のモバイルニュースを3つ選ぶとしたら何ですか。

 やはり「イオンスマホ」は外せないのではないでしょうか。いまの格安スマホブームも、イオンスマホが「8000台売れた」というニュースから始まっています。この大ヒットから、MVNOが続々と参入していますが、イオンがヒットした背景にあるのは「リアル店舗で端末とSIMカードをセットにして売った」という事実があります。単にネット販売だけでSIMカードと端末をセットにしても、格安スマホが狙う初心者層には届かないわけで、MVNOはもうちょっとリアル店舗の開拓に注力した方がいいと思います。

 2つめは「音声定額導入」。VoLTEの導入で、音声通話料金にメスが入るというのは昨年から見えていましたが、まさかNTTドコモが率先して、しかも不可能だと思われた携帯・固定電話の完全定額を始めてくるとは、正直、驚きました。同時に開始したパケット料金の改定で、NTTドコモの経営は厳しくなってしまいましたが、加藤社長の攻めの英断は素晴らしかったと思います。

 最後は「ソフトバンクのアメリカ進出失敗」を挙げておきます。T-Mobile USの買収が失敗したことで、日米とのシナジー効果も期待できず、ソフトバンクにとって、スプリントはすっかりお荷物となってしまいました。シリコンバレーの開発拠点にいった人材も、2月には帰国するようです。アメリカの競争は激しいこともあり、孫社長としては「スプリントを売りたい」と本音では思っているのではないでしょうか。確か、円が1ドル78円台のころに買収していますから、ここで売れれば、相当な為替による利益が期待できるわけです。孫社長の投資としては、いま売れれば充分すぎるほどの儲けが期待できます。ま、買ってくれる人がいるかは別の話ですが。

──今年購入した端末で一番のお気に入りは。

 アメリカで購入したシャープ「AQUOS CRYSTAL」(ブーストモバイル版)です。フレームレスという先進的な端末が、150ドルで買えてしまうことに驚きです。しかも、スピーカーがついていないんですよ。ニューヨークの街角でAQUOS CRYSTALを使っていると「それ、クールだな」と外国人に声をかけられるし(女性だったら、もっと最高だったんですが)。デザイン的に差別化が難しいとされるスマホでも、まだまだ個性を出せるんだとAQUOS CRYSTALを見て思いました。

──今年よく使ったサービスやアプリは。逆に使わなくなったものがあれば教えて下さい。

 各キャリアの「料金確認サイト」。新料金プランが導入されて以降、「あと何Gバイト、残っているかな?」というのを確認する機会が増えました。KDDIは12月になって、デジラの残量確認アプリを出してくれたので、結構、気に入って使っています。逆に使わなくなったのは、雑誌が読み放題の「ビューン」。読める雑誌が大量にある「dマガジン」が出てきたことで、乗り換えてしまいました。

──2014年はモバイル業界にとってどのような1年だったと考えていますか。

 「料金競争」に尽きた1年だったように思います。キャリアによる音声定額サービスの導入、MVNOによる格安スマホ戦争。スマホが一般的になってきて、誰もが「料金が高い」と不満を抱いている中で、料金値下げに対するニーズが高まっているのは間違いありません。一方で「キャッシュバック戦争」が終わったのも印象的です。今後は、SIMロック解除などもあり、端末の売り方がまた変わっていくのではないでしょうか。

──2015年は「コレがくる」という端末やサービス、トレンドなどがあれば教えて下さい。

 ズバリ「格安スマホ難民」に注目しています。2015年は今年の格安スマホブームを受け、さらにSIMロック解除義務化などを踏まえ、MVNOがさらに盛り上がり、低料金を求めて、格安スマホに流れるユーザーが増えると思います。しかし、安さを求めてみたものの、故障やネットにつなげられないという状態に陥り、困ってしまうユーザーも多くなるのではないでしょうか。そういった「格安スマホ難民」が増えるのは間違いないと見ています。格安スマホ市場は、料金競争から間違いなく「サポート体制」の勝負になるでしょうし、そういった初心者層をしっかりと受け入れられないMVNOは今後、厳しくなるのではないでしょうか。

 もうひとつ、注目しておきたいのが「ネオガラケー」です。ガラケーはいまだに根強い人気がありますが、チップセットやディスプレイ、ヒンジなど、部材を作るメーカーが相次いで倒産したり、部材がなくなっていたりと、ガラケーを作り続けるのが難しい状態になっています。そこで、Androidなどをベースとした、中身はスマホなんだけど、見た目はガラケーといった機種が出てきそうです。かつて、シャープがテンキー付きのAndroidを手がけてきましたが、ああいったものが復活するのではないでしょうか。「スマホのタッチパネルは苦手。ガラケーを使い続けたい」というユーザー層を取り込むため、中身はスマホ、外見はガラケーという「ネオガラケー」が出てきそうな気がしています。

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