FujiSankei Business i.
2006/11/30 10:20
任天堂が12月2日に家庭用ゲーム機「Wii」を発売することで、国内次世代家庭用ゲーム機市場の勢力争いが本格化する。同市場の王座には、1994年に「プレイステーション」を投入したソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)が任天堂から奪取して座り続けている。「Wii」を武器に任天堂は、王座を奪還することができるのか。
「1週間が待ちきれないよ」
朝から晴れ間が広がった25日の千葉市美浜区。発売を1週間後に控えた「Wii」の体験会が、幕張メッセで行われた。「Wii」を体験したい子供たちが、待ち遠しさを口にし会場内で長い列を作り、ゲーム機に触れるまで、1時間待ちはザラ。人気ソフトの楽しめるブースでは、「220分待ち」の看板が掲げられた。
会場内で特に目立ったのは、リモコンのコントローラーをテニスのラケットやボクシングのグローブ、野球のバット代わりにして振り、スポーツを体感している親子の姿。
任天堂の岩田聡社長が言い続けてきた、「ゲーム機を家族の誰にでもかかわりのある存在にしたい」という願いが、現実となりつつある象徴的な光景でもある。
芽生えはあった。2004年12月に発売した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」で、任天堂は「ゲームから離れてしまった人や、ゲームに触ったことのない人を引っ張り込む」(岩田社長)ことを目標に、新ジャンルのソフト開発に取り組んだ。その結果、クイズのような問題を出して脳を鍛えるソフト、英語を学べるソフトなどが登場、年配者や女性層に大ヒットした。
ゲームソフト・機器開発のハドソンで20年以上、ゲームソフトのプロモーションに携わってきた“高橋名人”こと高橋利幸さんは「むかし以上にファミリー的な存在にゲームがなってきた」と任天堂の取り組みを評価する。
「Wii」で狙うのは、「DS」で開拓した市場を家庭用ゲーム機でも、維持すること。このため親子で楽しめるスポーツゲームや、「スーパーマリオ」といったファンに強くアピールするソフトを投入する。その一方で、「やわらかあたま塾」のような脳トレ系ソフトも出して大人の関心も誘う。「ゲームに興味のない人にも触ってもらえるようにする」(岩田社長)ことで、暮らしの中に「Wii」を浸透させていく戦略だ。
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発売すれば、ただちに完売。11日に日本で投入して以来、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の家庭用ゲーム機「プレイステーション3」(PS3)の売れ行きは絶好調を維持している。
10万台未満と少なかった出荷台数を求めて、発売初日に大混乱が起こり、3週間が過ぎた今も「どこに行けば手にはいるのか」といた問い合わせが量販店にひっきりなしに寄せられている。17日には米国でも発売され、40万台といわれた初回出荷はやはり完売。「PS」「PS2」で築き上げた認知度の高さで、好調なスタートダッシュを切った。
「PS3」は、ソニーグループにとって今後10年を占う戦略商品。ソニーは2007年3月期連結決算で、ゲーム機部門の営業赤字を2000億円ほど見込んでいる。高価な部品を惜しみなく注ぎ込んだ「PS3」は、1台売れるごとに3万5000円の赤字が出るといわれており、業績の足を引っ張る構図だ。
急速な普及によってコストダウンを行い、対応ソフトのライセンス収入で稼ぐビジネスモデルを一刻も早く構築しなければ、死活問題となる。次世代DVDの規格としてソニーが押す「ブルーレイディスク」の普及も、「PS3」が頼みの綱ということを忘れてはいけない。
現時点の課題は、ハードに対してソフトの販売が伴っていないこと。ゲーム情報誌の「ファミ通」を発行するエンターブレインが調べた、「PS3」発売初日(国内)のソフト装着率は、ハード1台に対して0・98本と1本を下回った。海外に持ち出したり、オークションに出品する転売目的の「本体のみの購入」が横行したことが要因にあるとはいえ、「ソフトラインアップに魅力がないから」といった声も大きい。
「PS3」の特徴は、フルハイビジョンの映像を映し出し、実写と見間違えるような世界を自在に動き回れるゲームを楽しめること。だが「『PS3』の実力を発揮できるソフトを作れるようになるまで、1年はかかる」とソフト会社のゲーム担当者は話す。
ハイビジョン対応テレビも普及はこれからで、いくら映像のすばらしさをアピールしても、ユーザー側の環境が整っていない状況では響かない。エンターブレインによると、新型ゲーム機の06年末の世界累計販売台数は「PS3」が165万台に対し、「Wii」は308万台と、任天堂の勝利を予想している。
ただ「10年先まで楽しめるゲーム機」とエンターブレインの浜村弘一社長が評するように、現時点で思いつく限りの最先端テクノロジーが「PS3」には詰め込まれている。性能を生かせる環境とソフトが登場してくれば、ユーザーの関心は「PS3」に集まりそうだ。後は時代が「PS3」に追いつくまでの期間を、ソニー本体が耐えきれるかが成否の鍵といえそうだ。
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「Wii」と「PS3」にマイクロソフトの「Xbox360」を加えた次世代家庭用ゲーム機だけを引き合いに、ゲーム業界の勢力争いを“三つどもえ”と呼ぶのは、早計だ。
「ニンテンドーDS」に代表される携帯型ゲーム機の市場はハード、ソフトともに家庭用を上回る。携帯電話で楽しむゲームも人気。そしてパソコンで楽しむオンラインゲームが、日本でも急速にユーザー数を伸ばしているからだ。
「パソコンをネットにつなぎさえすれば、オンラインゲームは楽しめる」と話すのは、韓国発で「メイプルストーリー」などのオンラインゲームを提供するネクソンジャパンのデビッット・リー社長。
オンラインゲームがはやり始めたころは、コアのゲームファンを中心に、キャラクターを操作しネット上の世界を冒険していくMMORPG(多人数対戦型ロールプレイングゲーム)が主流だった。最近は「短時間で楽しめるゲームが増えていて、ゲームに時間をかけられない人たちを引きつけている」(リー社長)という。
調査会社の矢野経済研究所が21日に発表した「国内オンラインゲーム市場に関する調査結果」によると、パソコンで楽しむオンラインゲームは06年度末に653億円の市場を確保し、10年度末には1099億円まで拡大する見通しだ。
「無料で楽しめるのもオンラインゲームの良さ」とリー社長。会員が毎月一定の金額を払ってサービスを受ける定額課金型から、キャラクターに持たせる道具や衣装といったものに課金していくアイテム課金型へと、課金スタイルも変化している。これが参加への壁を低くし、ユーザーの獲得につながっているようだ。
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「PS3」「Wii」の発売にさかのぼること1年。マイクロソフトが「Xbox」での“失敗”を糧に、昨年送り出した「Xbox360」は、日本こそ完敗状態にあるが、北米や欧州ではスポーツゲームやアクションゲームの人気をバックに、順調に普及台数を伸ばしている。
エンターブレインによれば06年末の世界累計販売台数予想は、885万台で次世代機ではトップ。07年末も「Xbox360」が1746万台となり、「PS3」「Wii」を上回るとみている。その先となると「PS3」が強さを発揮し、「Xbox360」を追い抜くと予測。しかし、「Xbox360」も豊富なソフトラインアップと低価格をアピールして食らい付いていくだろう。
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