「遊びをせんとや生まれけむ」--生みの親が語るファミコン成功の秘訣

永井美智子(編集部)2007年09月30日 14時55分

 日本デジタルゲーム学会(DiGRA)は9月24日から28日まで、ゲーム研究の国際的・学際的交流を図るためのカンファレンス「DiGRA 2007」を開催した。最終日となる28日には、任天堂のファミリーコンピュータの生みの親である上村雅之氏と、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)の「パックマン」を生み出した岩谷徹氏の対談が行われた。ゲーム業界の2人の「神」が登場するとあって会場には海外からも多くの関係者が集まり、講演後には2人のまわりに聴衆が何十人も集まるなど熱気を帯びたセッションとなった。

 セッションはまず2人がそれぞれがゲームの歴史を振り返り、その後司会者からの質問に答える形となった。ここでは、上村氏の話を紹介する。

玩具業界が支えたビデオゲームの歴史

ファミコンの生みの親である任天堂の上村雅之氏 ファミコンの生みの親である任天堂の上村雅之氏

 上村氏は1971年に任天堂に入社。30年以上にわたり、ゲームの開発に携わってきた。現在は任天堂のアドバイザーを務めるとともに、立命館大学大学院の先端総合学術研究科教授として、次世代の開発者の育成にも携わっている。

 「自分たちがいまどこにいるのかを考える上で、歴史を学ぶことは役に立つ」と話し、日本における“遊び”の歴史を紐解くことから話は始まった。

 日本における遊び道具の歴史は古い。振り返ればサイコロ、碁、ブリキのおもちゃ、キューピー人形など、海外から輸入され、そのまま日本に根付いたものも数多くある。上村氏は「私の好きな言葉で『渡来品』と呼ばれるこれらのものを見ると、日本人は海外のものをすんなり受け入れる素直な性質があり、遊びについても海外のものをいろいろ受け入れてきた」と指摘し、その延長線上に米国から来たビデオゲームもあるとした。

 そのビデオゲームが日本の家庭に初めて登場したのは1975年のこと。エポック製の「テレビテニス」というゲームだ。テレビを利用するという意味で、テレビの周辺機器ともいえるが、「日本で一番ビデオゲームを受け入れ、熱心に子どもたちに紹介してくれたのが玩具業界だった」といい、これがその後の日本のゲーム業界を作る素地になる。

 一方、米国では同じ1975年に、米Atariが開発したHomePONGという家庭用ゲーム機が発売され、大ヒットした。日本でも早い段階で輸入され、やはり玩具業界が積極的に日本市場に紹介していった。

 その後1979年には、LSIを使った「LSIゲーム」と呼ばれる製品が登場する。米国ではハンドヘルドゲームと呼ばれる、ディスプレイ一体型のゲーム機だ。これも日本ですぐに輸入され、1980年には任天堂が「GAME&WATCH」というゲーム機を発売した。

 「なぜ時計(WATCH)かは不思議だが(笑)、おもちゃだけでは商売にならないだろう、使わないときは時計として使ってもらおうという弱気な名前で販売した」

 1981年、任天堂はアーケードゲームにも進出する。当時大ヒットしていたナムコのパックマンに「子どもだけでなく女性も参加できるというところに衝撃を受けた」ことから、大人も楽しめるゲームとして「DONKEY KONG」を発売。このゲームは任天堂にとって革命的な製品であったといい、ここで培った経験がその後のゲーム開発に大きく役立つことになる。

070928_gamewatch.jpg「GAME&WATCH・MULTI SCREEN」のDONKEY KONG

 1981年から1982年にかけてはLSIゲームブームが到来。2画面のディスプレイを搭載した「GAME&WATCH・MULTI SCREEN」にDONKEY KONGを移植して販売した。「MULTI SCREENは今のニンテンドーDSの元祖といえる機器。グラフィック面などでDONKEY KONGの持ち味を完全に伝えることはできなかったが、これさえ買えば毎回お金を入れる必要はなく、飽きるまで何回でも遊べるということを日本の子どもたちに紹介できた」

 同じ1982年ごろに米国では、Atariがマイクロプロセッサを使った「ATARI 2600」というゲーム機が大ヒットする。カートリッジでゲームを変えられる点が人気を呼び、任天堂にも「いままでの問題をすべて解決する家庭用ビデオゲーム機で、ビデオゲームの決定版らしいということは伝わってきた」という。

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