ダルフール救済キャンペーンを支える「MixTape」--楽曲販売の新風となるか?

文:Stefanie Olsen(CNET News.com) 翻訳校正:藤原聡美、大熊あつ子、小林理子2007年06月04日 22時37分

 ある音楽キャンペーンが、紛争の続くスーダン西部のダルフール地区を援助するための資金を集めることを目指している。このキャンペーンで、民間の国際的人権擁護団体Amnesty Internationalは、ソーシャルネットワーキングサービス「MySpace」やブログ界を通じてJohn Lennonのトリビュートアルバムを宣伝するため、新しいウィジェットを活用しようとしている。

 「Instant Karma」と呼ばれるこのキャンペーンでは、U2、R.E.M.、Green Dayなど多数のアーティストがJohn Lennonの曲をカバーした同名のアルバムを売り出す。このアルバムは、米国時間6月12日に店頭で発売され、Appleの「iTunes Store」でもダウンロード販売が開始される。1980年代にアフリカの難民救済のために展開された音楽キャンペーン「We are the World」の現代版ともいうべき今回のキャンペーンは、大量虐殺が行われ何百万人もの難民を抱えるダルフールを援助するために、急速に広がる強い影響力を持つウェブの性質を活用して資金を集めることを目指している(米Bush政権は5月29日、スーダンに対する新たな制裁措置を発表した)。

 今回採用された新しい試みの1つに、「MixTape」というウィジェットがある。MixTapeを使うと、誰でも簡単に、10行分のコードをカットアンドペーストして、音楽プレーヤー、政治的請願書、CDストアを自分のMySpaceページやブログ、ウェブサイトに追加できる。電子商取引サイトを運営するGoodStormが作ったMixTapeは、ユーザーが自分の曲をアップロードし管理できるようにするもので、これによりサイト訪問者は、ページ上のウィジェットから直接曲の試聴や購入が可能になる。Amnestyのキャンペーンでは、MixTapeを使ってアルバムのサンプル曲を聴かせ、それからiTunes Storeにリダイレクトして、ダウンロード購入してもらうという流れになる。その収益はダルフール支援のために使われる。

 Amnestyのインターネットコミュニケーション担当ディレクターSteve Daigneault氏は、次のように語っている。「人は自分のページにアクセサリーを付けるのが好きだ。これはとてもクールで個性があり、しかも非常に役に立つ方法だと思う。友人たちは、あなたのMySpaceページで請願書に署名し、iTunesに行かなくてもアルバムの一部を試聴できる」

 18カ月前に立ち上げられたGoodStormは、慈善活動をテーマとする電子商取引サイトで、MixTapeは5月29日に「プレベータ版」としてリリースされた。Amnestyは、6月第2週にInstant Karmaのウェブサイトを更新してMixTapeのプロモーションを追加するほか、テレビやラジオのコマーシャル、印刷物の広告を通じてアルバムの販売を促進する計画だ。

 しかし、Amnestyの慈善活動は別にして、MixTapeの技術は、ウェブコミュニティーに受け容れられれば、音楽業界にさらなる変化が訪れるきっかけになる可能性があると、業界アナリストは指摘する。SNOCAPなど他企業のテクノロジ同様、MixTapeを利用すると独立系のアーティストやレコードレーベルが楽曲をアップロードして、実店舗に頼ったり、マーケティングに巨額の費用を投じたりすることなく販売することができる。だが、このウィジェットが他と異なるのは、MixTapeの場合、音楽ファンが曲のプロモーションを担うことになり、好きな曲を自分のウェブページで販売して、ごく少額の分け前とはいえ利益も得られる点だ。

 Forrester Researchの主席アナリストJames McQuivey氏は次のように述べる。「この技術では、普通の人々がみんな自分のお気に入りの楽曲の潜在的な小売業者になれる。この技術の強力な点は、音楽を介してコミュニティー感覚を作り上げることにある。その曲の本当の魅力を語るのに、ファン以上に適役はいない」

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