Blu-rayの優位を揺るがすか--割高なディスク製造コストに懸念浮上 - (page 2)

John Borland(CNET News.com)2005年11月29日 13時05分

 たいていの場合、製造プロセスやビデオ圧縮、ディスクフォーマットといった技術的詳細は一般消費者にはほとんどが関係ない。しかし、次世代DVDフォーマットの標準争いが、1970年代半ばに繰り広げられたVHS対Betamaxに似た戦いになるとの見通しに、同業界はおそれをなしている。Sanford Bernsteinのアナリストの予想では、一方が優位な立場を確立することなくHD DVDとBlu-rayの両方が立ち上がれば、メディア関連企業は7年間に合わせて160億ドルの損失を出すことになるという。明確な勝者がいないと、消費者がどちらを購入していいかわからないというのがその理由だ。

 いまのところ、Blu-rayのほうがより大きな影響力を持っているが、これはWarner BrosやParamountが、HD DVDとBlu-rayの両方でタイトルのリリースすると発表したことによる。それに対し、Blu-ray陣営にはHD DVDの支持を打ち出したところはない。

 ディスクメーカー各社は、数カ月前から両技術のテストを進めており、現在は本格的な製造に向けた準備を進めている。ソニーピクチャーズは今月に入って、「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」を使ったBlu-rayタイトル初の「リファレンス」ディスクを用意したことを発表した。このディスクは、テスト目的で既にプレイヤーメーカー各社に出荷されている。

 大手ディスクメーカーCinram InternationalのコミュニケーションディレクターLyne Beauregardは、「Blu-ray技術とその製造工程は新しい。同フォーマットが立ち上がって成長すれば、数世代にわたって機器が出てくることになる。これを洗練させ、効率化が実現できれば、コストも低下する」と語っている。

 Beauregardによると、CinramではBlu-rayの製造ラインがすでに1つ稼働しているという。一方、HD DVDディスクも製造できる新しいDVDラインは12もある。同氏は、製造原価の比較を明らかにしなかった。

 Blu-rayを批判する先のディスクメーカー幹部によると、同社の試作ラインでは、Blu-rayの製造効率がHD DVDより大幅に劣ることが判明したという。たとえば、現在ソニーしか製造していないハイテク・フィルムレイヤなど、Blu-rayではDVDと異なる素材を使うため、材料コストが高いという。

 「この差は非常に大きい。実際にかかっているコストであり、対等の価格になることは絶対にないと思う」(同ディスクメーカー幹部)

 この幹部はさらに、両陣営が約束する「ハイブリッド」ディスクの実現もかなり疑わしいと言う。これは、HDコンテンツを片面に格納し、もう片方に普通のDVDを格納するというものだが、同幹部によると、実際には最も低容量のHD DVDとDVDの組み合わせなら実現可能だが、Blu-rayや容量の大きいHD DVDディスクと標準フォーマットを一緒に格納するにはかなりのコストがかかるという。

 今のところは、新技術に関する信頼できる製造データがまだ乏しいため、このような比較の多くは知識に基づく憶測に過ぎない。

 先ごろネットで公開されたある白書には、Blu-ray対応に向けた新しい製造設備導入には全世界で最大10億ドルかかるが、HD DVDなら、その10分の1以下のコストで既存のDVD製造設備を手直しして対応できる、との予測が示されている。この白書は、ディスクレプリケータの幹部を数年間務めた経験を持つエンジニアのRichard Marquardtが公開したものだ。

 「すでに多くの悩みを抱えた財務責任者に、これだけ膨大な資本金を調達してそのリスクを負う、という新たな難問がふりかかる」(Marquardtの白書)

 だが、Blu-ray陣営では、同氏とWarren Lieberfarbとの密接な関係を挙げながら、同氏の予測に対してすぐに異議を唱えた。Warren Lieberfarbは、HD DVD陣営と深いつながりのあるハリウッドのコンサルティング会社だ。MarquardtはCNET News.comとのインタビューのなかで、Lieberfarbから製造の問題に関する意見を求められたが、どちらの陣営とも個人的あるいは金銭的つながりはない、と語っている。

 コストと品質の問題が本当に明らかになるのは、両フォーマットが市場に登場する来年になる。

 「コストだけで判断していたらDVDの発売はなかった」とソニーのAlperovichは言う。「そのような判断は馬鹿げている」(Alperovich)

 

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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