インテルがワイヤレスUSBの試作機をデモ、UWB仕様策定問題にも言及

 インテルは4月8日、同社が参加するマルチバンドOFDMアライアンス(MBOA)が策定しているUWB仕様とその最新活動状況に関する記者会見を、千葉県浦安市内のホテルで開かれているIntel Developer Forum Spring 2004 Japanの会場にて行った。

 UWBは、最大で数百Mbpsクラスもの速度で無線データ通信を実現する技術だ。通信範囲こそ10m前後程度だが、低消費電力で短時間に大量のデータを送受信可能なため、次世代デジタル家電の世界においてHD(High-Defenition)TVのような高精細画像の無線によるやりとりが可能だとして注目を集めている。

Wisair製のトランスミッタ(左)とUWBの通信モジュール(右)。10円玉と比較するとその大きさがわかる。

 今回の発表では、UWBの応用技術であるワイヤレスUSB(WUSB)の仕様解説とデモストレーション、WUSBの基盤となるWiMediaの紹介が行われた。現在MBOAでは、UWBを利用してさまざまな機器を接続可能なように、すべての共通基盤となる「MBOA UWB PHY」「MBOA MAC」という2つの物理層と、物理層の上で動作するアプリケーションとの仲介役として違いを吸収する層である「WiMedia」の3つの層を定義している。その上で動作するアプリケーションとしては、WUSB、ワイヤレス1394(W1394)、DHWG(Digital Home Working Group)策定によるTCP/IPスタックなどの利用が考えられている。WiMediaでは、単一の無線方式で、これらどのタイプの通信においても平等に帯域をシェアして通信が行えることを目指している。

 インテルでは、ワイヤレスUSBプロモータ・グループを結成し、MBOAが策定したWiMediaをベースに、通常の有線USBと同等の感覚で使えるWUSBのアプリケーション・スタックの作成を行っている。同社によれば、最初のWUSB 1.0仕様は2004年末までに策定予定だという。会場では、NECによるWisair社のトランスミッタを用いたワイヤレスUSBの試作システムならびに、マルチバンドOFDMシステムのデモストレーションが紹介された。

ワイヤレスUSBのデモストレーション用の試作機。前出のトランスミッタがアンテナとして用いられている。2005年にはより小型化された形で製品化が行われるだろうという。

 UWBは現在、IEEEの802.15.3a(Wireless Personal Area Network:WPAN)ワーキンググループで標準化が進められている。MBOAも当初は同ワーキンググループに仕様を提出してIEEEと共同で標準化作業を進めていたが、さまざまな機器をサポートするより柔軟なMAC層の仕様を主張するにあたり、IEEEとは別に仕様策定を進めることを決定した。MBOAの説明によれば、作業遂行のために75%の承認が必要なIEEEでは策定作業に遅れが生じるため、最初の1.0仕様の策定が完了するまではIEEEとは独立して作業を行い、完了後に再度IEEEに提案を行うつもりだと主張している。

 複数仕様の両立による市場の混乱が懸念されるが、発表会に参加した米Texas Instrumentsのダスティ・ラッセル氏は「Bluetoothの仕様策定でも同様の事態が発生した。MBOAは、PCから家電まで90社ものメジャー企業の多くが参加する団体であり、市場に異なる仕様の製品が乱立することはないだろう。ユーザーの利便性を第一に作業を進めていきたい」とその考えを一蹴する。

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