苦情殺到のAC--同じCMを大量に放映せざるを得ない理由

 東北を中心に各地で大きな被害をもたらした東北地方太平洋沖地震。その後の影響も各所に及んでいるが、現在、思わぬ余波を受けているのがACジャパン(AC:旧公共広告機構)だ。

 ACは、放送や新聞、広告といった業界の会員企業から得た会費で公共広告を作成し、さまざまな啓発活動を展開する経済産業省所管の特例社団法人。現在多くの企業がCM放映を自粛しているため、その差し替えとして、連日ACのCMを大量に見かけるに至っている。

 そのACのCMに対して「内容がそぐわない」「しつこい」「サウンドロゴが不快」などといった苦情が数多く寄せられ、ついには公式サイト上で謝罪文を掲載するに至った。

 「不快な思いをさせてしまった視聴者の皆様にはもちろんのこと、(CM出演者である)仁科(亜希子、仁美)さん母娘など、関係者の方々にも大変申し訳なく思っています」(ACジャパン東京事務局)

AC サウンドロゴが削除されるに至ったACジャパンの広告

 また、一部スポットで消去作業が行われている「エーシー」のサウンドロゴについても「CMと言えど1つの作品であり、通常であれば放送局の加工を認めることはないのですが……。この度の苦情などを受けまして、ACジャパン側から放送局に消去をお願いしました」(同)という。

過去の名作CMを放映しては?

 さて、2011年で創立40周年を迎えたACには、これまでに優れたCMも数多く作成された。余談にはなるが動画共有サイトなどでは「怖いCM」の代名詞として熱烈な愛好家すらいるという状態だ。地震後、大量に流されるCMを見た人からの意見の中には「(阪神大震災関連のスポットなど)過去の作品を流してみては」という声もあるそうだ。

 しかし、実際に過去の作品を放映するには難しい現状がある。理由のひとつは著作権だ。放映期間を過ぎた作品を再び流すためには、出演者や使用音楽、制作側などすべての関係者からの許諾が必要となる。また、CM制作にあたっては全国45の番組制作会社などによるコンペ方式が採用されており、AC自身が直接制作していないことも権利処理を複雑にしている。

 加えて、過去のCM素材を放送局に受け渡す作業も困難だ。現状、CM放映にあたってはAC自身が放送用テープに素材をダビングし、全国の放送局に直接配布する仕組みをとっている。先のサウンドロゴ消去作業が各局の個別対応となっているのもこのためで「仮に許諾を得ることができたとしても、ダビング作業に膨大な時間とコストがかかってしまう」(同)と話す。

 ACでは過去の名作放映は難しいながらも、文字を中心に構成した「東日本大震災用新作CM」を即座に制作、放映した。さらには海外サッカー選手、人気タレントらを起用した被災地へのメッセージCMも本日より放映開始するなど「限られた人員とコストではありますが、我々にできることを続けていきたい」(同)と意気込む。

 “自粛ムード”で頭を悩ませる日々は続くが、AC自身もまた、前向きに活動を続けている。

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