見るだけのスマホVRはつまらない--コントローラも自作できるVRプラットフォーム「Vroom」

 スマートフォン用ゲームなどを手がけるワンダーリーグは10月7日、iOS/AndroidデバイスでVRコントローラが利用できる「Vroom Project」を発表し、Kickstarterでクラウドファンディングを開始した。これまで“見るだけ”だったVRにコントローラをプラスすることで、VRコンテンツにインタラクション要素を持たせることができる。

ワンダーリーグ代表取締役社長の北村勝利氏
ワンダーリーグ代表取締役社長の北村勝利氏

 VR向けコントローラと言えば、Googleの「Daydream」でも専用コントローラが登場している。ただし、VR体験を削ぐことがないよう、Daydreamに準拠したスペックを持つハードウェアが必要となるほか、制作したVRコンテンツはGoogleの審査を受ける必要があり、「誰でも作れる」とは状況が異なる。

 Vroom Projectは、iPhoneやAndroid端末など既存のスマートフォンと、VRゴーグル、オープンソースのVRコントローラを組み合わせることで、Daydreamがカバーしない端末やビジネス利用でも、インタラクション性のあるコンテンツを制作できるのが特徴。

 同プロジェクトでは、モーションコントローラ、オープンソースキット、VRコントローラを提供。オープンソースのため、開発者側がゲームに合わせて拳銃型、グローブ型などカスタマイズできる。また、Unityに対応した開発環境(SDKとキャラクタ用モーションのアセット)を提供することで、VRゲーム開発の敷居を下げている。

 また、これらのパッケージはDaydreamと互換性がある。Daydream用の開発環境としてそろえ、Vroom向けにもゲームを提供するといったマルチソースで展開できる。このほか、「Gear VR SDK」に対応しており、低レイテンシが特徴のGear VRにオリジナルのコントローラを組み合わせることで、高品位なVR体験も構築できる。

「Vroom」用の標準コントローラ。6800円で販売する
「Vroom」用の標準コントローラ。6800円で販売する
基板は片方に電子部品を実装。もう片方に静電容量式のタッチセンサを搭載。カバーと基板のみの構成で部品点数を抑えている
基板は片方に電子部品を実装。もう片方に静電容量式のタッチセンサを搭載。カバーと基板のみの構成で部品点数を抑えている
部品側。センサには3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、3軸地磁気センサを搭載する
部品側。センサには3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、3軸地磁気センサを搭載する

 Vroomのターゲットは、Unityのエンジニアだ。世界中5000万人のUnity開発者の中で、VR/ARに興味のあるエンジニアを囲い込むことで、MR(Mixed Reallity) 時代も見据えたプラットフォームとしてのビジネスを構想している。通常のゲームからアダルトまでVRのニーズに応えられるプラットフォームだとしている。

 まずは、Unityエンジニアに広く使ってもらうため、100ドルで販売予定の通常のアセットを、9ドルと3ドル(提供までの期間を3カ月後と6カ月後に分けている)で入手できるようにする。Daydream用の環境としても利用できること、Googleの審査なしにインタラクティブなVRコンテンツが制作できることなどもアピールする。

「大量導入」「安価」「インタラクション」なVRシステムを目指せ

 ワンダーリーグ代表取締役社長の北村勝利氏は、25年前からソフトウェア・情報サービス企業を複数立ち上げている起業家。また、2000年に設立した携帯電話向けのマーケティング会社では東芝の傘下に入っている。こうしたソフトウェアメーカーとハードウェアメーカーの経営者を経験した視点から、今回のVroomを企画している。

 Vroomは、もともと不動産や業務向けVRシステムの開発が大本になっている。スマートフォンゲームを制作していた同社は、ハードウェアの普及が進んでいないコンシューマ向けVRタイトルの開発を避け、BtoB向けVRシステムの制作に乗り出した。

 ところが、「ハードウェアが潤沢ですぐに用意できる」「コントローラが使える」というVRシステムが、HTCの「Vive」しか存在しなかったという。また、Vive本体が高価であるうえ、ハイスペックなPCの導入も必要となっており、コストの高さもBtoB向けには足かせになっていた。

 そこで、「Google Cardboard」など既存のスマートフォン向けVRシステムに、カスタム可能なコントローラを組み合わせることで、安価かつ大量導入可能なVRインタラクションのシステムとしてVroomを作り上げた。ハードウェア設計は、北村氏が社外に設けていたものづくりのコミュニティを活用したという。日ごろからハードウェア開発を実施していたため、短期間でのコントローラ制作を可能にした。

 なお、Googleがローエンド向けVRシステムを用意する可能性もあったのだが、北村氏は「Daydreamの発表によりその可能性が低くなった」と判断している。また、コントローラを作るメーカーが参入する可能性もあったものの、自社で生産するコントローラの設計をオープンにするとは考えにくく、「ソフトウェア企業だからこそできる発想」だと北村氏は語る。

 今後は、ヘッドトラッキングを実現するデバイスメーカーなどとの協業を検討していくという。VRプラットフォームを強化するとともに、BtoB向けの安価なVRシステムの拡充にも努めていく。

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