アイコニックな造形は"触れる”ことで誕生した--ニコン「ECLIPSE Ts2R/Ts2」

 iFデザインアワード 2016の金賞を受賞した、キヤノン、ニコン、ソニーの3社4製品のデザイン担当者が語った「デザインのプロセス」を全4回で紹介する。今回はニコンの映像事業部デザイン部プロダクトデザイン課の小林達也氏が話す、倒立顕微鏡「ECLIPSE Ts2R」「ECLIPSE Ts2」の「目に見えない世界を可視化するデザイン」とは――。


倒立顕微鏡「ECLIPSE Ts2R」「ECLIPSE Ts2」

デザインポイント。形状とアイコニックなデザイン

顕微鏡のデザインがカメラや双眼鏡と違うこれだけの理由


ニコンの映像事業部デザイン部プロダクトデザイン課の小林達也氏

 ニコンでは、カメラや双眼鏡などの映像、半導体装置やFPD装置などの精機、マイクロスコープや産業機器などのインストルメンツ、メディカル、その他と主に5つの事業を手掛けており、デザイン課ではそのすべてに関わる。倒立顕微鏡は、インストルメンツ事業が手掛ける製品で、ユーザーは研究者、医師といった専門家だ。

 「ユーザーは顕微鏡を扱うプロフェッショナルではない。それを念頭に、誰にでも使えるものを目指した」と小林氏はデザインコンセプトを話す。加えて使用シーンを想定し、「清潔」というキーワードから調和するデザインを模索していったという。小林氏が顕微鏡のデザインをする上で感じた課題は

  • 要素が多いため、形状が複雑になる
  • ホコリなどがたまりやすく掃除がしにくい
  • メカニカルな形のためユーザーフレンドリーではない

の3点。また販売期間が10数年に渡るなど、新製品開発が頻繁ではないこと、機構が複雑なため、顕微鏡シリーズでも異なるモデルに見えてしまうことなどを受け「シリーズとしての統一されたデザイン言語が必要」と考えた。そこで「クリーン、クリア、ハーモニー」の3つをデザインコンセプトに据え、同じシリーズデザインへと落としこんでいった。

実際に触れて見えてきたデザインアイコン

 その際に重要な工程だったのが顕微鏡に直に触れること。「顕微鏡は普段の生活で使うことのない製品。使用感や問題点などがわからなかったため、ワークショップを行い、実際に顕微鏡を使ってみた」ことで製品への理解を深めたという。

  • デザインスケッチ

  • 実際に顕微鏡を触ったワークショップの風景

 ECLIPSE Ts2R/Ts2は、倒立顕微鏡のため、試料を下側から観察する構造になる。途中で折り曲げられる光軸の形をアイコニックに表現できないかというアイデアが生まれ、そこからデザインを仕上げていった。デザインの段階は、デザイナー3名でスケッチを複数案作成。最終的なデザイン決定の前には、3Dデザインにまで落としこむ。

 完成したデザインは、正面から見ると三角に近い形で、安定感と小型を体現したシェイプとのこと。横から見ると光軸を視覚化したアイコニックなデザインに仕上がっている。

 また、サイドのつまみは、顕微鏡を覗き込んでいる時はレンズを見ているため、操作がしにくく、手探りでも操作しやすいポイントを探して付けたという。これもワークショップを通して実機に触れたことが役立っている。

  • キースケッチ

  • デザインコンセプトに沿って作ったデザインスケッチ。複数案を作成している

  • 決定前には3Dによるデザインを作る

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