電波なくても使える登山地図アプリ「YAMAP」、コロプラなどから1.7億円を調達

 登山者向けの地図・コミュニケーションアプリ「YAMAP」を運営するセフリは3月14日、コロプラ、大和企業投資が運営する大和ベンチャー1号ファンド、ドーガンが運営する九州アントレプレナークラブファンドの3社から、約1.7億円の資金を調達したことを発表した。今後は、事業規模の拡大とサービス体制の強化を目指す。

セフリ代表取締役の春山慶彦氏
セフリ代表取締役の春山慶彦氏

 YAMAPは、携帯電話の電波が届かない場所でも、スマートフォンで位置情報を確認できるアプリ。事前に地図データをダウンロードし、GPSを活用することで、どこにいても自身の場所を確認できる。これにより3~10万円する専用のGPS機器を買わなくても、山での遭難事故などを防げるようになるとしている。PC版では地図データをダウンロードでき、プリンタで印刷することで紙の地図としても利用できる。

 地図機能だけではない。マイページでルートや活動時間・距離などを記録したり、写真や動画で山の感想をユーザー同士で共有したりできる。さらに、実際にユーザーが登山で使ったアウトドア用品を比較できるサービスや、山で遭難した際に最大300万円まで補償する保険、登山の楽しさを伝えるメディア事業「.HYAKKEI」など幅広く展開している。

サービスのイメージ
サービスのイメージ

現代人は自然で身体を動かしていない

 創業者であるセフリ代表取締役の春山慶彦氏は、もともと東京で旅行雑誌「風の旅人」の編集に携わっていた。自身も山登りやアウトドアが好きで月に数回は出かけていたため、現代人の多くが日常生活において自然の中で身体を動かす機会がないことに問題意識を持っていたという。その解決策として約3年前に立ち上げたのが、アウトドアが楽しくなるサービスであるYAMAPだ。

 また、故郷に還元したいという思いから、上京して働いていた東京ではなく生まれ育った福岡県に拠点を構えた。「都市と地方を往還して回すような仕組みを作りたかった。また、地方でも勝負できるというロールモデルを作りたかった」(春山氏)。現在の社員数は6人で、社内のメンバーと月1回は山に登っているほか、定期的にユーザーと山登りするオフ会も開いている。なお春山氏が最も好きな山は、槍ヶ岳を始めとする日本アルプスの山だという。

「YAMAP」
「YAMAP」

 リリースから約3年が経ち、アプリのダウンロード数は26万。このうち月間アクティブユーザー数は16万で、月間900万PVを超えるという。口コミで利用者が増えており、30~40代の男性が多いそうだ。レジャー白書によると、日本で年に1回以上登山をした人は2012年に860万人。逆に言えば1億人以上が山登りをしていないため、まだまだサービスの伸びしろはあると春山氏は見ている。

 企業や自治体との取り組みも進めている。カシオが3月下旬に発売するアウトドア向けのAndroid Wear スマートウォッチ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」や、高耐久性スマートフォン「TORQUE」に、YAMAPアプリがプリインストールされている。また、ニセコや長野のスキー場と連携して、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツに活用されているという。さらに、自治体とは日本の自然と街の文化をセットで紹介する、訪日外国人旅行者向けの観光地図を提供する予定だ。

Android Wear スマートウォッチ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」
Android Wear スマートウォッチ「Smart Outdoor Watch WSD-F10」

 今回、資金調達したのは、東京の事業者であるコロプラと、東京のVCである大和企業投資、そして地元福岡のVCであるドーガン。この3社から出資を受けられたことが、地方ベンチャーのモデルケースを作る上では重要だったと春山氏は話す。コロプラは、昔から位置情報ゲームに取り組み、そのデータを自治体に提供するなどしており、地図サービスのYAMAPとは相性がいい。また、大和企業投資やドーガンからは他の企業とのコネクションや、財務的なアドバイスに期待する。

 マネタイズについては、ユーザーが50〜100万人を超えるまでは課金などをするつもりはないため、収益化は1〜2年後と見ている。まずは、調達した資金によってサービスの質を高める。たとえば、今後はアプリにゲーム性を取り入れる予定だという。位置情報を使ったサービスとしては「Ingress」などが人気だが、YAMAPでは頂上に着いたらスタンプが手に入る、ユーザーと登山道ですれ違うとコミュニケーションが生まれるといった、オフライン地図ならではの機能を提供したいとしている。

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