「手数料モデルはうまくいかない」--ヤフーが“予約革命”を打ち出した狙い

 ヤフーは2月26日、宿泊予約サービス「Yahoo!トラベル」の新戦略を発表した。ホテルや旅館などの宿泊施設と直接契約することで、システム利用料(成約手数料)を無料にする。同日にはヤフー執行役員 ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏によって新戦略の詳細が語られた。

 これまでのYahoo!トラベルは、宿泊施設の情報を保有する予約サービス事業者から情報提供を受け、ヤフーは利用者の宿泊予約を仲介するアグリゲーターという形で1997年からビジネスを展開してきた。しかし、今後はヤフーが直接ホテルや旅館などの宿泊施設と契約し、宿泊プランを掲載していく。なお、今まで情報を提供してきた宿泊予約サービス事業者とのビジネスは直販と平行して継続する。

宿泊予約サービスは、“予約革命”の本丸

  • ヤフー執行役員の小澤隆生氏

 今回の直販事業参入の大きなポイントは、宿泊施設が情報を掲載する際の初期費用や、予約成立時に発生してきたシステム利用料を無料にしたという点だ。また、Yahoo!トラベルを“袋小路”にしないよう、宿泊施設が自社サイトに誘導するための外部リンクの設置も自由にできるようにした。情報を掲載する宿泊施設のメリットを大きく打ち出した形だ。出店施設数や予約件数などの目標数値は非公開としたが、早期に業界ナンバーワンのサービスに成長させたいとしている。

 ヤフーは、2013年10月に“eコマース革命”を打ち出し、すでに「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!オークション」などで、ストアの出店手数料やシステム利用料、売上のロイヤリティを無料にするなど、新規参入の障壁を下げる施策を進めている。この発表によって、新規出店希望者は現在までに9万件を突破。また、“予約革命”と題して飲食店予約サービスでも同様にサービス手数料を無料化し、掲載店舗数が急速に増加しているという。

  • 直販モデルとアグリゲートモデルを併存させる

 小澤氏は、今回の施策を「“予約革命”の本丸」と位置づけ、宿泊施設にとってのメリットを追求したと説明する。手数料無料化の狙いについては「トラベル領域におけるEC(ネット予約)の割合は40~50%まで成長してきたが、まだネット予約を活用できない宿泊施設事業者は多い。そうした事業者に門戸を開き、日本で最も多くのユーザーを抱えるYahoo!JAPANが本格的に旅行予約事業に乗り出すことで、ECの割合だけでなく旅行業界全体の市場規模を拡大させていきたい」と語る。

 また今回のトラベル事業の改革は、コマース革命の構想を立ち上げた際にも対象として挙がっていたという。しかし、まずはコマース革命を先行させることで事業者からの反響をみてみたいという考えもあり、「コマース事業の施策に十分な手応えを感じた」(小澤氏)ことから、この時期の発表になったことを明かした。

広告モデルへの転換、勝算はあるのか

 今回の施策を機に、Yahoo!トラベルは収益構造を“手数料モデル”から“広告モデル”へと転換する。また、「具体的な話はないが、広告モデルへのビジネス転換が成功していけば、今後もこのような施策を他の事業に展開していくことはありうる」(小澤氏)とも。広告の価値を最大化させるために、無料化によってマーケットプレイスの参入障壁を大きく下げ、サービスを盛り上げることを優先させたいとしている。

  • 初期費用やシステム利用料を無料化することで、参入障壁を下げる

 小澤氏はビジネスモデル転換の背景について「Yahoo!JAPANはさまざまな領域で手数料モデルのビジネスを展開してきたが、いまいちうまくいっていない。“失敗”とは言いたくないが、手数料モデルで展開してきたサービスと比べて、広告モデルで展開してきた他のサービスのほうが、成功のインパクトが大きい。その成功体験がヤフーにとっては大きい」と説明。

 Yahoo!オークションの落札手数料のように手数料モデルで成功しているケースもあるが、店舗や宿泊施設の“出店”という形態で運営しているショッピングやトラベルではこれがうまくいかなかったのだという。こうした反省を踏まえ、トランザクション課金によるビジネスモデルが主流になりつつある中で、あえてヤフーの強みである広告モデルにシフトし、“ヤフーらしいビジネスモデル”で事業の拡大を目指したい考えだ。「世の中のトレンドは成果報酬モデルなのかもしれないが、広告モデルが私たちの“本業”。私たちの強みを貫き通すことでビジネスを拡大していきたい」(小澤氏)。

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