京都の“通り名”は検索できない?--解決目指す「ジオどす」

 京都発のエンジニアやサービスを世界へ発信することを目的にした「京都“まゆまろ”杯 スマホアプリコンテスト」。330作品の中から最終審査を経て最優秀アプリ賞に輝いたのは、京都市の“通り名”の住所から緯度経度情報を取得する住所検索エンジン「ジオどす」だ。

 京都市の中心部では、平安京の時代に採用された碁盤目状の区画「条里制」が受け継がれており、東西南北の通りはすべて直角に交差している。通り名の住所では、目的の建物が面している通り名を先に書き、近くの交差点の通りを基点に目的地がある方角を、上ル(北)下ル(南)東入ル、西入ルと表す。たとえば「四条通 東大路 西入ル」という住所があった場合、四条通沿いに目的地があり、東大路通と四条通の交差点を西へ向かうと次の通りまでに目的地にたどり着ける。

  • 通り名住所が使われている京都中心部

  • 通り名住所への向かい方

  • 通り名の呼び方もさまざま

 通り名を使った住所は京都市民には馴染みが深く、現在も「○○区××通△△上ル」といった住所が広く使われている。ただし、通り名表記は1点を指すものではないため、ある程度の範囲しか特定できない。また、一般的な「○丁目○番地」といった郵便住所とも異なっている。そのため、地図サービスやカーナビなどでは純粋な通り名の住所を検索できず、「京都市○○区」以下を切り捨てた住所や、ローカルサーチで登録された住所などが表示されてきた。

  • 京都には区内に同じ町名が複数存在する

 では、なぜ各社は通り名に対応しないのか。それは、総務省が通り名とは別に存在する郵便住所を正式な住所に認定していること、また京都市のみに対応するコストの問題や取り扱いの難しさなどが挙げられる。そのため、通り名への対応は長い間先送りにされてきたという。また、京都は「中京区石橋町」など区内に同じ町名が複数存在することから郵便住所にも統一できないのが現状だ。

  しかし、先ほど述べたように京都市内では古くから通り名が浸透しており、店舗も通り名の住所で紹介されていることが多い。地図サービスやカーナビで通り名が検索できないために、旅行者が京都市内のホテルやレストランの場所を見つけられなかったり、災害時などに通り名で避難所の場所を調べられないといった問題が起きているという。

  • チーム「ジオどす」の太田垣恭子氏(左)と紀野惠氏(右)

 「京都市内の中心部と聞くとすごく狭いエリアと思われるかもしれないが、東京でいう山手線の内側、もしくは新宿、渋谷などのエリアでまったく住所が検索できない状況になっているのと同じ。これはとても大きな問題だと思っている」――こう語るのは、チーム「ジオどす」の太田垣恭子氏だ。

 ジオどすは、ウェブ制作会社であるANNAI(太田垣恭子氏と紀野惠氏の2名)と位置情報システム会社のロケージング(上田直生氏の1名)の2社がジョイントベンチャーの形で、2009年から運営している。もともと別のサービスを開発している際に、京都市の位置情報が正確に取得できないことに気づき、ジオどすの開発に着手したという。

 検索して取得できる緯度経度情報は、通り名住所という表記の揺らぎがある自然文から交差点情報を割り出し、それを起点に方角を出しエリアと中心点を返す仕組みだ。完全に住所を特定できるわけではないが、「カーナビで目的地付近を示すのと同等の結果は得ることができる」(太田垣氏)という。

  • 「ジオどす」の検索結果

 ジオどす単体では京都の通り名表記のみの対応だが、開発者向けのAPIも公開されており、Goolgle マップのAPIなどと組み合わせることで補完的に使用できる。APIは個人の非商用サービスや防災系サービスには無料で、法人には有料で提供しており、これまでは不動産検索や企業のエリアマ―ケティングなどに活用されてきたという。

 今後は、各カーナビ会社や地図情報サービス会社、配送会社、不動産会社などに、ジオどすの住所データやAPIを提供していきたいとしている。また、災害時の活用に向け観光庁や京都府とも連携したいとした。「地図サービスなどで通り名が検索できないという状況を少しずつ変えていきたい。自治体や地図会社との連携を密にしながらジオどすを展開したい」(太田垣氏)

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