空前の警備態勢を敷くアテネ五輪--セキュリティ関連予算は総額15億ドル超に

Robert Lemos (CNET News.com)2004年08月16日 12時38分

 紀元前9世紀から、オリンピックに参加する国々は大会期間中の休戦に同意してきた。これがギリシャ語で「エケケイリア(ekecheiria)」もしくは「停戦協定」として知られるものだ。

 だが、古代五輪から3000年を経たいま、第28回アテネ大会の警備関係者は、伝統的な親善の姿勢だけでは防ぎきれない危険を封じるべく、入念な対策を講じている。ギリシャは、総額15億ドルのセキュリティ対策予算のうち数億ドルを投じて、選手や観客などの安全確保のための技術を導入した。

 アテネ五輪組織委員長のGianna Angelopoulos-Daskalakiは米国時間8日、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会メンバーに対し、「最優先とされる点についてはすでに対策を講じた。オリンピック史上最も包括的で、人材と資金を最も多く注ぎ込んだ警備態勢が整っている」と語った。

 2004年アテネ五輪が幕を開けた13日から、あわせて7万人近い警備担当者が、さまざまな新技術に支えられながら大会の監視任務に就いている。

 たとえば、ビデオカメラやスピーカー、マイクをつけた高さ約6メートルの電柱が1100本以上設置されたが、これらは混乱を即座に発見するためのもので、分散監視ネットワークを形づくっている。選手やコーチが選手村へ出入りする際にはバーコードスキャナとIDカードを使ったチェックが行われている。また、大会の成績や他の情報をやり取りするシステムは市内全域に張り巡らされた専用のネットワーク上で稼働している。さらに、開催地上空には高感度監視技術を搭載した小型飛行船が巡回し、大会に迫る脅威を空から監視している。

 アテネ五輪と総額で3億ドル近い契約を結んだシステムインテグレーターのScience Applications Internationalは、その一環として警備インフラを構築した。同社でプロジェクトマネジャーとして働くDavid Tubbsによると、これらの技術はどれも以前からあるものだという。たとえば、先の小型飛行船は、1996年のアトランタ大会でも使用されており、ビデオカメラも同大会で大々的に活用されていた。だが、これには適切な判断があった。

 「今大会は自分にとって3回目のオリンピックだが、オリンピックを新技術の実験場にはできない。リスクを高めるのに適した状況ではなく、新しいことを試す場所ではない」と同社のシニアバイスプレジデント兼プロジェクトマネジャーのTubbsは語った。

 技術はその特性が実証され、ビジネスの世界で普及した後でなければ、一般には広まらないとTubbsはいう。 たとえば、指紋、虹彩スキャンなどの生物学的特徴を調べて身元を特定するバイオメトリクスは、ビジネスの世界ではまだ定着していない。オリンピックでは1996年のアトランタ大会からテストされてきているが、普及には至っていない。毎回、大会運営者は比較的ローテクなバーコードが印刷されたIDカードに頼ってしまう。

 大会関係者は、警備の準備と実施のための費用が総額で15億ドルを超えると見積もっている。これは、2000年のシドニー大会の時に比べて約5倍の金額だ。

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