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コンテンツ流出時代のビジネスモデルは?

2003/07/09 18:44
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 RSSニュースリーダをご存知だろうか。ニュースサイトの要約を巡回取得し、整理して表示するだけの単純なアプリケーションだが、無料で広告も表示されず、関心のある分野の見出しとリンクを複数のメディアを横断する形式で一覧にしてくれるため便利で手放せない。ユーザとしては嬉しい話だが、ニュースでビジネスをするメディアの中には快く思わない人もいるだろう。

読み手が読みたいように情報を読む

 百聞は一見に如かず。スクリーンショットを見てほしい。ここでRSSニュースリーダの例として使ったNetNewsWireにはニュースサイトを登録する欄があり、その見出しの一覧と出典へのリンク、場合によってはニュースの要約も表示される。RSSニュースリーダの動作原理はシンプル。RDF Site Summary (RSS)と呼ばれるXMLフォーマットの一種で記述されたウェブサイトの要約を整理して表示しているだけだ。目的のRSSファイルが置いてあるURLをRSSニュースリーダに登録しておけば、いつでも目的のサイトの最新の要約を横断的に比較・一覧できる。

 ニュースサイトの要約(RSSニュースフィードと呼ばれることが多い)は米国のニューヨーク・タイムズ、英国のBBC、日本のCNET Japan等のようにニュースメディア自身が無料で公開している場合もあれば、syndic8.comやnewsisfree.com、rss-jp.net、bulknews.netなどで提供されているように、様々なニュースサイトのRSSが第三者によって生成・公開されている場合もある。

 勝手にRSSを生成・公開してしまうとリンクの「見出し」に著作権が認められた場合、著作権侵害になる可能性があるが、仮に取り締まったとしてもRSS生成機能がRSSニュースリーダに組み込まれてしまうと「いたちごっこ」になるのは目に見えているため、権利の主張者には頭の痛い話だ。この辺りはちょうど、業者であったナップスターは取り締まることができたが、フリーウェアであったGnutellaは取り締まることができなかったのと似た構図である。

 いずれにせよ、RSSの普及が象徴しているのは、情報の発信元の意図に構わず、読み手が情報を読みたいように読む手段が増えてきているという流れだ。

自動化によって自己増殖していくコンテンツ

 RSSはこのようにニュースリーダで読むばかりが利用方法ではない。ニューヨーク・タイムズやBBCなどが公開しているRSSにはその内容をウェブサイトに掲載するためのプログラムが付属してくる。その簡単なHTMLコードを自分のウェブサイトに加えるだけで、それらのニュースサイトの最新ヘッドラインを自分のページに表示させられるのだ。

 自分のサイトに彩りを添えるためでもいいし、自分専用のポータルサイトとして利用するためでもいい。ポイントは手作業でサイトをチェックし、気に入ったリンクを記録し、HTMLファイルを更新するという、これまで手間がかかったオンラインコンテンツの再利用を、RSSというXMLフォーマットが普及したおかげで大幅に自動化できるようになったことだ。この使い方の特徴は、他人のサイトのRSSを自分のサイトで使うことでコンテンツの再利用を自動化できるだけでなく、自分のサイトをRSSで他のサイトで利用可能にしておけば、自分のサイトの宣伝を自動化できるという相乗効果があるところだ。

 他にも、カメラ付きケータイで撮影した写真をボタン一つでコメントと共にBlogにエントリしていくMoblogも巷では人気を集めているし、中には取得した電話番号に電話をかけると自分の音声がそのままBlogに登録されるというサービスまである。

 状況や思考をコンテンツにする手段は最近急速に発達し、その自動化の流れはまだまだ止まりそうにない。

 ところで、自動化といえば最近一部のBlogで普及してきた「トラックバック」という仕組みが面白い。リンクを張ったという通知をリンク先に自動的に貼り付ける簡単な仕掛けだが、これによってBlog間のリンクが双方向になり、これまで「付けたリンク」を下流方向にしか辿れなかったサイトナビゲーションが「付けられたリンク」方向の上流にも辿れるようになる。これにより様々な情報と主張がこれまで以上に有機的につながるため、Blogを読み漁っていると、あるテーマについての情報空間が生き物のように形成されていく様子に気がつき、はっとすることがある。

コンテンツビジネスでも鍵はリスクを取ること

 読み手が読みたいように情報を読み、書き手がネット上の情報を使いたいように使い回す。情報の電子化もそれらのリンク付けも自動化が進む。ネットの発展はまるで意志を持った有機体の成長のようにすらなってきた。情報の発信者と受信者の区別、つまり「情報の所有領域」が曖昧になってきているP2P的な世界観の中で、どうコンテンツビジネスをすればいいのか。

 その意味で、やはりApple ComputerのiTunes Music Storeは注目だ。これまでナップスターやKaZaAを代表とする音楽共有ネットワークの台頭で成功は難しいと言われてきたオンライン音楽販売ビジネスにAppleが革新的なインターフェースのオンラインショップで挑戦してきたのである。世の中はこのサービスの解釈についてものすごい論争になっているが、このビジネスの背景にある論理は「音楽を盗むのにかかる労力や時間などのコストよりも正規販売の価格の方が安ければみんな買うでしょ」という単純なものである。P2Pネットを検索して10分かけて壊れたものを掴まされるよりは、とりあえず欲しい曲が99セントで自宅ですぐ、簡単に、正規に手にはいるなら確かにそれは「ぽちっと」してしまう。ビジネスの成否を判断するには時期尚早だが、販売開始一週間で100万曲を売り上げたというのは決して悪い出だしではない。

 この例が教えてくれるのは、消費者の視点で判断し、既存の枠組みを越えた仕掛けを打ち出すことで商売の余地を見いだす重要性だ。Appleは音楽複製防止技術に投資をして既存の音楽業界のビジネスを守るのではなく、手軽に複製CDも作れるアプリで簡単に音楽をオンラインで購入できる仕組みで新しいビジネスを開拓するという選択肢をとった。ニュース配信ビジネスの例では、ニューヨーク・タイムズとBBCがヘッドラインの無料での二次利用を奨励することで自サイトへのリンクを増やし、本来のビジネスであるオンライン登録ユーザを増やすことを狙っている。可能性はまだ未知数だが、いずれもリスクを取らないと生き残っていけないことを自覚したプレーヤのみが取れる大胆な行動であることは間違いない。日本でもこうして大胆な発想の転換でコンテンツビジネスに挑戦してくるプレイヤーが出てくることに期待している。

川野俊充 カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院経営学修士
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