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自動認識技術(非接触タグ:RFID)の可能性と幻想

2003/06/05 10:00
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この記事は『RIETI(経済産業研究所)』サイト内の『IT@RIETI』に掲載された「自動認識技術(非接触タグ:RFID)の可能性と幻想」を転載したものです。

 昨今、非接触タグ(RFID:Radio Frequency Identification)に注目が集まっている。バーコードと異なり、人が介在することなく、情報の読みとりや書き込みができるため、流通や物流の効率化といった経済的側面に加えて、テロ対策やBSE対策といったセキュリティーや食の安全への活用が期待されている。

 実際、RFID技術は、JR東日本の補填可能なプリペイドカードである「SUICA」のように、日常社会に溶け込み始めている。定期券を取り出すことなく列車に乗降できる便利さは、大いに魅力的である。

 しかしながら、RFIDは、可能性が大きいだけに、幻想も大きくなりがちである。

 例えば、データの書き込みが可能なことから、いろいろな事業者が流通過程で、データを共有するための電子データ交換の代わりに使えるのではないか? とか、全ての物体に貼付する前提で、格納するデータを標準化し、ITSと組み合わせることによって、搭載物を瞬時に把握することが可能になれば、道路等の安全対策にも有効ではないか?との議論がなされている。

 特に、後者については、国際標準化機構(ISO/TC204)において、データ書き込みを想定した上で、国際複合一貫輸送のためのデータエレメントの標準化の試みまでがなされている。これは、テロ対策にも活用したいというのが本音のようだが、ビジネスへの活用可能性の検討を省略して、物流の効率化も同時に達成し、コストを吸収することが前提となっている「拙速」なものである。

 書き込み可能なRFIDの技術は、本当に、これまで、コストをかけて行っていたデータ共有が劇的に改善したり、商流や物流を画期的に改善する技術なのであろうか?

 先に触れたISOの動きを含めて、疑問な部分もあることから、先駆的な検討会での議論も踏まえながら検討してみたい。

 まず、RFIDとバーコードの違いを整理すると

  1. 人手を介さずに自動認識可能である。
  2. 書き込みが可能である。

 の2点に集約できる。しかし、(2)については、どのように使うかということを良く検討しないと無用な機能となってしまう恐れがある。

 通常、RFIDは、個体識別のため、物と一緒に流通することが前提となる。したがって、紛失または破損の危険が常につきまとう。平成13年度に国土交通省が航空手荷物にRFIDを貼付して物流の効率化を行う実証実験を実施しているが、この際にも、いくつかのチップが破損している。結局、書き込み型RFIDに格納した情報のうち紛失してはいけない情報は、別にサーバー等にバックアップする必要がある。換言すれば、RFIDへ書き込みを行う場合は、データ保管に2重コストが発生することとなるのである。

 また、コストについては、もう一つ問題がある。複数事業者を流通するRFIDのコストは誰が負担すべきか?という問題である。複数事業者間を流通する商品等にRFIDを貼付して社会的に便益を生じさせるためには、通常、最初に商品等を送り出す者が貼付する必要がある。

 しかしながら、通常、コスト削減等のメリットを受ける者は、流通段階で商品等をハンドリングする者であったり、商品等の受け取り作業(検品作業)を簡略化できる可能性がある受取り手である。平成13年度に実施された「航空貨物におけるRFIDの活用研究会」(国土交通省に設置)においても、RFIDが全ての貨物に貼付されているのなら、活用を考えても良いというキャリアやフォワーダーはいたものの、自ら他者のために、コストを負担してRFIDを貼付しようという事業者は存在しなかった。コスト負担者と受益者が分離してしまうという問題がある。コスト転嫁の仕組み(ビジネスモデル)がないと、伝票の印刷費にRFIDのコストが含まれる程度に安価なチップが出現しない限り、実用化は難しいという現実がある。

 以上のような制約条件がありながら、近年、米国で注目される動きが見られる。最初に商品等を送り出す製造事業者が自らRFIDチップを貼付してコストを回収できるビジネスモデルが出現しつつある。例えば、Gillet(ジレット)社やウォルマート社である。米国では、流通過程で商品が紛失することが間々ある。RFIDを全商品に貼付することによって、紛失をした責任者を特定することが可能となる。このため、紛失により生じている損害額より、RFIDシステムのコストが低くなれば、製造事業者単独でも、導入に対する誘因が生じることとなる。さらに、最終納入先の小売店における検品作業の省力化が図られることとなるので、導入が促進されることとなる。

 この場合、個体(商品等)の特定ができれば良いので、コストをかけて書き込み型RFIDにする必要はない。その個体(商品等)に関する情報は、サーバーに存在しておれば良く、ネットワークを介してアクセスできれば十分ということになる。

 実際、流通過程で必要な情報を整理してみると、商流を担当する企業と物流を担当する企業によって必要とする情報は大きく異なる。(図1 左参照)事実上、個体を特定するIDを除いて、共通する情報項目はないと言っても良いほどである。このため、高価で書き込み容量に制約のある可能型RFIDに何を記録するか関係者の合意を得ることは非常に難しい作業となる。結局、書き込み型RFIDより、バーコードを代替する安価な読み込み専用RFIDの方が利用範囲が広がる可能性があるのではないだろうか。

 以上のように、RFIDは、単独事業者での利用を前提にリユースが行われるICカードのような場合は、書き込み機能は有意義であると考えられるが、複数事業者を転々として使い捨てを前提とするタグは、データ保全の面からもコスト面からも読み出し機能のみで十分であると考えられる。

 世界中を流通する商品を安価に管理するには、IDの標準化(例えば、IP.V6のアドレス利用)とネットワーク(特にインターネット)の活用を考えれば最適な組合せが実現する。特にネットワークの活用は、XMLを利用することにより互換性が著しく向上することとなる。

 日本でも、書き込みの型のタグを高価で販売することばかり考えずに、世界の潮流に乗り遅れないよう流通・物流システムの効率化を伴うシステムの構築が必要である。他に、RFIDの相互運用性を高めるためには周波数問題も存在するが、本件は、他稿に譲りたい。

著者略歴
泉田 裕彦
国土交通省 貨物流通システム高度化推進調整官
RIETI(経済産業研究所)コンサルティングフェロー


RIETIサイト内の署名記事は執筆者個人の責任で発表するものであり、 経済産業研究所としての見解を示すものではありません
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