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ワイヤレス技術はPC業界の救世主となり得るか

2003/03/26 10:00
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 ワイヤレス通信は、人々とPCとの関係を再構築し、物理的な呪縛からわれわれを解放してくれるのだろうか。それとも、ワイヤレス通信は新しい娯楽をITオタクに提供するだけなのか。

 PC業界の将来は、この答えにかかっていると言っていい。

 Intelは3月12日、Wi-Fi(802.11無線LAN規格)対応ノートPC向け省電力プロセッサPentium-Mを携えて、モバイル市場に新たな参戦の名乗りを上げた。同社は、Pentium-Mプロセッサを含む3種類のチップで構成されたCentrinoシリーズで、今後販路を広げる構えだ。

 Pentium-Mプロセッサを搭載したノートPCのバッテリー動作時間はおよそ5〜6時間。補助バッテリーと組み合わせれば11時間まで動作するという。無線LAN経由で頻繁にインターネットに接続するには、これくらいのスペックが不可欠ということだろう。

 Intelは売り込み先の筆頭にホテルや電話会社を挙げ、ワイヤレス技術がPC業界の不況脱出のきっかけになることを期待している。

 ワイヤレス技術の賛同者は、Wi-Fiにヒットの予感を感じている。これを使えば、人々はある場所にいながらにして違う場所に身を置くことができるからだ。たとえば、これまで機内や空港で時間をもてあまし、古い雑誌を読む以外することのなかった営業担当者も、その場で仕事の続きに精を出すことができるのである。

 「ワイヤレス通信の導入で企業の生産性が向上することは確実だ。会議中に呼び出され、例の件はどうだった、などと詰め寄られる場面もなくなるだろう」と、IBMでThinkPad T-Seriesの製品マネージャーを担当するRobert Enochsは述べる。

 壁や床に配線を這わせるため、大勢の労働力が駆り出されたのは、もはや過去の話だ。無線LANを使えばネットワークへのアクセス回線も簡単に用意することが可能である。

 「Wi-Fiのもたらすものは非常に重要だ。数々の障害物から自由になれるのだから」と話すのは、Intel会長のAndy Groveだ。「有線LAN技術はムーアの法則に従って発展せずに、FCC(連邦通信委員会)の発布する規則にがんじがらめというのが実情だ」

 自動車やテレビ、インターネットなどが登場するたびに社会は変化し、このまま行くと、時間的、空間的、そして物理的な隔たりはいずれほとんどなくなってしまうことだろう。その結果、好きな時にいつでも誰とでも連絡が取れる世の中になり、またこれまでのように訪問客にいちいち気を遣うこともなくなるだろう。なぜなら、相手からの電子メールに目を通せばそれで十分なのだから。どこに出かけるにもあっという間になるだろうが、面白みにいささか欠けるのが玉にキズといったところか。

 映画や音楽についても、ブロードバンド配信で自宅にいながら楽しめる日がすぐそこだという。引きこもりがちな人間がまた増えそうだ。

 無線LANに対する株が上がる一方で、本当にそんなことが実現できるかどうか、胡散臭さを感じる懐疑論者も少なくない。これは業界内ではよく起こることなのだが、アナリストがある技術に対して非常に高い評価をし、飛びついてみたら、現実としてアナリストの期待値に達するにはベルギー人の3人に1人がラックマウントのサーバクラスタを購入し、過剰在庫となった砂糖大根をオンライン上で販売しなくてはいけない、ということになりかねないのだ。

 彼らが疑問符を付けているのは、無線LANを搭載したPCは、利用のされ方が携帯電話とは異なるということだ。携帯電話は、緊急時の連絡手段として今後も市場に残る必然性がある。一方、ある人にすぐ連絡を取らなければならない、という場面でわざわざPCを立ち上げて電子メールやインスタントメッセージを使う人はいないだろう。これらツールの利点のひとつは、自分の好きな時に返事ができるということなのだから。

 ひょっとしたらWi-Fiホットスポットは、それほど頻繁には活用されないかも知れない。「自分で何カ所のホットスポットを使うか、考えてみるとよい」とGartnerのアナリスト、Mark Margeviciusはいう。「息子のソフトボールの試合を見に行き、そこからメールの返信を書く人などいないだろう」

 米Danger社のモバイルデバイスであるHiptopのような、携帯電話や電子メール機能が備わったツールがあれば、どこにいてもインターネットや電子メールのやり取りが可能だ。携帯電話がデータ通信のメディアとしても定着すれば、わざわざノートPC用の無線LANアカウントを取得するためにお金を出す人はそういまい。

 それよりも、大部分の人は常時ネットワークに接続している必要などないだろう。「Toy Story 2 on Iceのチケット残りわずか」という電子メールを見逃がしたくらいで大騒ぎする人は、世界中のごくごく少数の人たちだけなのだ。

 このような状況を見ていると、Wi-Fiのヘビーユーザーが住める世界はどんどん隅に追いやられているように思えてならない。この手の話に食指を動かすのはもはや、Comdexに携帯電話2台とポケベル、そして自分がコンベンションセンターにいることを教えてくれるGPSツールを携えてやってくる連中くらいではなかろうか。いろいろなツールを、メキシコの革命家Emiliano Zapataの弾薬帯ばりに肩からぶら下げて武装するのはカッコいいのかも知れないが、本当に役立っているのか甚だ怪しいものである。

 一方で、モバイルに対する人々の渇望は決してあなどれないのも事実だ。携帯電話の売れ行きは当初予想されていたよりはるかにすごいものだった。現在Wi-Fiを推奨しているのも、企業のマーケティング部門ではなくユーザーである。つまり、Wi-Fiが爆発的にブレイクする兆しは十分にあると言ってよい。

 一部の通信事業者、とりわけ中国の事業者はネットワークインフラの整備が完了次第、Wi-Fi対応携帯電話を拡販しようと目論んでいる。Wi-Fi対応ノートPCがきっかけとなって、無料通話サービスの道も開かれる可能性がある。

 しかし、どれくらいの人がそれを使うようになるのだろうか。その答えについては今のところ未知数であるというほかない。

筆者略歴
Michael Kanellos
CNET編集局員。注目される新ビジネスの動向を本コラムで定期的に執筆。ホットな技術を持った活きのいい会社に関する情報を随時募集中。現在、CNET News.comのエンタープライズやパーソナルテクノロジーでも健筆を振るう。

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