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Webサービス標準化への道

2003/03/05 10:00
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 「オープン」、「相互運用」、「IT資源の再利用」、「フレキシビリティ」の4つの言葉は、ソフトウェアベンダーがWebサービスの重要性や訴求性、未来像を表現するときに使うキーワードだ。

 過去2年間で、Webサービスは誇大広告から現実のものへと姿を変えた。すでに世界の大企業の一部はWebサービスへの投資を行い、これが企業ITシステムの未来の姿となることを受け入れてきた。ユーザー企業は、ソフトウェア業界がWebサービス標準化に向けて活動していることを歓迎し、Webサービスで企業内のレガシーシステムが取り払えるものだと期待している。

 米Gartnerは、2004年までに大企業の70%がWebサービスの導入を始めると予想している。これまでのWebサービス技術は誇大広告であったとIT企業の幹部たちは口をそろえて言うが、Webサービスが長期的に生み出す価値を考えると、決して「誇大」でなかったと気付くだろう。

 しかしいまだ発展途上のWebサービスは、今後全く違った2つの方向に進む可能性があることも覚えておかなくてはならない。

 その1つは完全に標準化された世界への道で、企業はスパゲッティのように絡まったITシステムをWebサービスで解きほぐし、Webサービス本来の恩恵が受けられるという世界だ。

 2つ目の可能性として、閉鎖性の強いプロプライエタリシステムが幅を利かせていた時代に戻ってしまうという道もある。ベンダーサービスやメンテナンスに恐ろしくコストがかかり、エンドユーザーのフレキシビリティやROIが無視されていたあの時代だ。

 では、ソフトウェア業界の標準化に向けてベンダーはどうすべきなのかを考えてみよう。

 まずベンダーは「標準準拠」と謳った独自仕様の製品を売ることよりも、本当の意味で標準化された製品をベースに市場拡大を目指し、互いに協力しあうことが重要だ。これを実現するため問題となるのは、標準化のためにすべきことと競争原理として残すものの境界線をどこに置くかということだろう。また、標準化によってビジネス環境が変化するという課題もクリアしなくてはならない。

 CDやDVDなどの娯楽システムが共通のフォーマットを作り上げた時のように、数多くの業界が標準化の際に同じような道をたどっている。しかしソフトウェア業界では、これまでの多くの試みがあったにもかかわらず、依然として相互運用性のないOSやミドルウェア、開発環境が存在し、エンジニアやオペレーター個人の知識やスキルに依存しきっている。

 Webサービスの中核となるSOAP、WSDLおよびUDDIといった標準仕様は、広く採用され支持されている。しかし、その標準策定の戦いは次のステップに移りつつあり、セキュリティ、トランザクション管理、信頼できるメッセージング、マネジメントとオーケストレーション(統合)といった、各社で詳細を一致させるのが困難なテクノロジーが課題となってきているのだ。一部ソフトウェアベンダーは全力を投じてこういったハイレベルなテクノロジーの開発に従事している一方で、他のベンダーは他社と差を付けるため、より使いやすい実装技術を提供する方向へと向かっている。

 特に「オーケストレーション」と「信頼できるメッセージング」の知的財産所有権の扱いに関する論争は現在難航しており、その結果はWebサービスの将来に大きな影響を与えることになる。

 これら2つの仕様書を開発するベンダーの一部は、仕様を実装する際の権利に対する特許や知的財産使用料を変更すべきではないかと提案している。主要な標準化団体やソフトウェア業界では、これまで仕様の実装に特許使用料がかからない方針を好む傾向にあったためだ。

 何よりも重要なのは、Webサービス市場がこれまでのIT業界の市場すべてを合算したものより巨大となることを認識することだろう。

 一部ベンダーは、SOAP、WSDLおよびUDDIといった標準仕様が存在することを挙げ、標準化は完了したものだと考えている。しかし顧客は現状に満足してはいない。Webサービスが幅広く採用され、オープンな仕様として認められるのに十分とはとてもいえないからだ。

 往々にしてベンダーは、顧客からの利益を独占したがる性質がある。大手ベンダーが自社製品の仕様を新しい業界標準と見せかけて市場に投入することはよくあることだ。こういった企業の目的は、自社製品と業界標準の境界線をぼかし、標準仕様のソフトウェアとして自社製品を販売することにある。

 大手ベンダーは、Webサービスが標準化されることでソフトウェア業界の経済構造が変化し、現在投資中の自社製品の雲行きが怪しくなることを懸念している。これらベンダーに残された道は、はなから出直して占有した市場を失っていくか、改革を自らコントロールしようとするかのどちらかだ。が、ベンダーは後者を選択してしまうだろうことは言うまでもない。

 いまもなお自社利益のために仕様書の採用や発展プロセスへの管理を維持しようしているソフトウェアベンダーが、顧客の利益のためと銘打って標準を提案することは皮肉である。しかしこの状況が改善されるには、ビジネス界が主導権を握って切迫しつつある行き詰まり感を打ち破るまで辛抱強く待つしかない。Webサービス標準化の論争は、ビジネスで電話やファックスが使われるようにWebサービス同士がやりとりし、顧客がベンダーに対して真にオープンな標準製品を提供するようプレッシャーを与えるようになるまで続くことだろう。

 Webサービスのゴールは、過去のIT投資で強固に閉ざされた殻をこじ開け、独自仕様になりがちなソフトウェアの形態を変え、最終的にソフトウェア業界の経済全体を変えるということだ。これらの理想は2003年ベンダーに課された大きな挑戦となるであろう。

筆者略歴
Eric Newcomer
米Iona Technologies社CTO

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