ITブームが去り、その痛手を引きずっているシリコンバレーは、今後再びハイテク業界の中心地としての地位を取り戻すことができるのだろうか。
シリコンバレー地域のビジネス団体であるBay Area Council主催のOutlook Conferenceが1月17日、カリフォルニア州サンノゼで開催されたが、会議に参加した大手ハイテク企業幹部らの話題の中心は、まさにこれだった。
「サンフランシスコ・ベイエリアと呼ばれる経済の牽引役が再び成長と革新の中心となれるのかが我々共通の懸念だ」とベンチャーキャピタルMayfieldのマネージングパートナー、Yogen Dalalは語った。
今回の会議にはDalalのほか、ブロードバンドサービスを提供するCovad CommunicationsのCEO、Charles Hoffmanや、ネットワーキング技術を開発するPacket DesignのCEO、Judy Estrinもパネリストとして参加した。パネリストたちは、いずれシリコンバレーは復活するという楽観的な見方を示した。
ただし、今後数年は低成長が続くというのが彼らの共通見解だった。また近い将来インターネットブームが再燃することはないという点でも意見が一致した。
会議に参加した企業家、投資家、財界人など数百人の聴衆に対し、パネリストたちは重要なアドバイスを送っている。
「辛抱強くなること。今われわれに必要なのは将来の成長に向けたしっかりとした土台を築くことであり、応急措置を施すことではない。そんなことをすれば今より二歩後退してしまう」とEstrinは語った。
Estrinによると、シリコンバレーが不況から早期回復するのは不可能との見方もあるという。Estrinは現在Sun Microsystems、Walt Disney、FedExの役員を務めており、Cisco Systemsで技術最高責任者(CTO)を務めた経験もある。
「今置かれた現状を受け入れるべきだ。シリコンバレーの企業の中には、次のブームが確実に到来しつつあると考えているところもあるようだ」とEstrinは語った。
パネリストらは先行きに対する不安を緩和するため、将来確実に成長の見込める分野について見解を示した。その中で最も有望視される分野として、ブロードバンド、ワイヤレス、VoIP、コンピュータネットワーキング/データセンター技術の発展、組み込みコンピュータ、Linux OSなどを挙げた。
しかし向こう数年間は、シリコンバレー経済やハイテク業界にとって大きな試練が待ち構えている。パネリストらは、コンピュータ/通信市場は成熟しつつあると同時に一つにまとまりつつあり、爆発的なインターネットブームの再燃は当分期待できそうもない、という見解で一致した。
このほかにも、デジタルメディアやエンターテインメント業界の発展を妨げている知的所有権保護を巡る問題などがある。また、通信事業者は依然として倒産やネットワークの供給過剰、不確定要素の多い規制への対応に追われている。シリコンバレーでは技術関連業務をアジア諸国に外部委託する傾向が広がっており、これも同地域の改変に向けた根本的変化の一つといえる。
そして忘れてはならないのが、米国内で企業スキャンダルやドットコム企業の倒産が相次いだ結果、国民の不安や不信を長引かせているという事実だ。この問題は今後の発展を台無しにしかねない悪い傾向だとEstrinは指摘している。
「ベンチャーキャピタリストと起業家との関係は、パートナー関係から敵対関係へと変化した。両者の間にチームのような協力関係を取り戻す必要がある」とEstrinは語った。
会議の司会を務めたABC News.comの執筆者兼コラムニストのMichael Maloneは、議論の後半出席者の中で唯一のベンチャーキャピタリストであるDalalを槍玉にあげた。昨年ベンチャーキャピタリストたちの投資額がいかに少なかったかを指摘した上でMaloneは冗談ぽく「シリコンバレーのベンチャーキャピタリストは、自分たちに不利な条件を改善する努力とバスケットボール以外に一体何をしてきたのか」とDalalに尋ねた。
これに対しDalalは、イエローストーン国立公園を焼き尽くし、大きな被害をもたらした大火事を引き合いに出して応戦した。「多くの人々は、燃えたアメリカ杉が倒れてくるのか生き残るのかばかりを気にして、地面から生え出した新しい草花には目もくれなかった。経済周期の中で今我々が置かれている状況とまさに同じだ」とDalalは語った。
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