モバイル検索のエフルート、創業者が単身海外へ--新規事業を開拓

永井美智子(編集部)2008年09月09日 13時49分

 携帯電話向けの検索サービスなどを手がけるエフルートが8月26日、創業者で代表取締役社長の佐藤崇氏が会長となり、取締役副社長兼COOを務めていた尾下順治氏が代表取締役社長兼CEOに就任する人事を発表した。佐藤氏は今後、海外事業担当として現地に赴任し、海外向けのサービスを開発、展開するという。今回の人事の狙いについて、佐藤氏と尾下氏に話を聞いた。

 エフルートは2003年7月創業(創業時の社名はビットレイティングス)。事業を拡大する中でベンチャーキャピタル数社から出資を受けたが、そのうちの1社が尾下氏が勤めていたアイシーピーだった。尾下氏は2005年にエフルートに入社し、新規事業を担当する佐藤氏と、社内の体制を管理、統括する尾下氏の二頭体制を敷いた。今回の人事は、これをさらに推し進めた形といえる。

080909_froute.jpg 創業者の佐藤氏(左)と、新社長に就任した尾下氏(右)

 「日本では、企業が大きくなるにつれて経営者が役割を変えて、(起業家から管理者へと)成長していくことが美徳とされている。しかし、佐藤はスピード感を持って新しいサービスを開発、展開できるのが強み。そうやって役割を変えてやっていくことが本当にいいことなのかと考えたとき、それでは私自身、佐藤に感じた魅力を押し殺してしまうことになると思った」(尾下氏)

 エフルートは現在、株式公開に向けて準備を進めている段階で、企業統制などさまざまな対応が必要な時期にある。新規事業を得意とする佐藤氏は、「自分の良さを生かすためには、新しいチャレンジをしたほうがいいのではないかと半年ほど前から思っていた」という。「国内にいるとどうしても(環境に)甘えてしまう。サービスを創る人間として、国内という『ゆりかご』に揺られているのではなく、新天地に飛び込むべきと考えた」(佐藤氏)

 国内事業については、現在の月商が1億2000万円程度となり、半年ほど前からは単月黒字化を達成している。売り上げの7割を占める電子書籍などのコンテンツ事業、他社媒体に広告を配信する広告シンジゲーション事業、検索サイトの運営や検索エンジンの他社提供といったメディア事業の3本柱が順調に育っており、社員もアルバイトを含めて50人程度という少数精鋭の低コスト体制ができあがっている。あとはそれぞれの事業を強化していけばいい段階にまで来た、と判断した模様だ。

 モバイル検索の分野はNTTドコモ、auがGoogle、ソフトバンクモバイルがYahoo! JAPANの検索エンジンを採用しており、厳しい勝負を強いられているように見える。しかし、尾下氏によれば音楽検索サービスなどが好調で、他社サイトでの採用も進んでいるという。同社の音楽検索サービスは検索結果がすべて広告という点が特徴で、パートナーの着うたサイトなどにユーザーを誘導するようになっている。今後は検索結果にユーザーのレイティングを加味したり、ユーザー同士で検索結果を共有できるようにして「誰かがそこにいるような感覚を、ソーシャル化によって実現したい」(尾下氏)とのことだ。

 海外事業は、日本での経験を元に、現地のユーザーに合わせたサービスを一から開発する。地域としては北米、もしくはアジアを考えているという。とくに中国については、「携帯電話の利用者の多くが若者で、『パソコンよりもケータイのほうがいい』と考えている人が多い点で日本に近い。コミュニケーションツールとして携帯電話が浸透しており、リングバックトーン(呼び出し音を好きな音楽に変えられるサービス)が成功していると聞いている。お金を払わなければ利用できないサービスであればお金を払う感覚があることが分かった。コミュニケーションを刺激するものを提供できれば、大きなチャンスがある」(尾下氏)と注目しているという。

 展開する地域についてはこれから半年ほどかけて検討し、来年前半に現地法人を設立する計画。まずは佐藤氏が単身で乗り込むことになるという。「来期(2010年5月期)にはビジネスとしてきちんと動いているようにしたい」(尾下氏)

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