みんな失敗して学んできた--IT業界キーパーソンに聞くメール作法

エースラッシュ2008年04月03日 19時28分

 学生団体LabITは3月30日、学生や若手社会人を対象に、ビジネスにおけるメールのコミュニケーション方法を紹介するイベント「メールで引き出すベストコミュニケーション」を開催した。

 イベントは全体が3部構成となっており、第1部は久米繊維工業 代表取締役の久米 信行氏による基調講演「大学生のためのメール道」、第2部は4名の著名人を招いたパネルディスカッション「メールというコミュニケーション手段」、第3部は著名人たちによる公開指南という流れで進められた。

 第2部のパネルディスカッションでは、パネラーとして時事通信社 編集委員の湯川鶴章氏、シックス・アパート 代表取締役の関信浩氏、マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ユーザーエバンジェリズム推進部の金尾卓文氏、グーグル シニアプロダクトマネージャの及川卓也氏が登場し、ビジネスにおけるメールの役割が語られた。

 現在のビジネスにおいてはメールでのコミュニケーションが必須となっている。「ビジネスでは“言った”“言わない”が大きな問題となるのでメールを頻繁に使う」(湯川氏)、「必要なものだけを残した状態でも1〜2月の2カ月間で受信数が7341通、送信数が7043通」(関氏)、「営業職の頃は1日のうち体感で約3割の時間をメール処理に費やしており、現在のマーケティング職では約4割近く」(金尾氏)、「メーリングリストなどを除き個人宛に来るメールで1日50〜100通程度」(及川氏)と、パネラー陣のメール利用率も非常に高いようだ。

labit.jpgシックス・アパート 代表取締役の関信浩氏

 そんな中で「時にはメールよりも実際に会って話をした方が早いことがある」と語るのは関氏。ただし、より確実を期すため、決定事項を伝えるのはメールの役目だ。関氏のように本社がアメリカにある場合などは、時差や場所を超えてのコミュニケーション手段としても有効だという。

 そのほか、具体的な指示が書いてあるメールについては“24時間以内に第1レスポンスをする”ことを提案し、確認ミスの防止とビジネス効率化に努めているそうだ。

 また、「メールを受け取った相手がどう感じるかを事前にイメージできるため、一般的なコミュニケーションを円滑に行える人ほどメールの使い方が上手い」という金尾氏の意見もあった。

labit.jpgグーグル シニアプロダクトマネージャの及川卓也氏

 コミュニケーションに不安がある人には、及川氏の“ミラーリング”が参考になる。これは相手の真似をすることが、相手にとって心地良いコミュニケーションにつながるというもの。

 メールも同じで、手紙のような流れで書いたり、簡潔に要点だけをまとめるなど、相手に合わせると円滑なコミュニケーションになりやすいのである。

 初回のメールで相手の出方が分からない場合は、湯川氏が「メールと手紙のもっとも大きな差」と指摘する部分である、まず何が言いたいのかを最初に記載し、その下に補足を入れる新聞記事のような“逆三角形”の書き方が伝わりやすいようだ。

labit.jpg時事通信社 編集委員の湯川鶴章氏

 最近ではメールでビジネスチャンスを広げる方法もあるが、「メールだけではどのような人物か分からないので、ブログのURLを記載しておく」(湯川氏)というアピールは非常に有効だ。

 及川氏も、「ブログに自分の顔写真を載せておくと、会った時の印象が一致するためさらに効果的」と語る。

 続いて話題はメールでの失敗談に移行し、関氏は「やり取りの途中でメールが相手のスパムボックスに入り、電話で確認したところ内容を把握していなかったことがある」と語った。これはメールの過信により起こったもので、相手と意思疎通のレベルを確認しておく必要があるという。

 対策としてアポイント前日や当日の確認に加え、相手からメールで会議の時間指定などがあった場合に日時を復唱したり、TPOに応じて相手に問題がないようなら携帯電話から返信することもあるようだ。関氏は「やりすぎだと感じる人もいると思うが、情報の齟齬を未然に防ぐことにつながる」という。

labit.jpgマイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ユーザーエバンジェリズム推進部の金尾卓文氏

 また、ハードウェアベンダーの営業職時代に、社内の技術担当から受け取った原因と対策を箇条書きのままクライアントに送ってしまった経験があるという金尾氏は、「自分が出すメールには責任を持つこと。特に重要な内容の場合は、作成したメールの読み返しが有効」と語る。

 スマートフォンであっても携帯電話からのメール返信は相手に失礼と考える人もいるが、パネラー陣はバランスを見て上手く活用している。TPOに応じて携帯電話からも返信している関氏は「相手が快く思わないことはしない、というコミュニケーションの原則さえわきまえていれば問題はない」と語る。

 及川氏も「メール内容の簡素化が気になるのであれば、それはあくまでもデバイスに入力する人間の問題。携帯電話のメールアドレスで返信するなら、相手を選べばよい」という。具体策として湯川氏は、「“外出先のため携帯電話から失礼します”と前置きをした上で返信し、会社に帰ってから改めて返事を書きなおす」という方法を挙げた。

 最後に若手社会人へ向けて、パネラー陣から「今後も付き合いを続けていきたい人には必ずメールをすること」(湯川氏)、「たくさん使って慣れるしかない。自分のスタイルが確立されれば、それは良くも悪くも個性」(関氏)、「コミュニケーション全般にいわれることだが、読み直しなどの準備が必要」(金尾氏)、「重要なのはメールを受ける側がどう感じるか。送るタイミングを考えたり、転送にもサマリを付けるなどの工夫を」(及川氏)といったアドバイスがあった。

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