明治大学法学部 高橋美帆氏は、現在クリエイティブコモンズでインターンをしている。業務を手伝う中で、日本初というオープンソースがコモン化していないのはなぜたろうという疑問を持っていた。それをこのセッションで問いかけた。
高橋氏の質問に湯川氏は、社会の発展が違うためだと述べた。日本は工業化社会の考えが色濃く残っている。しかし、情報化社会になって表現したいという欲求を持つ若者が増えてきた。今後はクリエイティブコモンズ的なものも出てくるだろうとみている。
「会社では上司が工業化社会の人達だからね。『オジサンのハンコ』がいるから表現者は大変かもしれない(笑)。横文字も嫌いだし。日本語でわかりやすい言葉ならもっと受け入れられるかもしれないですね。だから、マーケティング的に受け入れられる言葉をつくっていかなければ」(湯川氏)
大川氏は国民性もあると述べ、伊藤氏は人数の差もあると続けた。「Ruby(ルビー)という言語は日本から生まれました。オープンソースを触っている人口比率からすると悪くない」と述べた。
ウェブには大量な情報が集まり始めている。今後の戦略として、情報を自動的に集めてくれる市場を狙うべきだろうか、という質問が原田氏から挙がった。
伊藤氏は、まさにそれがクリエイティブコモンズのテーマだという。たとえば、学者同士は研究に対して、お互いに共通したサンプルが必要で、基礎データを共有することもある。しかし、ライバルには古いものを与えてしまうため、製薬会社が出資しても開発できないということがあるそうだ。それを誰がサンプルを出したか、論文やデータは誰のものかといったことを一部オープンにすれば、ライバルの学者にも良い素材を提供するようになる。
「自分の学術論文はオープンでなければ発表しないという学者も出てきました。ビジネスでも、公開した結果で生まれる文化の蓄積とオープンを使ったビジネスモデルの方が成果は大きいです」(伊藤氏)
また伊藤氏は、オープンソースで成功するかしないかを論じる際に、「ネット上ではユーザーが増えなければ失敗する。商品が良ければいいだけではだめだ」と述べた。
「YouTubeはマイスペースに組み込めたから、wikipediaは簡単にコンバートしやすいから広がった」という。広がるための手段として、SNSに組み込むのか、メールにするか、ある程度、人が集まればなんとかなる。好きになれば守ってもらい、手伝ってくれると語った。
学生のパネリスト、海外の学生、会場に来た参加者からの質問や意見に耳を傾け、真摯な意見を交わしてきたIT先駆者達が、最後にネットの未来を担うすべての若者にアドバイスを残した。
「自分の表現欲求に忠実に生きてきて、いまだに現役の記者をしています。社会に出ると圧力はかかるが、表現は大事だということは忘れないでください」(湯川氏)
「開発したり、表現する人だけでなく、利用者も貢献者です。使うことで貢献し、モノづくりに参加しているんです。世の中に貢献できると認識して、プラスのバイラルになっていることを認識してほしいです」(大川氏)
「これまでは製品の中身をいじると補償破棄というのが常識でした。しかし、オープンソースは触れることができます。触ってみたら難しくない。言語も決して難しくなかった。チャットにいけば助けてくれる。教えたがりなエンジニアも増えています。表現したい人にとっては参加しやすくなってきました。みんなが表現者になれる環境を作ることが大切です。消費者という言葉はなくならなきゃいけないんです」(伊藤氏)
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