「Wikipedia」を立ち上げたJimmy Walesにとって、先週は問題が山積みだった。そこで同氏は、だれでも寄稿できる人気の高いこの百科事典の基本原則を変えることにした。
まず、Robert Kennedy元上院議員のアシスタントを務めていた人物が、11月29日付けのUSA Today紙に寄稿した記事のなかで、Wikipediaに猛烈な非難を浴びせた。同氏は、Robert F. KennedyおよびJohn F. Kennedyの暗殺に同氏が関与した可能性を示唆するWikipediaの項目を批判した。
また12月1日には、MTVの元VJでポッドキャスターの草分け的存在であるAdam Curryが、急速に人気を集めるこの新しいデジタルメディアの紹介記事から、他人の独創的な業績に触れた部分を匿名で削除したとして非難され、そこからWikipediaに新たな批判が集まった。
オープンソースの運営モデルを応用したWikipediaは、だれでも項目の作成と編集ができるようになっているが、同サービスに批判的な立場の人々にとって、今回のニュースはWikipediaが説明責任を果たす機能を欠いており、本格的な情報収集には使えないものであることを示す新たな証拠となった。
Robert Kennedyの補佐官を務めていたJohn Seigenthalerは、USA Todayへの投稿記事のなかで、「Walesは、先ごろ行われたC-SPANとのインタビューで、自分のウェブサイトは責任あるサービスであり、数千人のボランティア編集者で構成されるコミュニティが数分で間違いを修正する、と主張していた。だが、その主張が間違いであることは私の経験から証明されている。ここ4カ月間、Wikipediaは私を暗殺の容疑者とする記述を載せたままにしている」と述べた。
Walesは、何年も前から批判を受けてきており、こうした問題に対しては敏感になっている。また同氏は、Wikipediaの自己検閲プロセスでは同サイトに集まる膨大な数の新規項目や既存項目の編集を処理しきれない、と多くの人々が懸念がしていることも認識している。なにしろ、Wikipediaには数百万件の項目があり、英語だけでもその数はおよそ85万項目に上るほか、さらに多くの項目が数十カ国語で登録されている。ちなみに、この10月には英語サイトだけで1日あたり1515件の新規項目が追加された。
「このケースでは、Wikipediaのシステムはうまく機能しなかった」とWalesは言う。「項目内容の誤りは(Seigenthaler)本人が修正するまでしばらく放置されたままだった。われわれは現在、休日返上で今回の件とその問題点について調査を進めている。われわれは、成長に伴う痛みを味わっているのだと思う」(Wales)
Wikipediaではある項目が最初に公開された時点で、それが専用のページに表示され、新規ページ巡回責任者と呼ばれるボランティアが、自ら関心を持つ分野の項目についてその中味を評価する。
Walesによると、Seigenthalerの項目はこの監視グループの目を逃れただけでなく、ミス発見が困難な状態にもなっていたという。このページは、Wikipediaのほかの項目からリンクが張られていなかったため、監視対象となるトラフィックが増えず、長期にわたって変更されないままになっていたと同氏は説明した。
また、この項目は匿名のユーザーによって書き込まれるという異例のケースでもあった。それに対し、大半の新規項目は自分の書き込みに責任を持つ登録メンバーによって作成されているとWalesは言う。
そこでWalesは、今後このような問題が発生することを回避するため、匿名ユーザーによる新規項目の作成を禁じ、登録メンバーだけがこれを作成できるようにすることにした。同氏は、この変更を米国時間5日から実施するとし、また匿名のユーザーでも既存項目の編集はできると付け加えた。
Walesによると、編集作業はそれほど問題ではないというが、これは正確な状態にしておきたい項目の監視リストを用意しているメンバーがおり、場合によっては自分で書いた項目も含め、これらを頻繁にチェックしているからだ。
匿名ユーザーがWikipediaで行える作業に制限が加えられたことは、これまでほとんど例がなかった。一部には、だれでも参加できることをこれまで誇りにしてきた同サービスにとって、今回の措置は大きな一歩になるとの見方もある。ただし、Walesは今回の変更について大々的なものではないと説明している。前述のとおり、新しい項目の大半はすでにWikipediaの登録メンバーによって執筆されており、また匿名ユーザーが行える作業の大半は公開済みの項目に対する編集に限定されるからだ。
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