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「MADは日本の文化」--ニコニコ動画、動画作成用素材を提供へ

2008/07/04 23:03
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 「MADは日本が秀でた1つの新しい文化」――ニコニコ動画のシステムを開発、運営するドワンゴの代表取締役社長、小林宏氏は、MADと呼ばれる二次創作作品についてこのように述べ、著作権者の理解を求めた。

 これは7月4日に開催されたニコニコ動画の新サービス発表会「ニコニコ大会議2008」の場で述べたものだ。

 MADとは、アニメや漫画などの一部分を切り出してユーザーが加工し、新たな動画作品として作ったものを指す。ニコニコ動画内ではさまざまなMAD作品が投稿され人気を集めているが、著作権者の許諾を得ていないものがほとんどだ。

 ニワンゴは有限責任中間法人日本動画協会(AJA)、社団法人日本映像ソフト協会(JVA)、社団法人日本映画製作者連盟(MPPA)の3団体と、各団体の会員の著作権を侵害している動画を削除することで合意したばかり。MAD作品についても、「権利者の要請に応じて削除する」(小林氏)という。

 「これは現時点での妥協点。ただ、MAD自体は決して権利者にマイナスではなく、むしろプラスになる面が大きいと考えている」(小林氏)

 このため、ユーザーが著作権者の黙認に甘えたり、逆に削除されることにおびえながらMAD作品を投稿するのではなく、権利許諾された素材を使って動画を作れるようにしよう――こう考えて用意されたのが「ニコニ・コモンズ」だ。

 ニコニ・コモンズはニワンゴが提唱する著作権利用ルール。同社が運営する「ニコニ・コモンズ」という名前のサイトに投稿された動画素材を利用して新たな作品を作り、ニコニ・コモンズ対応サイト内に公開できるというものだ。

 ニコニ・コモンズの素材を使った作品を投稿したユーザーは、どの素材を使ったかを自己申告する。これにより、素材と作品の関係性が見られるようになり、素材投稿者はその素材を使って作られた作品を確認できる。

ニコニ・コモンズ ニコニ・コモンズに投稿された素材を使っている場合、動画から素材にたどれる。逆に、ニコニ・コモンズの素材ページから投稿動画を見ることも可能だ

 対応素材は音声、動画、画像などを予定しており、プロ、アマチュアを問わず素材投稿者が素材をライセンス販売できるようにするという。「MAD文化を認めていただいて、公認素材を提供してもらえるように権利者と話し合いを進めている」(小林氏)

 自分の作品を利用できるように宣言するライセンスとしては、クリエイティブ・コモンズが有名だ。ニコニコ動画運営元であるニワンゴ取締役の西村博之氏は、「自分の作品がどこで使われているのかが一目で分かる点が違う」と話す。

 また、素材の利用ルールを素材公開後に権利者が変えられる点も特徴とのことだ。「コンセプトは『公式な黙認』。『こんな素材を使ってもらえるかな』という感覚でとりあえず投稿し、人気が出てきた時点で有料化するといったことも可能だ」(ドワンゴ顧問の夏野剛氏)

 「GPLやクリエイティブ・コモンズは投稿時のライセンスが変えられないので、多少覚悟がいる。『やっぱやーめた』ができるようにした」(西村氏)

 ニコニ・コモンズはAPIを公開し、外部サイトでも利用できるようにする。すでにクルークが運営しているイラスト特化型ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「pixiv」での対応が決まっている。

 この仕組みについて、日本技芸リサーチャーでニコニコ動画を社会学の観点から分析している濱野智史氏は「いままでは人と人が『素材を使ってもいいですか?』とコミュニケーションして契約する必要があった。ニコニ・コモンズでは、つながっているのは素材と素材、コンテンツとコンテンツであり、初音ミクのような『コンテンツの中の人』に『出演してもらえませんか?』と依頼するようなもの。そしてその素材がどれだけひっぱりだこなのかが分かるようになっている。著作権者ではなく、コンテンツが前面に出てきているのが特徴だ」と分析した。

 開始時期は8月中旬の予定。ユーザーの中にはMAD作品が削除されることに対して懸念する声もあるが、西村氏は「MADが消されることがそんなに問題だとは思っていない。海外ではスターのMADが多く作られるが、日本では芸能人のMADがあまりない。それは(芸能人の素材を)使ってはいけないとなっているから。(アニメなどの素材を)使ってはいけませんという話になったときに、これまでMADを作っていた人が動画を作らなくなるかというとそんなことはなく、使えるもので作ると思う。権利がクリアになっているほうが動画作成者にとってもいいのではないか」との見解を示した。

 また、削除対象となるMADの範囲をめぐって、アニメのキャラクターをユーザーが描いたものも対象とするかが議論されている点については、「著作権者と個別に話し合いをしていく」(ニワンゴ代表取締役の杉本誠司氏)と述べるにとどめた。

 なお、動画が削除された場合には、7月5日以降、権利者名を表示するようにする。「著作権の啓蒙をするためには、何が問題だったのかが分かるほうがいい」(西村氏)との考えに基づくもので、どの権利者の権利を侵害したかを明示することで再発防止につなげたい考えを示した。

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