政府のコンテンツ施策は「口だけ?」 --ゲーム・映画業界などのキーパーソンが苦言 - (page 2)

コンテンツ制作資金は問題ではない

 和田氏からはゲーム業界の特殊性についても指摘があった。「出版、放送、映画などは、作り手とディストリビューターが非常に密接な関係にある。翻ってゲームは作り手と流通が全くばらばらになっており、自己完結していなかった。ただ、今後ネットワークが普及したときは自己完結できるような構造にならないとまずい」

 一方、コンテンツ制作費用については各者とも楽観的な意見がでた。一瀬氏は「米国はいい企画があれば必ずどこかが資金を出してくる。むしろ日本ではいかに安く作るかというところばかり腐心しているため、スタッフへのギャラが少なくなっているのが問題。大本の映画会社が冒険しなさすぎる」。平野氏からは「テレビ局では会社で企画が通れば、非常に多くの企業からお金を出したいというオファーが来る。今はその中からメディアを持っている会社とタイアップして、いかに効果的に宣伝できるかが重要である」との意見が出た。

 大作主義が危ぶまれているゲームについても和田氏は「ゲーム会社は今まで基本的に自己資金でゲームを作ってきたからそう見えるだけだ。これから各社の統合が進み、メディアとの連合が進めば解決する問題」という見方を示した。音楽について宮崎氏は「原盤権を持っていればコンテンツを何度も使い回すことができるので、そこを確保すれば問題ない。これからはレコード会社がアーティストの行く末まで関わるようにして、自社でマネージメントし、自社で育てていくようにすべき」と語った。

 コンテンツが日本発であることが重要か、という問いには答えが分かれた。一瀬氏は「こだわらない。ただ、自分が日本人だということは意識している。その感性は重要」。和田氏も「ゲームは集団制作であり、各社らしさを出すしかない。結果としてそれが日本のものにはなるのだろう。誰が作るか、どこで作るかはあまり関係ないのではないか。たとえば当社が外国で作っても、やはりそれは日本風のものになると思う」とした。

 一方平野氏は「我々テレビ局としては日本のマーケットが最重要。その中で世界に通用するものが作れれば、という程度だ」。関連して、宮崎氏は韓流ブームを例にとり「あのときは韓国政府の後押しがあり、権利関係も意図的にゆるめられていた。日本では権利者の意識が強いため日本発のコンテンツが世界に広がるには障害が多い」と見解を述べた。

 さらに一瀬氏は「東京という街には魅力があるが、作るのは日本である必要性を感じない。そもそも日本という国はクリエーターに何かしてくれるのか。政府に呼ばれて意見を言っても総括までしかされず、その後の展開が何もない。結果として自分たちがビジネスとして成立させるようにがんばるしかない。日本にはそうした点では何もかもが足らない」と痛烈な指摘。

 和田氏も「日本の風土は良いが、養分を与えないと枯れる。枯れると会社が困るので、我々は自分たちでやっている。まず日本を生産市場ととらえるのか、それとも消費市場ととらえるのか、そこからはっきりすべきだ」と同調する意見を述べた。平野氏からは「自分はテレビ業界の中でも異端者で苦労している。クリエイターは異端者であることが多いので、そこをバックアップしてあげるシステムが欲しい」と、主催である経済産業省への少々きつい注文が聞かれる場面もあった。

左から一瀬氏、平野氏、宮崎氏 左から一瀬氏、平野氏、宮崎氏。政府のバックアップ体制に注文がつけられた

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