ひろゆき氏、「ウェブ動画がビジネスになる日は遠い」

永井美智子(編集部)2007年05月11日 18時54分

 「インターネットの回線費用が高すぎて、きちんとした動画を高画質で配信するのはわりに合わない。一般の企業が参入するにはまだ難しい」――5月11日に開催されたロフトワーク主催セミナー「WEB CREATIVE NEXT」に、2ちゃんねる管理人でニワンゴ取締役の西村博之氏がパネルディスカッションに登場し、動画配信ビジネスについてこのように指摘した。

 ニワンゴは、動画上に視聴者がコメントを付けられるサービス「ニコニコ動画(γ)」を提供している。西村氏によれば、登録会員数は100万人、動画の再生回数は2億回以上で、1日のページビュー数は1000〜2000万PVという。「回線コストがかかりすぎて、これ以上なかなか規模を広げられない」(西村氏)という人気ぶりだ。

西村博之氏、長田恒司氏、諏訪光洋氏 左から西村博之氏、長田恒司氏、ロフトワーク代表取締役の諏訪光洋氏

 動画共有サービスのYouTubeも毎月数億円の回線コストがかかると言われており、運営費用をいかに賄うかが大きな課題になっている。「テキスト広告であればデータ量は100Kバイト程度だが、動画になると100Mバイトにもなりうる。データ量が1000倍になったからといって、広告単価が1000倍にはならない」(西村氏)。また、有料の動画コンテンツについても、課金などの面で課題がある。「それなら、レンタルビデオ店でDVDを借りたほうがいいんじゃないかということになる」(同)。こういった理由から、回線コストが下がらない限り市場として成立するのは難しいというのだ。

 Flashを使うことで動画の制作コストが下がるとも言われるが、Flashコンテンツ制作会社である有限会社パズブロックの代表執行役社長、長田恒司氏は「制作者が良いものを作っても市場がない。既存のコンテンツに比べてあまりにも価格を下げられてしまっては制作者側の意欲がなくなる。一方で価格をつり上げてしまえば既存コンテンツとの差別化がなくなってしまう」と話し、動画コンテンツは販売価格に関してジレンマを抱えているとした。

 また、低価格で動画広告が作れる可能性についても、西村氏が「動画広告はブランディングができるという点が強み。低価格で低い質の動画広告をやろうとする企業は多くない。大企業が“しょぼい”広告をうつことでギャップを話題にするというのはあるだろうが、広告手法としては難しい」と話し、動画広告には品質が求められるとした。

モバイル動画は需要があるが・・・

 ニコニコ動画は5月9日より携帯電話向けのサービス「ニコニコ動画(γ)モバイル」のベータテストを開始している。ユーザーからの反応はいいといい、「需要があるのがわかった」(西村氏)とする一方で、「どうビジネスにするかが見えない」と話す。

 これは、携帯電話のパケット通信料金が高額なためだ。パケット定額制を利用している場合でも、月々数千円の通信料がかかる。これに加えて動画に購入料金を支払うユーザーは少ない。さらに、ユーザーが動画をアップロードするような動画共有サービスの場合は公式コンテンツになりにくく、携帯電話キャリアの課金システムを利用することは難しい。

 ニコニコ動画では、ユーザーがアニメなどのコンテンツをまねして自作した動画も多く投稿されている。これは、漫画の同人誌と同じ形態だ。出版社が同人誌を黙認しているのは、同人誌の作家がその後漫画家としてデビューするケースが多いためだと西村氏は指摘する。同人誌を締め出してしまうと、結果として新しい作家が出てこなくなる可能性がある。そのことを出版社は恐れているというのだ。

 動画でも同じように、ニコニコ動画で動画を自主制作している人がテレビなどの番組制作分野に進出するようになれば、「人と人のつながりを核とした、日本的な共存関係ができるのではないか」と西村氏は指摘した。

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