YouTube、バイアコムによる動画削除要請から広がる議論 - (page 2)

文:Greg Sandoval(CNET News.com) 翻訳校正:大熊あつ子、向井朋子、長谷睦2007年02月19日 10時24分

 25年間にわたり映画を撮り続けてきた独立系映画作家で、今回ゲイのプロレスラーのドキュメンタリービデオが誤って削除されてしまったVictor Rook氏は、懸念を口にする。Google傘下のYouTubeが掲示したメッセージによって、自身の評判に傷がつくのではないかと心配しているのだ。

 「あのメッセージは、わたしが作った予告編を見ようとしてくれた人全員に、わたしが誰かの著作権を侵害したと伝えている。しかし、それは事実ではない。そこが名誉棄損にあたる」(Rook氏)

YouTube 提供:YouTube

 YouTubeは、この件に関してコメントを拒否した。Viacomのエグゼクティブバイスプレジデントで法律顧問のMichael Fricklas氏は、YouTubeがサイト上に表示した文言の選択に関しては、同社はいっさい関与していないと語った。著作権侵害にあたらない動画を誤って削除したことについては、Viacomは大変申し訳なく思うとして、早急に間違いを修正できるよう取り組んでいると強調した。

 さらに重要な点として、「The Daily Show」あるいは「The Colbert Report」といったテレビ番組の映像からほんの数秒を使って「マッシュアップ」を作った人すべてに対して著作権侵害を追及したわけではないと、Fricklas氏は述べた。

 「フェアユース(公正使用)について、われわれは非常に慎重で限定された解釈をとった。法的にはもっと多くの動画を削除することもできたが、われわれは明らかに著作権を侵害している動画に限って、措置をとることにした。削除された動画のほぼ全部が、われわれの放送をそのまま切り取ったものだった」(Fricklas氏)

 Fricklas氏が指しているのは、Viacomが権利を所有するテレビ番組から、丸ごと全部あるいはかなりの部分を転用して、YouTubeユーザーが投稿した動画のことだ。米国の著作権法では、特定の目的のためであれば、著作権で保護されたコンテンツを使用してもよいことになっている。特定の目的とは、創作活動、批評、研究などだ。しかし一方で、フェアユースによる使用は著作権所有者の販売行為を妨害してはならない、と規定されている。

 EFFの広報担当であるRebecca Jeschke氏によると、同財団の弁護士は、Viacomが著作権法の定めるフェアユースにあたる使用者を追及していないことを確認したいのだという。

 「もちろん、YouTubeはその気になれば投稿されたあらゆる動画を削除できる。しかし、Viacomが(デジタルミレニアム著作権法を)根拠に削除要請を出すのであれば、それは法的な手続きとなる。そして、その主張が間違っているのであれば、反論する手段がある」(Jeschke氏)

 Viacomの複数の役員は、YouTubeがフィルタリング技術を採用していれば、ビデオクリップを削除するプロセスがはるかに容易になるうえ、そうしたビデオの投稿自体を防止できると指摘した。YouTubeは、2006年内にそうした技術を採用すると約束していたが、いまだに実現していない。

 しかし、この点は企業がYouTubeと提携する障害にはなっていないようだ。YouTubeはすでに、CBS、Warner Music Group、Sony BMG Music Entertainmentとコンテンツのライセンス契約を結んでいる。アナリストのなかには、YouTubeとViacomも最終的には提携するとの見方もある。

 だが、今回の件の被害者であるRook氏は、YouTubeまたはViacomの誰かが問題を解決してくれるまで待たなければならない。Rock氏が自身の状況を説明し、ビデオの内容が著作権を侵害するものではない証拠を添えた内容証明郵便をYouTubeに送付してから、ほぼ2週間が経過したという。

 「これは、もはや持久戦のようになってきている。わたしのビデオが掲載されない日が1日増えれば、どこかのネットワーク局に自分の作品を知ってもらうチャンスが1日分減るというわけだ」(Rook氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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