クロスメディア時代到来、広告代理店に明日はあるか--著名4氏が討論 - (page 2)

島田昇(編集部)2006年12月01日 18時54分

 西田氏は企業ブログを活用し、ゼロに限りなく近いコストで大きな広告効果を実現させたことで知られる。社内のあらゆる部署の人間を巻き込んだ手腕も大きく、内容の濃いコンテンツを提供し続け、多くのファン創出とファン同士のコミュニケーションをも実現させた。

画像の説明 リコー総合経営企画室コーポレートコミュニケーションセンター広報部Webmasterの西田明宏氏

 クロスメディア戦略の重要点を西田氏は「アイデア」とした。西田氏がブログで訴求した商品はマニア向けカメラだったため、そもそもマス広告展開では一般的なカメラ購入希望者からのクレームも懸念される。これをすでに存在するマニア層向けに効果的な販促を実現できたのは、常にブログ上でファンを楽しませることのできる情報を提供できたためだ。メーカーとして提供できる情報には限度があるが、これをさまざまな角度からのアイデアで情報を創出したことで、継続的に濃いファンをつなぎ止めることに成功した。

 この視点を受け、岡氏も「クロスメディアを作るのは人」とし、プロジェクトに携わる人の情熱がその成功の原動力であると強調した。

 広告代理店の立場から嶋氏も、岡、西田両氏の考えを受けて持論を披露した。

 嶋氏は「コアアイデア」と「シナリオ」が明確であれば、媒体を選ばずに、今最も効果的な広告展開を実現できるとの考えを中核に置いている。ミュージシャン「Def Tech」の新曲を販促した事例では、あたかもDef Techがその場にいるように見せる3D技術を使った「同時多発ライブ」で大きな反響を呼んだ。

画像の説明 博報堂ケトル クリエイティブディレクター・編集者の嶋浩一郎氏

 こうしたこれまでに成功した広告企画を振り返ると、企業のさまざまな立場の人と組み、さまざまな業界で活躍する人たちの人脈を生かせたことがその成功の主因だったと分析。つまり、「総合的な“人間力”を持った人が、一貫して広告企画のすべてを自分で企業に交渉して説得することが重要である」とした。

 森田氏は以上の討論を受け、「今後の広告代理店はコンサルティング能力も備えたコミュニケーションを軸にした提案が必要」と明示した。今後は、特定の部署の売り上げを増加するための広告という考えではなく、会社全体として考えた上での広告展開を提案できなければならないということだ。

 そのためには、既存の概念だけで広告の提案を考えるのではなく、「個々人の情熱と豊富な知識」(岡氏)だったり、嶋氏の言うところの総合的な“人間力”などを駆使し、総合的な提案力が必要になる。これができなければ、クロスメディアはただ媒体を組み合わせただけのものであり、真の意味でのクロスメディアを実現することはできないという意識を、登壇者同士で共有し合った。

 また、こうした広告代理店の姿勢が実効性を持って広まれば、広告主の立場である岡氏は「良いアイデアがあればそれにお金を払ってもいい」と、広告代理店との新たなビジネス的関係の方向性にも歓迎の姿勢を示した。

画像の説明 パネルディスカッションの様子

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