「現在はメールを使いすぎ」--sendmailの生みの親が語る

 1981年に世界初のメールサーバ「sendmail」が開発され、今年で25年を迎えたことを記念するイベントがこのほど開催された。イベントにはsendmailの創設者であり、「メールの生みの親」と呼ばれるEric Allman氏による来日講演が行われた。

 Allman氏は、sendmailのオリジナルプログラムの開発者であることから、「メールの生みの親」と呼ばれるが、「本当のメールの生みの親はRay Tomlinson氏である」と語る。BBN Technologiesの科学者であるTomlinson氏は1971年にインターネットの前身であるARPANETにて、@(アットマーク)を使ったメールアドレスを使い、メールを送信した人物として知られている。

Eric Allman氏 Eric Allman氏

 インターネットの誕生までさかのぼると、1969年9月2日にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のホストサーバに行き着く。そのホストがスタンフォード研究所、カリフォルニア大学サンタバーバラ校、ユタ大学と接続し、ネットの前身である軍事用のネットワーク「ARPANET」として広がっていった。

 1971年には、ARPANETのネットワークが米国の東側にもおよび、ダイヤルアップモデムによって接続できるようになった。そしてこの年、Tomlinson氏により世界初のメールが送信された。これは2台のローカルマシン同士で送受信されたものだが、複数のマシンで情報をやり取りしながら仕事をするというニーズに、1つの解決策を提示したという。1971年11月にはUNIX 1.0も公開されている。

 その後、メールの安全性についても検討されるようになり、1974年には、Ralph Merkle氏によって「Merkle Puzzles」と呼ばれる暗号化技術が開発された。これが世界初の暗号化システムとなり、公開鍵方式の暗号のパイオニアとなる。さらに1977年にはRSA方式の暗号化技術も登場し、現在の暗号化技術の基礎を築いている。この年にはARPANETのノード数が100近くまで増加し、通信衛星を使用してハワイに接続するといったことも行われている。

 1978年には通信プロトコルUUCPが公開され、それまで政府の下請け機関でないと利用できなかったARPANETが、より多くの人に開放された。その一方で、最初のスパムメールも送信されている。これはDEC(Digital Equipment)のセールスマンが広告メールを大量送信してしまったもので、当人の謝罪によって騒ぎは収束したのだという。1979年にはニューズグループの一種であるUsenetが始まり、ARPANETはよりコミュニティ化することになる。

 ARPANETからネットへの移行が始まったのは1981年。この年にsendmailが開発されている。1982年には4.1a BSDおよびsendmailがリリースされ、脚光を浴び始めた。ただ、当時はまだ動作が不安定でクラッシュも多かったという。RFC821、822も公開され、動きの激しい時代だったとAllman氏は言う。1983年1月1日はインターネットの「Flag Day」とされ、本格的な運用が始まった。1983年9月には4.2 BSDが公開され、ネットワークAPIを搭載するインターネットOSとなり、現在のBSDの基礎が確立された。

 それまでネットの利用は研究者や開発者に限られていたが、1985年にQuantum(AOL)が設立され、一般ユーザーも利用できるようになった。バックボーンは全世界におよび、1987年には初めての商用インターネットサービスUUNETが始まった。この頃からノード数が急激に増加する。

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