ようやく日本でも見えてきたWindows Live戦略の全容 - (page 2)

別井貴志(編集部)2006年09月14日 12時00分

 こうした基本戦略を踏まえたうえで、Windows Liveのサービス戦略として核となる言葉が「User In Control」だ。

 全世界には何十億、何千億というウェブページがあり、これを利用するインターネットユーザーが何千万人もいる。こうした状況で情報はあふれ、どの情報をどのように選択したらよいかわからなくなっている人たちも多く、そういう人たちにベストなかたちで情報をコントロールできる仕組みを提供する思想や姿勢をこの言葉で表した。

Windows Liveのサービス戦略 Windows Liveのサービス戦略

 そして、このUser In Controlに基づき、Windows Liveサービスは大きく以下3つの柱で構築されている。

  1. Informed(情報の収集に関すること)
  2. Connected(コミュニケーションすること)
  3. Protected(安全に最適なかたちで提供すること)

 (1)の代表格となるのが、情報やサービスをカスタマイズ、パーソナライズして自分好みの新しいホームページを持てる「Live.Jp」と、検索の「Liveサーチ」だ。PCのファイル検索、企業内ではLANの検索、ウェブの検索がシームレスに融合してできるようになる。

 (2)では、「Windows Liveメール」や「Windows Liveメッセンジャー」などがあてはまるが、実は「Windows Liveコンタクト」が鍵になる。これは、メールやメッセンジャーなどの連絡先情報を一元管理する仕組みで、これによりウェブメールからも、PCのメールからも、ケータイのメールからもシームレスにコミュニケーションできるようになる。ブログとソーシャルネットワークを組み合わせたWindows Liveスペースも、このWindows Liveコンタクトを利用している。

 (3)はウイルスの検知と除去、ハードディスク上の不要なファイルの削除、PCのパフォーマンス向上などの処理をオンラインで可能にする「Windows Live OneCare」が代表格となる。無償で提供しているが、PCに常駐してリアルタイムで監視したり自動アップデート機能がついたりした有償版の提供を近日中に予定しているという。

 さらに、この3本柱で共通して取り組んでいることが3つある。1つは、「Seamlessly Integrated with Windows」で、Windows、特にVistaで最適に動くサービスを作り上げていくことだ。

 2つ目は「Participation」で、サービス提供者がみずからだけでサービスを作り上げるのではなく、多くの人にウェブのプラットフォームに参加してもらい、新たなサービスがどんどんできあがるようなエコシステムを作るということだ。

 従来は、ポータルやオンラインサービスの事業者がコンテンツパートナーや技術パートナーと組んでサービスを構築し、エンドユーザーにコンテンツを提供し、広告収入を得てきた。しかし、今後はウェブのプラットフォームを開放して、第三者の技術者や開発者に自由にサービスを作ってもらい、それをエンドユーザーに提供する場をマイクロソフトが提供して事業機会につなげていくということだ。

 この取り組みの具体例としては、Windows Live Gallery(ベータ版、英語)がある。ここでは、Live.JpやWindows Vistaのサイドバーで利用できるガジェット(ミニアプリケーション)、Windows Live Toolbar、Windows Liveメッセンジャーなどで利用できるアイテム(アドインして利用するツールなど)などを探して、ダウンロードしたり、取り込んだりすることが可能になっている。また、「Live Macro」といって、特手の分野だけに絞り込んで検索する検索式や、よく使う操作手順などがマクロとして公開されている。

 そして、このLive Galleryには、「Developer Center」という技術者や開発者向けのサイトが用意されている。API(Application Program Interface)やSDK(Software Development Kit)などが提供されているので、自分でガジェットやツール、マクロなどを開発してLive Galleryに公開できる。現在は英語版のみだが、近々日本語版も公開される見通しだ。ただし、これら一部の技術情報は、現在日本のMSDNサイトにおいて「Windows Live Developer Center」として日本語で公開されている。

 3つ目は基本戦略にも掲げている「Software+Service」がある。Web 2.0、ウェブプラットフォームといった場合に、ウェブ(オンライン)だけですべてを完結してしまうという発想や事業戦略で、サービスを開発して提供している事業者は多い。これに対してマイクロソフトは「すべてがウェブだけではないだろう、オフラインでやったほうがいいこともたくさんあるだろう」(塚本氏)という信念に基づき、オフラインとオンラインをうまくつなげるかたちで新しいサービスを作っていく方針だ。

 この3つめを具現したものとしては、まだベータ版として一部に限定公開されているだけだが、「Windows Live Mail Desktop」があてはまるだろう。これは、Windows Liveメール(以前のHotmail)だけではなく、グーグルの「Gmail」やヤフーの「Yahoo!メール」など他のウェブメールをはじめ、PCで利用しているメールまでも一元管理できるソフトウェアだ。さらに、メールだけではなく、RSSフィードやニュースグループもこのソフトウェア1つで管理、利用でき、メッセンジャーとも連携している。

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