Wurmanはすべてのセッションを自分で取り仕切った。肩に厚手のスカーフを巻いた同氏は、壇上に置かれた赤い重役用の椅子に心地よさそうに腰掛けながら、ある時には講演者の話に割って入ったかと思うと、次の瞬間には過去を思い出して涙するといった具合に、片時も動きを止めることはなかった。
このイベントには「エンターテインメント」関連というテーマが一応設けられていて、「エンターテインメントを有益なものへ("make entertainment informative")」というスローガンもある。だが、実際のところは、時代の先端を行くさまざまな技術や事象--3Dアニメーションや世界一流のコンサート、進化生物学、建築、ブログなどが、情報化時代においてそれぞれの基底部分に共通するものを持つことを示すデモンストレーションの場となっている。
参加者のなかには、最先端を行く研究の成果や製品を披露する技術系の人間が多かった。これらの多くは、人間とコンピュータ、情報の関わり方を変えることを狙ったものだった。
g-speakを創業したJohn Underkofflerは、同社が開発したデータグローブを披露した。これは、俳優のTom Cruise が「Minority Report(邦題:「マイノリティ・リポート)」のなかで身につけていた手袋のようなコンピュータ用のインターフェースだ(Underkofflerはテクニカルアドバイザーとして「Minority Report」の製作に関わった)。同氏は、両手を同時に動かしながらデータを操作し、頭上にあるコンピュータ画面上に投影されたロサンゼルスの写真を素速くより分けてみせた。
また政府機関と緊密な協力関係にあるapplied mindsは一流のエンジニアを揃える設計会社だ。同社の創業者らは、コーヒーテーブルのようなコンピュータ画面を披露した。ユーザーはこの画面の周りに立ち、データを手で操作できる。同社の最新バージョンには、変形が可能な柔軟な画面が含まれているが、このうえには山岳地の地形情報を示す地図をゆがめて、その表面を3次元表示することが可能で、夢のような特殊効果が実現できる。
このシステムの設計者らは、コンピュータによる分析やGoogleでの検索に頼ることが人間の思考プロセスの一部となっていることから、データをより直接的に扱えるもっと優れた方法が必要だと主張した。
「われわれは科学の分野で、人間がもはや自分の頭(mind)だけでは思考できないところに行き着こうとしている。そのためにこうした視覚化技術が必要なのだ」とapplied mindsの共同創業者で、かつてパラレルコンピューティングの分野で先駆者として活躍したDanny Hillisは述べた。「将来は、人間の思考だけでなく、人間とこうした技術が一緒になって思考する『共生的思考(symbiotic thoughts)といったものが出てくる』」(Hillis)
ヒトゲノム分野の先駆者であるJ. Craig Venterは、DNAの組成について話をした。同氏は聴衆に向かって、自分のチームではわずか数カ月後に史上初めて人工の微生物をつくり出せると考えていると語った。この微生物は実験室のなかで人工的に合成した染色体を組み合わせてつくる。これが成功すれば、バイオテクノロジーの分野では現在よりもさらに多くのチャンスが生まれると同氏は語った。
「これは自分自身のハードウェアをつくりだすソフトウェアだ。生命とはまさにそうしたものだ。われわれもみな同じような仕組みになっている」(Venter)
また、多くの講演者がインターネットや他の新しい技術が従来クリエイターと消費者の間にあった障壁をなくそうとしている点を強調した。
ゲーム「Sims」シリーズの生みの親であるWill Wrightと、MicrosoftでXboxのチームを率いるJ Allardはそれぞれ、今後ゲームの世界ではコンテンツ開発に関してプレイヤーが果たす役割が大きくなるだろうとする予想を述べた。また、TechnoratiのバイスプレジデントPeter Hirshbergはブログの世界が新たに手に入れた力が、メディアや政治の分野の大物や、ソニーのような一流ブランド(の影響力)を弱める上でいかに役立っているかについて説明した。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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