ブロガーは見た--ハリケーンに襲われたニューオーリンズの惨状

Anne Broache (CNET News.com)2005年09月06日 08時30分

 ミシシッピ川から6ブロック離れた、ニューオーリンズのポイドラス通り沿いにある27階建ての超高層ビルのなかで、あるインターネットドメインホスティングサービス企業の社員が、大型ハリケーン「カトリーナ」上陸直後の混乱の様子をブログに記録していた。このブログは、遠隔地に住むブロガーには到底真似のできないリアルな描写で溢れている。

 ニューオーリンズに拠点を置くDirectNICの5人の社員が、今からおよそ1週間前の、ハリケーンに見舞われる直前から、食料、水、ディーゼル発電機、カメラと共に、少なくとも1丁の銃を携えて、同社の本社が入居するビルの10階と11階にこもっている。

 それ以来、社員の1人であるMichael Barnettは、「Livejournal」と題したブログに彼らの生活の様子を書き込んできた。LivejournalはBarnettにとって、かつては「友人らと毒舌を吐いたり、雑談をする」ための場だったが、同氏は今週、そのブログの名称を「The Survival of New Orleans Blog(ニューオーリンズブログの存亡)」に変更した。

(写真提供:Sigmund Solares)

 またDirectNICの社員らは、同ブログの姉妹版のフォトギャラリーを更新すると共に、ライブカメラをビルの外に向けて設置し、浸水した都市を破壊した略奪、発砲、騒動の様子を直接撮影した画像/映像を配信してきた。

 一方で、彼らは分担してビルを巡回したり、写真を撮影しながらビル周辺の「偵察」を行ったりしているが、発電機用の十分なディーゼル燃料の確保に苦労していると述べている。

 そして、Barnettが大変驚いたことに、彼らの活動はウェブ上で大反響を呼んでいる。Barnettが書いたエントリー(記事)はコメントで溢れ、さらに数千通ものIMメッセージが寄せられた。Barnettらのマルチメディアサイトにはトラフィックが殺到したことから、ウェブカメラ用のミラーサイトを設けなければならず、また一時的にフォトギャラリーの閉鎖を余儀なくされた。

 この件について、Barnettからも、また同社の広報担当からもコメントを得られなかった。以下は、Barnettが書いた日記形式のエントリーの一部を抜粋したものだ。

 エントリーは極めて控えめな言葉で始まっていた。Barnettは嵐が接近し始めた8月27日の午後9時5分(太平洋夏時間)に「ふうむ、これはかなりひどい嵐になりそうだ」と書き込んでいる。

 28日の午前6時を少し過ぎた頃、Barnettは嵐に対する挑戦的な書き込みを行った。「嵐よ、来るなら来て見ろ。全力でぶつかってこい。勝負だ」

 Barnettは29日の朝に、混乱した状況を報告した。「しかし、洪水が発生しない限りこの都市は大丈夫だ。本当に何と言っていいか、言葉が見つからない・・・タービンエンジンのような低い轟音が数時間響き渡り、風が吹き荒れ、多くの瓦礫が飛び散り、私はその様子をとらえた写真や映像を撮っている」

 しかし、30日の朝までに、Barnettの口調は次第に深刻さを増していった。「人騒がせな発言はしたくないが、ニューオーリンズ市内と周辺地域から脱出する手段がある人は脱出すべきだ。都市機能の維持に必要なインフラは麻痺しており、復旧まで相当時間がかかる可能性がある。極めて乏しい資源を多くの人々が奪い合うことになるだろう」

 31日の朝、混乱が始まった。「ライブカメラを観ている人は、貴重な映像を目にしているはずだ。いま映っているのは、洪水の状況(その後24時間変化がなかった)とホテルにおける略奪行為だ」

 Barnettはさらに次のように続けた。「政府が完全にお手上げ状態であるため(いずれにせよ、何もできなかっただろうが)、われわれはこの街の治安回復を真剣に検討している。いくつかの報告によると、警察が略奪行為を行っており、またQuarter近くのある警察管区では自動小銃が発射されたため、まともな警察官は各管区内で包囲されているという」

 「危険は承知しているが、私はForeign Internal Defenseについて多少の経験がある。まるで『Planet of the Apes(猿の惑星)』のようなこの混乱を鎮めるチャンスがあれば、誰かが最初の一歩を踏み出さなくてはならない。つまり、現在あちこちで『Lord of the Flies(蝿の王)』の世界が展開されている。まさに無秩序状態だ。私有財産も人命も全く尊重されない」

 さらに同日、しばらく経ってからBarnettは次のように書いている。「警察が略奪行為を行っているが、これは複数の情報源から確認が取れている。略奪行為の一部は『正当』と言えるかもしれない。もっとも、この状況で『正当』という言葉に何らかの意味があればの話だが。警官らはATM荒らしや金庫破りもしている。これらも確認済みだ。実際に複数の目撃者がいる。また、彼らは公用の名目で自動車ディーラーから十数台のSUVを持ち出し、さらに銃器店や質屋から銃などの小型の武器を略奪した。おそらく『犯罪者』による略奪行為を防ぐためと思われるが、彼らの真の意図など誰にも分からない」

 9月1日の早朝、Barnettは就寝前に次のように書いている。「目下、安全が最大の関心事だ。ニューオーリンズ警察は機能しておらず、通りには略奪者やテロリストたちが徘徊している。彼らは建物に放火しているとの噂だが、事実か否かは確認できない。いずれにせよ、われわれは交代で見張りをし、パトロールを行う必要があるが、それによりわれわれのダウンタイムが制限される」

(写真提供:Michael Barnett)

 「ただし、外は動物園のようなありさまだ。そのことは間違いようがない。野生の王国だ・・・とはいっても、路上の至るところで殺人が行われているというわけではない。しかし、法による統治は完全に崩壊し、秩序はまったく消え失せ、財産権は行使することもできなければ、実際に行使している様子もない。路上にいる人間はすぐに略奪され、殺される危険がある。それほどひどい状態だ」

 しかし、1日の夕方には、同氏は落ち着きを取り戻していた。「私が知る限り、このビルは私の任地であり、そして私がきちんとしたかたちで救出されるまで、このビルを見捨てることはないだろう」

 2日朝に、ビルの屋上から周囲の被害状況を調べた同氏は、次のように嘆いている。「この場所は完全に崩壊してしまった。路上の救いがたい有様に胸が痛む。老人や病人、疲れ切った者たちが、死という運命に身を委ねているようだ」

 しかし、その数時間後、Barnettはわずかな救いを見いだした。「物資を積んだ車の列が通りを進んでくる。保存食、水、それに氷とおぼしきモノも見える」と同氏は記している。「これで大丈夫だ、治安回復のためにまず兵隊が乗り込み、そのあと物資が運び込まれて、整然と配給される(そうなることを願っている)」

 「Convention Centerにいる人々にも、ついに希望の灯がともった」(Barnett)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向 けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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