ウェブ上に独自のエコシステム構築を狙うグーグル

Martin LaMonica(CNET News.com)2005年08月29日 12時38分

 Googleは、MicrosoftがIT業界を支配するために使った常套手段を参考にしている。それは、新しい製品や機能を発表するだけでなく、開発者らの心をつかむというやり方だ。

 Googleは先週はじめ、インスタントメッセンジャーの「Google Talk」と、「Google Desktop Search」の新バージョンを投入した。このGoogle Desktop Searchに追加された「Sidebar」は、電子メールや株価情報、ニュースといった情報を表示するもので、表示項目はユーザーが好きなようにカスタマイズできる。

 両製品--とりわけSidebarは、既存のMicrosoftユーザーを取り込めるだけのポテンシャルを秘めていると、複数のアナリストが述べている。ただし、Googleはソフトウェア開発者も重要なターゲットとして位置づけてきた。これは、Microsoftがかなり以前に完成させたテクニックだ。Googleは、ほぼすべてのサービスで標準をサポートし、外部の開発者がアドオン製品を開発できるような仕組みを提供している。

 もちろん、Googleが次々に新製品を追加するのを目にして、一部には同社がOSに類するものを作り出そうとしているのではないかとの声も上がっている。厳密に言えば、Googleの製品はOSの代用にはならないが、これまでにリリースされてツール群は同じ目的に使えると、アナリストらは述べている。また、Googleの「Picasa」という写真編集ソフトウェアのように、Windows PC上で動作する製品は、Googleのオンラインサービスと連動させることが可能になっている。

 「Googleには、OSやブラウザを提供する必要はないと思われる。彼らは、Microsoftの成果を取り込んで、それにGoogleのロゴを付けるのが非常にうまい」と、JupiterResearchアナリストのMichael Gartenbergは述べている。

 しかし、長年Microsoftの動向を追ってきた観測筋は、Microsoftを地球上で最も儲かる会社にしたのはOSだけではないと考えている。これらの人々によると、同社自慢の開発者ネットワークが、Windows上で動作するアプリケーションの壮大な「エコシステム」を作り出し、そしてデスクトップアプリケーションスイートのOfficeが同社の中核製品の採用を促進したという。

 Googleがいまウェブで再現しようとしているのも、まさにそうしたものだとする意見もある。

 Googleのほぼすべてのサービスは、API経由で利用できるようになっており、ソフトウェア開発者にはアドオン製品開発のための情報が提供されている。そのため、たとえばGoogle Mapsでは、そのAPIを利用したサードパーティ製アプリケーションが数多く登場し、賃貸情報などを地図上に表示するものが出てきている。

 これまでのサービスと同様に、Googleは最新サービスでも業界標準をサポートしている。同社はまた、自社サービスの機能を外部の開発者に公開することで、独立系の開発者やソフトウェアベンダーに対し賢いアドオン製品を開発するように促している。

 たとえば、同社がリリースしたGoogle TalkはJabber標準をサポートしている。そのため、Google以外で開発された複数のクライアントでも、同サービスを利用できるようになっている。

 また、Google Desktop Searchについては、同社はSidebarツール用に多数のプラグインをリリースした。これにより、Sidebarユーザーは既に標準の時計を入れ替えられるようになっている。さらに同社は、市場開拓の目的で開発者向けにメーリングリストも開設している。

開発プラットフォームとしてのウェブ

 業界は異なるが同様の理念を掲げているのはSalesforce.comだ。同社は、開発者がSalesforceのアプリケーションをカスタマイズできるようにする「Sforce」というホスティングプラットフォームを開発した。

 Salesforceは、実証目的で自社の顧客資源管理サービスとGoogle Mapsを統合したほか、AdSenseやSidebarをはじめとするほかの複数のGoogleサービスも試していると、Sforceのシニア製品マーケティングディレクター、Adam Grossは述べている。

 Grossによると、自社のウェブサイトをカスタマイズ可能なプラットフォームとして扱うeBay、Yahoo、Amazon.comなどの企業は、従来のソフトウェアベンダーとは明確に異なるビジョンを開発者に与えるという。

 「われわれは、開発者の心をつかもうと競い合っており、大幅に異なる価値提案やアイデアを持ち込んでいる。WindowsやMicrosoft『スタック』用というモデルがある一方で、インターネット用というものもある」(Gross)

 Grossは、有力開発者たちが必死にプラットフォームの開発に取り組んでいると指摘している。そして、高度な技術を持つこれらのエンジニアの一部がGoogleで働いていることも、とくに驚くべきことではない。

 Adam BosworthとMark Lucovskyという著名な元Microsoft幹部も、現在はGoogleの社員となっている。

 そのBosworthは自分のブログで、ソフトウェア開発の未来は個々のマシンではなくウェブにあると述べている。

 「この10年間のプラットフォームは、ハードウェアのリソース制御やリッチなUI(ユーザーインターフェース)まわりの事柄にはならないだろう。また、プラットフォームを提供するだけではお金をとることはできないと思う。そうではなく、コミュニティ、コラボレーション、コンテンツへのアクセス関連の事柄が重要になる」(Bosworth)

 Bosworthによると、Amazon.comやGoogle、eBayといったウェブの先駆的企業では、何年も前から、WebサービスAPI経由で自社のサービスを利用できるようにすることで、サードパーティによるアプリケーション開発を促し、それによって自社サービスへのトラフィック増加を狙ってきているという。

 Googleは、他のウェブポータル各社という手強い競合相手に直面しており、また自社製品ラインの拡大や開発者の取り込みからどの程度の利益を回収できるかも、しばらくは完全に明らかになりそうもないと、GartnerアナリストのAllen Weinerは述べている。

 「これは論理的に正しい方向性だが、その結果がどうなるのかはしばらくわからない」(Weiner)

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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