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アップルに10万曲を提供する東芝EMI、音楽配信の採算と効果とは

2005/08/11 19:05
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 アップルコンピュータが8月4日より開始したiTunes Music Store(iTMS)は、約100万曲という豊富なラインアップを揃えた点が大きな特徴の1つだ。実はこのラインアップの10%は、1つの大手レコード会社から提供されている。そのレコード会社とは、Janet Jacksonや宇多田ヒカルなどの人気アーティストを抱える東芝EMIだ。

 同社は邦楽、洋楽を合わせて約10万曲の楽曲をiTMSに提供している。さらに、ウルフルズのiTMSオリジナルアルバムを提供し、9月に発売されるThe Rolling Stonesのアルバムの予約販売を行うなど、新たな試みも展開している。

 東芝EMIはなぜiTMSに楽曲を提供したのか、そして音楽配信サービスがCDの販売や業界全体に与える影響をどのように見ているのだろうか。東芝EMI New Media Group部長の山崎浩司氏に話を聞いた。

iTMSへの楽曲提供は既定路線

東芝EMIが提供するウルフルズのiTMSオリジナルアルバム

 東芝EMIはレコード会社のなかでも、最も音楽配信事業に積極的な企業として知られる。レーベルゲートの「Mora」やエキサイトの「Excite Music Store」など12の音楽配信事業者に楽曲を提供しており、「DRM(著作権管理技術)などに問題がなければ、基本的にどの配信事業者にも楽曲を提供する」(同社)という方針を採っている。

 楽曲の販売価格の決め方やCD-Rへのコピーに対しても柔軟な姿勢を示す。音楽配信サービスを再販売価格維持制度(再販制)の範囲外と定め、配信事業者に価格決定権を委ねた(関連記事)。このため、配信事業者によって楽曲の販売価格に差がでるといった状況も生まれた。

 さらに2004年11月には、CD-Rには1曲につき10回まで、デジタルオーディオプレイヤーには回数無制限で楽曲をコピーできるようにした。「楽曲のコピーに関して多少の制限は必要だが、個人利用の範囲であればあまり厳しいルールを適用してしまうとユーザーが利用する意欲をなくしてしまう。できる限り、ユーザーの権限を広げていくべき」(山崎氏)という考えによるものだ。

 同社が音楽配信サービスに対する取り組みを強化したのは2004年4月のこと。ファイル交換ソフトを使った違法コピーが蔓延している状況をなくすには、合法的に音楽を買える場を整備することが重要と考えたためだ。楽曲数を充実させ、音楽配信サービスの認知度を高めることで、「違法なことをしているという罪悪感を持つことなく、きちんと音楽ファイルを入手できる」(山崎氏)という環境を整えようとしている。

 東芝EMIは現在でもコピーコントロールCD(CCCD)を販売しているが、これもファイル交換ソフトによる違法コピーの流通を防ぐための取り組みだ。なお、一部では「セキュアCD」と呼ばれる新しいコピーガード技術を使ったCDを東芝EMIが発表すると話題になっているが、同社広報では「日本では現在この件に関する詳細情報を話せる段階にない」としている。

 iTMSに楽曲を提供したのも、配信先を増やすことで音楽配信サービスを普及させるという同社の方針に沿ったものだ。iTMSに提供している楽曲の数や種類は、一部のiTMS専用の楽曲を除けば他の音楽配信事業者と変わらない。CD-Rへのコピー回数はiTMSの場合、無制限(ただし同一プレイリストのコピー回数は7回まで)と他社より多いが、「Windows向けには1曲につき10回まで、Mac向けには同一プレイリストのコピー回数を7回までという世界共通のルールを採用した」(山崎氏)という。東芝EMIの親会社であるEMI Groupもすでに欧米でiTMSに楽曲を提供しており、アップルとの交渉はスムーズだったようだ。

価格の引き下げは販売戦略の一環

 ただし、iTMSは既存の音楽配信サービスに比べて楽曲の販売価格が安い。ほとんどの楽曲は1曲150円、一部の新譜は200円だ。東芝EMIはiTMSへの楽曲提供開始に伴って、他の配信事業者への楽曲卸売価格を引き下げた。これまで東芝EMIの楽曲は1曲210円〜270円で販売されていたが、8月4日以降は各社が一斉に1曲150円、もしくは200円に値下げしている(関連記事)。

 今回の値下げに踏み切った理由について山崎氏は、iTMSの影響よりも他のレコード会社との価格差を踏まえた戦略的な取り組みだと話す。「東芝EMIの楽曲は他のレコード会社に比べて割高で、配信事業者やユーザーからも『価格が高い』という声があがっていた。2004年4月に配信事業者への楽曲提供を始めてから1年経ったこともあり、事業を見直した結果、自社で努力できる範囲で価格を下げることに決めた」

 価格引き下げによる影響については、「かなり大きいだろう。20〜30%のマイナスインパクトがある」と山崎氏は話すが、販売量が増えることで結果的には増収につながるとみている。「(iTMSに楽曲を提供することで)販路が拡大する。また、音楽配信サービスにユーザーの関心が集まり、結果的に販売量は伸びると考えている」

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