携帯コンテンツに参入するソニー・ピクチャーズの狙い

永井美智子(CNET Japan編集部)2005年01月24日 12時43分

 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPEJ)は2004年12月、携帯電話向けのコンテンツ事業に本格参入した。NTTドコモ、au、ボーダフォン上の公式コンテンツを2005年度中に100サイト立ち上げ、新たな事業の柱にしていくという。なぜ今携帯コンテンツ事業に参入するのか、新サービスの狙いについてソニー・ピクチャーズ エンタテインメント事業開発バイスプレジデントの福田淳氏に話を聞いた。

 SPEJは米国カリフォルニア州に本社を置く米Sony Pictures Entertainmentの日本支社で、主な事業領域は映画配給、ビデオ・DVDなどのホームエンタテインメント、テレビ局へのコンテンツライセンス、衛星放送を利用した放送ビジネスの4つ。同社では携帯電話向けのコンテンツ事業を第5の柱として育てていく方針だ。

 すでに北米、ヨーロッパでは複数の通信事業者向けに「Sony Pictures Mobile」という名称でサービスを展開している。日本でも「ソニー・ピクチャーズ モバイル」という名称でブランド展開していくという。

 この時期に携帯電話向けコンテンツに参入した理由について福田氏は、第3世代携帯電話(3G)の登場で映像表現が可能になったことを挙げる。「第2世代携帯電話で着メロと待ち受け画面しかできないのであれば参入しなかっただろう。動画展開が可能になったため、映画会社として押さえておく必要があると考えた」

 コンテンツは映画情報のほか、アニメやキャラクター、ゲームなどを幅広く手がける。SPEJはスカイパーフェクTV!でアニメ専門チャンネル「アニマックス」を手がけるアニマックスブロードキャスト・ジャパンを設立するなど、アニメ事業も積極的に展開している。この資産を携帯電話でも生かす考えだ。

 「単に映画の販売促進に利用するだけではなく、1つの自立したメディアとして楽しんでもらえるサービスを提供していく」(福田氏)

3G向けコンテンツでトップを目指す

 携帯コンテンツでは後発となる同社は、3Gに特化したコンテンツや新技術を利用したサービスで差別化を図る。「iモードの公式コンテンツの中でも、FOMA向けのコンテンツはまだ少ない。ここでなら1位になれる可能性がある」(福田氏)。ソニーの非接触IC技術FeliCaを利用した課金サービスなども検討中という。個々のサイトの利用者数は数千件から数万件と予測しており、複数のカテゴリで人気コンテンツを育てあげ、全体としてソニー・ピクチャーズ モバイルというブランドを築く狙いだ。

 主なターゲットは22歳〜35歳の女性、および19歳〜22歳の大学生。3Gの普及スピードに合わせて一気にサイトを立ち上げる方針で、3月末までに27サイト、2005年度中(2006年3月末まで)には100サイトを立ち上げる計画という。「携帯コンテンツ事業はそれなりにインフラ投資がかかる。1つひとつのサイトがマス向けになり得ない以上、ある程度まとまった数がないとインフラ投資の合理性がなくなる。やみくもに数を負うわけではないが、数が市場をカバーするというところはある」(福田氏)

 なかでも福田氏が注目するのが漫画の配信だ。「音や動画を電車の中で楽しむにはヘッドホンが必要だ。目だけで楽しめる読み物として漫画は適している」(福田氏)。漫画制作ツールを手がけるセルシスの携帯電話向け漫画閲覧ソフト「コミックサーフィン」を利用して水木しげる氏の過去の漫画が読めるサービスの提供を計画している。すでにサービスを開始している「水木サンのおばけ」というコンテンツが女性に好評なことから、期待を寄せているという。

 動画コンテンツの配信には、ストリーミングでなくダウンロード形式を採用する。深夜にコンテンツ配信を行うauのEZチャンネルや、PCでコンテンツをダウンロードし、携帯電話に転送して視聴するボーダフォンのボーダフォンライブBBを利用する。

 2006年には携帯電話向けの地上デジタル放送(1セグ放送)が始まると見られるが、「いつでも好きなときに好きなものを見られるのがダウンロード型コンテンツの強みだ」と福田氏は話す。放送の場合、決められた時間に決まったコンテンツを見る必要があるが、ダウンロード型ならばいつでも好きなものが見られるというのだ。

 「たとえば2時間の映画をずっと携帯電話で見る必要はなく、コンテンツの入ったメモリカードを途中でTVに移して楽しむこともできる。ハード/ソフトを両輪に持つソニーグループだからこそ、そういったことがシームレスにできるだろう」(福田氏)

定額制は有料コンテンツ市場に追い風

 売上目標は年商100億円。これはサイバードの2003年度売上高に匹敵する金額だ。定額制を利用するユーザーは有料コンテンツを活発に利用することから、この目標は十分達成可能と福田氏は見る。

 たとえばKDDIのauの場合、CDMA 1Xユーザー1人あたりの月間有料コンテンツ利用額は720円だが、定額制を利用したCDMA 1X WINユーザーでは平均1450円。定額制でデータ通信料を気にすることがなくなり、有料コンテンツの利用が進むと見られる。福田氏は「3年以内に目標を達成したい」と意欲を見せた。

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