Napsterの生みの親が抱くビジョンとは?

John Borland, Stefanie Olsen(CNET News.com)2004年01月26日 20時44分

 ファイル交換ソフトウェアの先駆者であるShawn Fanningと仲間たちは、アナーキーなNapster時代から一変して、Snocapという新しいベンチャー企業で静かに仕事に取り組んでいる。Snocapは、PtoPネットワークをレコード会社に収益をもたらすものに変えることを狙った試みだ。

 Snocapに詳しい情報筋によると、同社は個人投資家Ron Conway(Napsterに最初に投資した人物)の支援を受け、ここ数カ月間静かにコードを書き、Napsterに欠けていた音楽産業との架け橋を作っているという。

 音楽産業の大敵の生みの親というFanningの役割も邪魔にはなっていないようだ。Snocapの計画には、ファイル交換ネットワークを介して取引される音楽ファイルを特定し、これに値札をつけることなどが含まれているが、この計画は音楽業界の幹部連にも受けがいい。

 「よく考え抜かれたアイデアだと思う。だが、成功するかどうかは、音楽流通に関わるさまざまな人々が参加するかどうかにかかっている」と、Snocapに近いある音楽レーベルの幹部は語る。「成功の鍵は、PtoP企業が参加に同意するかどうかだ。彼らが参加すれば大きな成功となる可能性がある」(同幹部)

 Fanningやその他のSnocapスタッフにコメントを求めたが、回答は得られていない。

 FanningがPtoPの世界に戻ったことは、ファイル交換ネットワークと音楽レーベルとの間の緊張緩和へ向けた試みの中でも、最も野心的なものとなる。両者は1999年にNapsterが始動して以来、交戦状態を続けている。

 現在無敵を誇るファイル交換ネットワーク、Sharman NetworksのKazaaは、Brilliant Digital Entertainmentの傘下にあるAltnetと緊密な提携関係を結んでいる。Altnetはファイル交換の検索結果を、ゲームや音楽ファイルのような合法的なファイルと共に提供している。同社は1年以上前から、大手音楽レーベルや映画スタジオと配信契約を結ぼうとしているが、成功しているとはいえない状態だ。一方Sharmanは、エンターテインメント企業各社はPtoP企業に対抗するために共謀しているとして、現在これらの企業を独占禁止法違反で訴えている。

 AltnetとSharmanは、Distributed Computing Industry Associationという団体の設立にも協力している。同フォーラムは、エンターテインメント企業とファイル交換企業が両者の違いを克服するため、交渉の場につくことを目指したものだ。

洪水の後で

 カリフォルニア州当局に提出された書類によると、Snocapは2002年10月28日にデラウェア州で登記された。社長はConwayで、唯一の役員となっている。この書類には、同社が2003年6月25日、社名をOpen Copyright DatabaseからSnocapに変更したという記述もある。

 同社は、少なくとも初期の段階では、Fanningの古巣であるNapsterとよく似ているようだ。

 同社に詳しい情報筋の話では、Napsterに先立つプロジェクトでFanningと共に働き、後にNapsterの主要なエンジニアとなったAli AydarがCOOで、また当初Napsterの検索技術開発に携わったJordan Mendelsonも共同設立者として名を連ねているという。

 Mendelsonは自分のウェブログで、Snocapの発展におけるいくつかのハイライトを年代記風に記録している。これには、故障したスプリンクラーが引き起こした洪水で、同社がサンフランシスコの事務所から一時的に退避しなければならなかった騒動なども含まれている。サンフランシスコのSoMa(South of Market)にあるSnocapのオフィスを訪ねたところ、周辺一体はまだ洪水の被害から復旧しておらず、Snocapのマークとホワイトボードに書かれた走り書きが、空っぽのオフィスに残っている状態だった。

 Mendelsonのブログによると、それでも同社は成長を続けており、1月初めの時点で従業員は9名になったという。同社のWebサイトには求人情報も掲載されている。

 同社に近い情報筋によると、Snocapが開発を進める技術自体は、ファイル交換ソフトウェア企業としてのNapsterの末期にならったものだという。2001年後半、裁判所はNapsterに対して、著作権で保護された楽曲がネットワークを通じて交換される前にこれをブロックするよう命じた。NapsterはRelatableというパートナー企業とともに、ファイルを認識しフィルターする技術の開発を行っていた。

 Napsterは結局、裁判所の命令に従って技術開発を進めるよりも、サービスを閉鎖してしまう方を選んだ。現在、Napsterというサービス名は、Apple ComputerのiTunesのライバルで、Roxioが所有する音楽ダウンロードサービスに使われている。だが、新しいNapsterのサービスには、当初のファイル交換機能は一切含まれていない。

 Snocapは、ファイル交換ネットワーク上で取引される楽曲を認識する方法を研究してきた。これには、音楽ファイルの音波特徴をモニタリングする「音声指紋」と呼ばれる技術も含まれていた。

 この技術は、いく通りかの方法で、ファイル交換ソフト自体に組み込み可能なものだという。たとえば、この技術を組み込んだソフトは、ファイルをダウンロードすると、この「指紋」をチェックし、それをSnocapが運営するデータベースと照合するようになる。

 このファイルの特定プロセスが済むと、ダウンロードされたファイルはブロック可能な状態となり、そのコンピュータのユーザーが料金を支払うまでは、他のユーザーがダウンロードすることはできなくなる。また、これとは別に、あるメカニズムをつくり、ファイル交換ネットワークの運営者がダウンロードされた曲に対する支払いを行うようにもできる。この場合、ダウンロードした曲をSnocapのシステムが追跡し、運営者には後に利用料金または広告収入の形でお金が払い戻されることになる。

 Fanningは自分のアイデアを各レコード会社の幹部に説明してきたが、話を聞いた幹部らは興味こそ示したものの、完全に彼の話に乗ったわけではない、と情報筋は説明する。なお、Napsterをつくったという彼の経歴は、レコード会社との話し合いの席に付くのに役立ったかもしれないと、情報筋は述べている。

 「Shawnは頭が良く、考えをはっきり口にする人間だ。それだけで随分大きな違いが出る。彼は、レコード会社の連中が必死に求めている世界のなかへ、すでに足を踏み入れている」と、レコード会社とFanningとの話し合いに詳しい情報筋は述べている。

 しかし、PtoP企業各社への売り込みも、難しいものとなるかもしれない。一部の主要ファイル交換企業の幹部は、Fanningからはまだ接触がないという。また、音声指紋技術に基づく同様のアイデアをもつ別の企業もあり、こうした企業が支援を求めているという幹部もいる。

 「我々でも、とてもよく似たアイデアを検討したことがあった。だが、結局深追いはしなかった。音声指紋を使うというアイデアはおもしろいが、しかしクライアントソフトに、フィルタリングなどの技術を組み込むというのはおもしろいことではない」と、LimeWireのCTOを勤めるGreg Bildsonは語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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