最終更新時刻:2008年10月7日(火) 13時05分

デルのビジネスの核心はROIを徹底追求したIT投資--デルの北アジアCIOが講演

奥隆朗(CNET Japan編集部)

2005/03/25 12:05  

イントラネットで人材資源の強化を図る

 各種の調査機関によると、現在の企業のIT投資は、7割以上がシステム運用費で占めるられているという。これは、保守・運用に多額を費やしており、「守りのIT投資」と言われているのが実情だ。こうした問題に一石を投じようとするセミナーが「IT Trend 2005」である。同セミナーは「成長戦略につながる攻めのIT投資を--IT企業トップが語る日米最新事例」とサブタイトルが付いているとおりり、攻めのIT投資を促すベンダーが、自社や顧客企業の導入事例を提示した。

 その中で興味深かったのが成長の鈍化しているPC/IAサーバの販売で高い伸びを維持している米Dellの自社のIT戦略を紹介するセッションである。

Dell 北アジア地域CIO 山田祐治氏

 講演者であるDell北アジア地域CIOである山田祐治氏は、冒頭でデルの経営戦略の軸として「顧客との接点となるウェブサイトのほか、サプライヤーとのバリューチェーン、そして社内イントラネットの存在」を挙げた。

 同社が持つウェブサイトでの強みは、物販のほかにリサーチを積極的に行うことで、現状問題の把握と分析のチャネルとして活用すること。サプライヤーとのバリューチェーンの強みに関しては、完全なBTOと2時間ごとの部品供給を実現するために、約800社に絞り込んだ部品サプライヤーとの円滑な情報共有の体制を挙げる。

 講演の中で山田氏が最も強調した部分がイントラネットの活用だ。デルでは、営業や製造といった各種業務に関する支援だけでなく、Eラーニングやウェブキャスト、人材開発・評価ツールとしてイントラネットを利用しているという。

 一例を挙げると、デルは、プライバシー、セキュリティ、そしてコンプライアンスに関する事柄など、全社員に必要な知識を確実に習得させるのにEラーニングを使用する。学習状況は、ユーザーアカウントごとに管理されており、テストの進捗状況もチェックされるため、世界中で統一管理が可能となっている。

 ウェブキャストは、経営指針や各種の目標の伝達に利用されるという一般的な用途であるが、人材開発・評価ツールとしてかなりシステマティックな作りとなっている。イントラネットには、各個人の前職歴や社内での職務内容、そしてデル社員として習得しなくてはならない14のコンピタンシーレベルの熟練度などが掲載されている。これを基にマネージャーは、適性を判断すると同時に当事者と話し合い、人材開発プランを決定する。一方で、各個人の所属希望も記載できることで、人員不足の部署などが発生した際には、希望やスキルを加味しながら適正な人材をピックアップできる仕組みだ。

「かゆいところに手が届かない!?」システムが基本

 山田氏は続いて、デルの戦略的IT投資がどのような方法で行われているかを解説した。デルは今では「DELL on DELL」のコンセプトのもと、自社で販売しているハードウェアを全面的に採用するとともに、自社開発のシステムとパッケージソフトを組み合わせたグローバルシステムを構築している。だが、1998年までIAサーバを扱っていなかったことから、煩雑なシステム構成となっていた。

 山田氏は「自社のシステムに関しても、Unixやメインフレームなどさまざまなシステム環境が混在し、保守に多大なコストを費やしていた」と当時を振り返る。

 転機が訪れたのは、2000年に創業者であるマイケル・デル氏がデルが真のグローバル企業になることを標榜し、各分野にミッションステートメントを定め、IT投資にもROIを求めるようになったことだ。以降、IT投資はグローバルでの徹底した標準化を実施するとともに、6つの基本信条を策定した(写真1)。

 この中で2番目に挙げたグローバルなビジネス戦略とIT戦略の融合を図るために、それまでの部分最適から、全体最適を求めたシステム構築を進めた。IT投資が経営会議の承認の下で行われるようにしたことで、経営陣は、ブラックボックス化していたバックオフィスシステムの動きを把握するようになったのだ。

 さらに、予算ベースのIT投資から、やるべきことをベースに最小限の投資額で最大限の効果を出すためのシステム構築を追求。実施前に必要コストと利益の徹底したシミュレーションを行うだけでなく、プロジェクト実行後3カ月後に効果測定を行って、精度を向上させる取り組みを行った。デル内でのROI回収(投資額と同等のコスト削減や利益が創出されること)期間は、2000年には1.5年と設定されていたが、今ではわすか6カ月に短縮されているという。さらに、今後はITへの投資売り上げの1%以内に抑えると、他にはない厳しい目標を立てている。

 山田氏はデルのシステムを指して、「かゆいところに手の届かないシステム」であると揶揄する。それは、エンドユーザーの使いやすさを吸い上げて構築したシステムではなく、経営戦略としての利益を追求して構築したシステムであるからだ。「DELL on DELL」のシステムにしても、グローバルで共通なシステム構成なのに加えて、カスタム不要でパッケージを採用できる部分は、そのまま導入して、同社のビジネスモデルを支える部分のみ自社開発するという割り切りからも、利益追求型の姿勢がうかがえる。

 ただ、こうしたIT投資が無駄なコストを削減し、利益を生み出していることは、確実に成長を続ける同社の業績を見れば明らかである。個々のニーズを吸い上げればきりがない部分は排除し、ROIの追求という初志貫徹の姿勢を貫くIT投資が同社の成長を支えていることが理解できる講演であった。

企業情報センター

この記事を読んだ人におすすめ

特集

経済危機時代の技術起業家たち--変えるのは製品ではなく戦略
経済危機のただ中にある現在、新興企業の資金調達は厳しくなっているが、起業家たちはこの状況でも楽観的だ。
グーグルの米国エネルギー問題解決策--22年計画「Clean Energy 2030」の内容
自社での節電を積極的に進めているグーグルが、米国政府に国内のエネルギー問題を解決する計画を提案した。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

ユーザー中心アプローチの時代ユーザー中心アプローチの時代
企業におけるネットマーケティングの成否の分かれ目は、ユーザ行動特性の理解と「ユーザ中心」に基づく戦略・設計にある。ビービットの500を超えるユーザビリティコンサルティングの実績をもとに、ビジネス成果を最大化するネットマーケティングの本質に迫る。
台頭するスーパーインフルエンサー--Universal McCann調査より台頭するスーパーインフルエンサー--Universal McCann調査より
Universal McCannが調査報告で論じた「新たなスーパーインフルエンサー」の台頭。ここでは、インターネットだけでなく実世界でも大きな影響を及ぼすスーパーインフルエンサーについて検証する。
松下からパナソニックへ--第2の創業で3年ぶり安値から切り返すか松下からパナソニックへ--第2の創業で3年ぶり安値から切り返すか
創業90周年を期して“第二の創業”と位置づけている松下電器産業は10月1日に社名を「パナソニック」に変更するが、株価は3年ぶりの安値水準に沈んでいる。

企画特集

エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第1回】開発者に訊く!各機能と開発の狙いとは
KDDI「SaaSソリューション」KDDI「SaaSソリューション」
〜社内コミュニケーションの課題への解決策とは〜

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
村上敬亮 情報産業の未来図ネットワーク型産業構造への衣替え?
村上敬亮 情報産業の未来図
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

オープンソースCMS GeeklogがWEBの標準になる日OSC2008Tokyo/Fallで勉強会大集合開催
オープンソースCMS GeeklogがWEBの標準になる日
インターネットの裏側を探しましょ月5000円を得るための代償
インターネットの裏側を探しましょ
ネットのニュース.logiPhone2.2では、絵文字に対応?
ネットのニュース.log
それでも開発は続くよすでに土砂降りのIT業界
それでも開発は続くよ

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

中小企業における情報セキュリティ対策の問題点とその解決策としてのUTM
NECソフトアンケートレポート 次世代ネットワークNGNに期待することは?

■調査発表

調査結果「成人の適齢は?『20歳』4割半、『18歳』は2割半」
調査結果「携帯灰皿、喫煙者の9割が所有」
半導体光増幅器の世界市場予測と分析 2007-2012年

イベント情報

コンプライアンス基礎講座(標準編)
主催:あずさビジネススクール株式会社
申告書作成のための税務実務
主催:あずさビジネススクール株式会社
申告書作成のための税務実務
主催:あずさビジネススクール株式会社

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち

ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術

まるで「宇宙ケータイ」--太陽電池で発電する、au端末のコンセプトモデル

レビュー

[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も
デザインを一新したiPod nano、容量増されたiPod touchなど、新iPodファミリーが登場した。その後を追うよ

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。